Windows Azure Platform速習シリーズ

Windows Azureのローンチに向けて知っておくべき4つのこと

Windows Azure Community 市川 龍太
2009/10/28
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Windows Azureの効率的な勉強方法を知る

 ここまででWindows Azureの概要についてひととおり解説した。最後は、より詳細な情報を知るための方法や、効率のよい勉強方法について解説する。

Windows Azure関連の情報を公開しているサイト

 まずWindows Azure関連の情報を公開しているサイトを以下に示す。

サイト名 解説
Windows Azure Platformポータル・サイト 文字どおりポータル・サイトでありWindows Azure Platformに関するさまざまな情報が公開されている(英語)
Windows Azure Platform デベロッパー センター MSDN(日本語版)内のWindows Azure関連のポータル・サイト。日本語でさまざまな情報が公開されている
Tech Days 2009 Tech Days2009の公式サイト。セッション資料や動画を見ることができる
Windows Azure Blog Windows Azureチームのブログ(英語)
SQL Azure Team Blog SQL Azureチームのブログ(英語)
.NET Services Team Blog .NET Servicesチームのブログ(英語)
Azureの鼓動 マイクロソフトのエバンジェリストである砂金氏のブログ。Windows Azure関連の情報が非常に豊富
Windows Azure Community Windows Azureの日本語コミュニティ・サイト。後述するWindows Azure Platformトレーニング・キットの日本語訳を公開している
Windows Azure関連の情報リソース一覧

 Windows Azureを取り巻く状況はいまでも頻繁に変化しており、ローンチ後もしばらくはこの状態が続くものと思われる。従って、そういった情報をいち早くつかみたければ、各チームのブログを常にチェックしておくのがよいだろう。

Windows Azure関連のホワイト・ペーパー

 Windows Azure Platformポータル・サイトでは以下のホワイト・ペーパーが公開されており、とても詳細な内容が解説されているため参考にするとよいだろう(いずれも英語)。一部、日本語訳されているので、まずはこちらで該当のドキュメントがないか探してほしい。

ホワイト・ペーパー 内容
Introducing the Windows Azure Platform Windows Azure Platformの機能概要
Introducing Windows Azure Windows Azureの機能概要
Windows Azure and ISVs - A Guide for Decision Makers ISV(=独立系ソフトウェア・ベンダー)の意思決定層向けのWindows Azure導入ガイド
SQL Azure Database Whitepaper SQL Azure Databaseの機能概要
Windows Azure Table - Programming Table Storage Windows Azureのテーブル・ストレージを利用するための開発ガイド
Windows Azure Blob - Programming Blob Storage Windows Azureのブロブ・ストレージを利用するための開発ガイド
Windows Azure Queue - Programming Queue Storage Windows Azureのキュー・ストレージを利用するための開発ガイド
An Introduction to Microsoft .NET Services for Developers 開発者向けの.NET Servicesの機能概要を解説
A Developer’s Guide to the Microsoft .NET Access Control Service .NET Servicesが提供するアクセス・コントロール機能の開発者向けガイド
A Developer’s Guide to the MicrosoftR .NET Service Bus .NET Servicesが提供するサービス・バス機能の開発者向けガイド
Windows Azure Platform関連のホワイト・ペーパー一覧

Windows Azure Platform トレーニング・キット

 MSDN上では、Windows Azureを勉強するためのトレーニング・キットが公開されている。最新版(英語)が今年の10月に公開されたが、筆者らが運営しているWindows Azure Communityでは、8月版のHands-On-Labsの日本語訳を公開している。

 このトレーニング・キットは、ステップ・バイ・ステップの解説資料のほかにも、サンプル・アプリケーションがソース・コード付きで用意されているため、初めてWindows Azureを触ってみる際には、とても参考になるだろう。以下にトレーニング・キットで提供されているHands-On-Labsの一覧を示す。

