Windows Azure Platform速習シリーズ:SQL Azure(前編) SQL Azureの機能と制約を理解する Windows Azure Community 山本 昭宏 (監修 市川 龍太)2010/01/12 |
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Windows Azure Platformとは、マイクロソフトが提供するクラウド・サービスのためのプラットフォームであり、現在は以下の3つのサービスから構成されている。
-
Windows Azure
クラウド上でのOSに相当する機能を提供する。 -
Windows Azure platform AppFabric
主にエンタープライズ・サービス・バス機能とアクセス管理機能を提供する。 -
SQL Azure
クラウド上でデータベース関連の機能を提供する。
本稿では、このうち3つ目のSQL Azureを解説する。
ところで、「クラウド上のデータベース」と聞いて、開発者やデータベース管理者がSQL Azureを実際に導入する際に、課題となるのは何だろうか? やはり、「既存のデータベースとの互換性は保たれているのか?」、また、「現在のデータベース開発手法がそのまま流用できるのか?」といった不安が大きいのではないだろうか。
その点を踏まえ、本稿では特にSQL Serverとの互換性に主眼を置き、以下の観点からSQL Azureの解説を行う。
【前編】SQL Azureの機能と制約を理解する
- SQL Azureの概要と特徴
- SQL Azure Databaseの制約
- 今後追加される予定の機能
- 料金体系とSLA
【後編】SQL Azureを実際に活用する
- 実際の使用法
- 開発手法
これらの観点からSQL Azureを実際に活用するための基本的な情報を提供し、読者に既存の知識や資産を有効に活用するための足掛かりとしていただくことが本稿の目的である。
なお、より理解を進めるために、同Windows Azure Platform速習シリーズの「Windows Azureのローンチに向けて知っておくべき4つのこと」と、.NET未来展望台シリーズの「クラウドの本命となるか? 進化するWindows Azure」に目を通しておくことをお勧めする。
■SQL Azureの概要と特徴
冒頭でも述べたが、SQL AzureとはWindows Azure Platformのデータベース関連の機能を含むサービスの総称である。SQL Azureは、今後提供される予定のものを含め、以下の機能により構成されている。
機能名 | 概要 | 備考 |
Database | リレーショナル・データベース機能を提供する。SQL Server 2008をベースにしており、基本的な機能に関する互換性がある。ほかのSQL Azure機能の基盤となる | |
Reporting | レポーティング機能を提供する。SQL Server Reporting Servicesと同様の機能を持つものと思われる | 今後提供予定 |
Business Analytics | ビジネス・インテリジェンス(BI)用のデータ分析機能を提供する。SQL Server Analysis Servicesと同様の機能を持つものと思われる | 今後提供予定 |
Data Sync | オンプレミス(=企業内)のSQL Serverとの、双方向のデータ同期機能を提供する | CTP 2009年11月版(英語)を提供中 |
SQL Azureの機能 |
以下にSQL Azureの概念図を示す。
SQL Azureの概念図 |
灰色のサービスは今後提供予定のものを表す。 |
以降では現時点で機能が提供されており、ほかのサービスの基盤となるSQL Azure Databaseについて解説する。
●SQL Azure Databaseの特徴
SQL Azure Databaseの特徴の1つは、リレーショナル形式のデータベース機能を提供するということだ。当たり前のことと思われるかもしれないが、SQL Azure Databaseの発表時(当時はSQL Data Servicesと呼ばれていた)、クラウド・サービスで先行するアマゾンとグーグルはデータの永続化サービスとして、リレーショナル形式のデータベースは採用していなかった。アマゾンとグーグルが採用していたのは、データをキーと値のセットで格納する「Key-Value形式*1」と呼ばれるシンプルな形式だった。
*1 これは.NET FrameworkのDictionary型をイメージするのが分かりやすいだろう。ちなみに、アマゾンとグーグルが提供するKey-Value形式のデータ永続化サービスは、それぞれSimpleDB(アマゾン)とBigTable(グーグル)と呼ばれている。Key-Value形式のストレージの詳細に関しては「もう1つの、DBのかたち、分散Key-Valueストアとは」を参照されたい。 |
