[DB Interview]
モバイルを核に個性的なミドルウェアを持つiAnywhere
@IT編集部
平田 修
2006/12/22
■オフラインでもWebアプリケーションを実行
〜M-Business Anywhere〜
モバイル端末を利用した商談などでは、常にオンライン環境を保証できるわけではない。通常なら、モバイル端末専用のクライアント/サーバ型アプリケーションを開発し、いったん商談結果を端末に入力しておき、オンラインになった時点でサーバと同期を取るといったソリューションとなるだろう。ところが、アプリケーションの配布やバージョン管理といった管理面を考えれば、Webアプリケーションをモバイル端末から使用したいというニーズは強い。「M-Business Anywhere」は通常オンラインで使用するWebアプリケーションを、ネットワークに接続できないオフライン環境でも利用可能とするプラットフォームだ。
WebアプリケーションによくあるDynamic HTMLやJavaScriptに対応しているのはもちろん、オフライン時にWebアプリケーションのフォームに入力しておいたデータはキャッシュに保存され、オンラインになったときにアップロードされる。また、モバイル端末にUltra Lightを組み込んでおけば、オンライン時にMobile Link経由で容易に統合サーバと同期が取れる。
通常のWebアプリケーションとは別に、モバイル端末上で動作するローカルWebアプリケーションを構築することも可能だ。社内で統合データベースから必要なデータをモバイル端末のUltra Lightに保存しておき、客先などではローカルデータを使うWebアプリケーションで業務をこなし、帰社後に端末データベースと統合データベースを同期させる、といった用途が考えられる。
アプリケーションの開発、配備、アップデートに、Visual Studio .NET、Eclipse、ASP、PHP、Perlなどを含む標準的なツールと既存のWeb開発スキルを活用できるので、新しい言語やツールセットに習熟する必要がなく、再コーディングや再コンパイルの必要性も小さくて済む。
■RFIDシステムに独自の使い勝手を導入する 〜RFID Anywhere〜
「RFID Anywhere」は、無線タグのリーダー/ライターといったハードウェアと、企業の業務システムを結ぶためのミドルウェアである。リーダーの近くにRFID Anywhereを搭載したPC(対応プラットフォームはWindows)を置くことによって、ハードウェアごとの差異を吸収し、必要なデータのみをフィルタリングしてバックエンドのアプリケーションに伝える点が特徴だ。
図3 RFID Anywhereのアーキテクチャ
(画像をクリックすると拡大します) |
ステピアン氏は「RFIDタグから読み取られるデータ量は膨大になりますが、企業にとって価値のあるデータはそのうちのごく一部です。他社のRFIDミドルウェアは、いったん膨大なRFIDデータを基幹データベースにすべて取り込み、そこから価値あるデータを抽出するといった手法が多いのですが、これだとデータを送るネットワーク負荷もかかるし、データベースに大量のデータが蓄積され、管理が大変になるでしょう。RFID Anywhereはリーダーから取り込んだデータをその場で絞り込むので、ネットワークやデータベースの負荷は大幅に軽減されます」と語った。限られたリソースでRFIDシステムを立ち上げる場合、RFID Anywhereのメリットが生かされるだろう。
開発者のための機能も充実している。ハードウェアコネクタの上位層に複数のタグ規格/プロトコルに対応するコントローラを配置したり、タグ規格/プロトコルごとのプラグインで拡張できるので、タグの規格やリーダーのプロトコルのわずらわしさから開発者を解放してくれる。また、「RFID Network Simulator」により、開発者はRFIDネットワークをハードウェア購入前にシミュレート可能で、負荷テストや特殊事例のテストも実行できる。
■自然言語によるシステムとの対話を実現 〜Answers Anywhere〜
「Answers Anywhere」は強力な自然言語解析および文脈理解機能を装備した、ユーザー・インターフェイス向けのミドルウェア・プラットフォームである。その大きな特徴は、言語ユーザーインターフェイス・エンジンを駆使したナチュラル・テキスト・インターフェイス、つまり、ユーザー自身の言葉による操作だろう。
図4 ナチュラル・テキスト・インターフェイスのイメージ マルチ・エージェント技術を用いたナチュラル・テキスト・インターフェイスには ・人に指示するようにシステムを利用できる ・コマンドではなく、自然な言葉で指示できる ・システムとの対話がある ・テキストベースである といった特徴がある。 |
コマンドではなく普段喋る言葉で、あたかも人間に指示するようにシステムを利用できる。しかも、システムはより詳細な情報を検索するために、人間に対して質問を投げかけてくるのが面白い。キーボードやマウスに不慣れな人たちには必要不可欠なシステムであり、また、カーナビゲーションなど手が離せない場面などに威力を発揮するだろう。
また「Answers Anywhere Embedded」という組み込みソリューションに最適化されたバージョンも用意されている。従来は、エンタープライズ・アプリケーションでしか利用できなかった自然言語インターフェイスを、ハンディターミナルなどの組み込み機器上に構築することも可能だ。
さらに、Answers Anywhereが提供する各種APIやツール群を使用することにより、通常のWebだけでなく、携帯電話でのXHTML、電子メールやチャット、音声の入出力といった各種モダリティにも対応している。また、音声やWebから受け取った要求を電子メールで通知するといったマルチモーダルなインターフェイスを提供しているので、システムとの統合も容易だ。
開発環境に関しては、定義済みの各種モダリティ・サポートやバックエンドデータへのアクセス・アダプタだけでなく、拡張可能なテンプレートを再利用可能なコンポーネントで提供している。そのうえ、Answers AnywhereによるSQL文の自動生成機能を使用したJDBCやODBC経由でのデータベースアクセスに加え、SOAPベースのWebサービスやRSSフィードによって提供される情報にアクセスするためのAPIもサポートされている。
ステピアン氏によると、「Answers Anywhereの今後の展開として、モバイル端末への対応を考えています。LBS(Location Based Services:位置情報を扱うサービス)に関する機能を拡大していく予定です。位置情報と結び付けた学習機能を備えることで、より高度なサービスを提供できるでしょう」ということだった。例えば、あるユーザーが丸の内に来たとする。ユーザーの端末からその位置情報がサーバに送られ、そのユーザーの趣味に合った丸の内の店舗情報をメールで送信してくれるといったサービスも可能という。
◇
森脇氏は「2007年春ごろにリリース予定の『SQL Anywhere Studio 10』ではフェイルオーバー、読み取り一貫性、マテリアライズ・ビューなどの機能を強化し、Symbian OSにも対応するなど新機能も増やす」と新バージョンの概要を語った。
本稿で紹介したようにiAnywhereは、大手の基幹システム向けデータベース・ベンダ製品とはひと味違った、個性的な製品群を提供している。その製品特性への理解が進めば、日本市場でさらにシェアを拡大することだろう。
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Index | |
[DB Interview] モバイルを核に個性的なミドルウェアを持つiAnywhere |
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Page 1 ・フラッグシップ製品「SQL Anywhere Studio 9」のコンセプト ・SQL Anywhere Studioの基幹RDBMS 〜Adaptive Server Anywhere〜 ・組み込み向けデータベース 〜Ultra Light〜 ・モバイル機器と基幹データベースとの同期テクノロジ 〜Mobile Link〜 |
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Page 2 ・オフラインでもWebアプリケーションを実行 〜M-Business Anywhere〜 ・RFIDシステムに独自の使い勝手を導入する 〜RFID Anywhere〜 ・自然言語によるシステムとの対話を実現 〜Answers Anywhere〜 |
[DB Interview] |
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