コンテンツ 内容
Windows Azure
Building Windows Azure Services Windows AzureサービスやWorkerサービスを作成して、ストレージやログ出力を行う
Windows Azure Native Code C++で作られたネイティブ・コードをWindows Azureで実行させる
Windows Azure and PHP FastCGIを使ってPHPアプリケーションをWindows Azureでホストする
Getting Started with Windows Azure Storage Windows Azureストレージにデータを格納する
Using Windows Azure Tables Windows Azureのテーブル・ストレージにデータを格納する
Building ASP.NET MVC Applications with Windows Azure ASP.NET MVCアプリケーションにWindows Azureプロバイダを追加して、Windows Azureで動作するように構成する
Building ASP.NET Web Form Applications with Windows Azure ASP.NET WebフォームにWindows Azureプロバイダを追加して、Windows Azureで動作するように構成する
Migrating Applications to Windows Azure オンプレミスのアプリケーションをWindows Azureに移行する
SQL Azure
Introduction to SQL Azure SQL Azureの基本機能を利用する
Migrating Databases to SQL Azure オンプレミス・データベースをSQL Azureへ移行する
Building Your First SQL Azure App SQL Azure上のデータベースを使ったWindows Azureアプリケーションを作成する
.NET Services
Introduction to the .NET Service Bus .NET Services SDKを使用して、サービス・バス経由でクライアントとサービスを接続する
Building Hybrid Applications オンプレミス・アプリケーションとWindows Azureアプリケーションを連携する
Windows Azure Platformトレーニング・キット(8月版)のHands-On-Labs一覧

 駆け足ではあったが、Windows Azureのローンチに向けて知っておくべき4つのポイントについて解説した。残りの部分では、クラウド全体について少し書いてみようと思う。

 先日、ガートナーから2009年現在でクラウド・コンピューティングはハイプ・サイクルの頂点にあるというレポートが公開された(ガートナー、1,650のテクノロジの成熟度を評価したハイプ・サイクル・スペシャル・レポートを発行)。ハイプ(Hype)とは、技術領域などが、社会的に過度な注目を集めている状態を指す。つまり先のレポートでは、クラウド・コンピューティングは注目過多の頂点にあり、今後、その人気が急降下することが予言されたわけである。次の図は、ガートナーが示した2009年度のハイプ・サイクルの図を引用したもの。

先進テクノロジのハイプ・サイクル:2009年
前述の記事の「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2009年」から引用。

 現実に、いままではプラスの面がことさら強調されて語られてきたが、今後導入事例などが増えてくるにつれ、マイナスの面についても徐々に表に出てくることになるだろう。

 クラウド・コンピューティングを導入するべきかどうかについて迷われる方は今後もますます増えてくると思われるが、クラウドの導入を検討するうえでいくつか指針を示すとしたら、まず金銭的なコスト・メリットだけで導入を検討しないことが重要である。

 クラウドは、導入時点でどれだけのビジネス規模になるのか推測すら難しいような場合や、短期間のみサーバを使用したい場合などには多くのメリットをもたらすが、ある程度規模が推測でき、それが大きく変化しないような状況であれば、オンプレミスやホスティングで運用した方がトータルでは安いという事態も十分にあり得る。

 従って、クラウドの導入をコスト観点で検討する場合は、単純な金銭面の比較だけでなく、運用時の手間の軽減や、実績に裏打ちされた圧倒的なスケーラビリティやアベイラビリティ(=可用性)などの品質面も考慮して検討することが必要だ。

 それから、システム化対象の業務が本当にクラウド向きであるかどうかを、実際にクラウド上で検証して判断することも重要である。これはWindows Azureも同様であるが、現時点のクラウドには技術的な制約がまだ多く存在するため、オンプレミスのシステムと同じように考えていると、思わぬ落とし穴に陥ることもある。三現主義(現場、現実、現物)を重視して検討するというのは、クラウドであっても何ら変わらないのである。

 最後に、Google App EngineやAmazon EC2はWindows Azureに先んじて、正式提供を開始した。Windows Azureが出遅れたことは事実であるが、グーグルやアマゾンがソフトウェア以外の業種からクラウドの世界にやってきたのに対して、マイクロソフトはずっとソフトウェアをなりわいとしてきたという歴史があり、この点について一日の長があることもまた事実である。そのマイクロソフトがソフトウェアでの長年の経験や英知を結集して作り上げたWindows Azureは、企業システムに大きな福音をもたらすと筆者は信じている。

 Windows Azureを知るための手引きとして、この記事が少しでも読者の参考になったなら幸いである。End of Article


 INDEX
  Windows Azure Platform速習シリーズ 
  Windows Azureのローンチに向けて知っておくべき4つのこと
    1.Window Azure とは何かを知る
    2.Windows Azureを取り巻く環境(現状)を知る
    3.Windows Azureの制約を知る
  4.Windows Azureの効率的な勉強方法を知る

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