Key-Value形式は構造がシンプルであるため、クラウド・プラットフォームに求められるデータの大規模分散管理に適しており、実際SQL Azure Databaseも当初はKey-Value形式を拡張した「ACE」(Authority-Container-Entity)という形式でデータを格納していた。しかし、実際には開発者の声の大半は従来のリレーショナル形式のデータベースを望むものだったため、現在のSQL Serverとの互換性を高めたリレーショナル型のデータベース・サービスに変更されたという経緯がある。
結論として、SQL Azure Databaseはリレーショナル形式のデータベースを採用し、SQL Serverとの互換性を有することで、オンプレミスの既存のデータ構造を大幅に変更することなくクラウドへ移行できるようになっている。
もちろん、代わりに大規模分散処理には向かなくなってしまったのだが、Windows Azureでもテーブル・ストレージというKey-Value形式のストレージを提供しており、そのようなデータを扱う場合に使用できる。詳細は「初めてのWindows Azureテーブル・ストレージ開発」を参照されたい。
もう1つのSQL Azure Databaseの特徴は、サーバの構築、ソフトウェアのインストールや更新がSQL Azure Databaseによって自動的に管理され、実行されるということだ。加えて、データの複数ノードへのレプリケーション、障害検知、障害発生時のレプリケート先へのフェイル・オーバーまで自動的に行われる。これらの自動管理機能によって、環境構築、運用のコストを下げられる可能性もある。
■SQL Azure Databaseの制約
ここではSQL Azure Databaseの主な制約を解説する。
SQL Azure Databaseでは高可用性を実現するため、データの自動レプリケーションや障害発生時の自動フェイル・オーバーといった機能が提供される。これらの機能を実現するため、データベース・ファイルやインデックス・ファイルの配置など、物理リソースの管理はSQL Azure Databaseが自動的に行う。そのため、現状ではユーザーが直接ファイル・システムなど、サーバの物理リソースにアクセスすることはできないようになっている。
SQL Azure Databaseには上記のような理由に基づく制約が存在するので、既存のデータベースからの移行を行う場合は、これらの制約を熟知しておく必要がある。
SQL Azure DatabaseのT-SQLの主な機能のサポート状況を以下の表にまとめたので、まずはこれを概観してみよう。
機能(日本語) | サポート区分 |
定数 | サポート、または部分的なサポート |
制約 | サポート、または部分的なサポート |
カーソル | サポート、または部分的なサポート |
インデックスの管理と再構築 | サポート、または部分的なサポート |
ローカル一時テーブル | サポート、または部分的なサポート |
予約済みキーワード | サポート、または部分的なサポート |
ストアド・プロシージャ | サポート、または部分的なサポート |
統計情報の管理 | サポート、または部分的なサポート |
トランザクション | サポート、または部分的なサポート |
トリガー | サポート、または部分的なサポート |
テーブルの結合とテーブル変数の使用 | サポート、または部分的なサポート |
データベース、テーブル、ユーザーなどのCREATE/ALTER/DROP | サポート、または部分的なサポート |
ユーザー定義関数 | サポート、または部分的なサポート |
ビュー | サポート、または部分的なサポート |
バックアップおよび復元 | サポート対象外 |
SQL CLR | サポート対象外 |
データベース・ファイルの配置(アタッチおよびデタッチ) | サポート対象外 |
データベースのミラーリング | サポート対象外 |
分散クエリ | サポート対象外 |
分散トランザクション | サポート対象外 |
複数のアクティブ結果セット(MARS) | サポート対象外 |
ファイルグループ管理 | サポート対象外 |
グローバル一時テーブル | サポート対象外 |
空間データ型およびインデックス | サポート対象外 |
SQL Server構成オプション | サポート対象外 |
SQL Server Service Brokerの使用 | サポート対象外 |
システム・テーブルの操作 | サポート対象外 |
トレース・フラグの使用 | サポート対象外 |
SQL Azure Databaseでの主なT-SQL機能のサポート状況 |
この表を見ると、サポートされない機能の多くは、システム関連の機能、データベースの物理リソースを直接操作する機能、複数のデータベースにまたがって処理を行う機能であるということが分かるだろう。
また、SQL Azure Databaseでのデータ型のサポート状況は以下の表のとおりである。
データ型のカテゴリ | データ型 | サポート区分 |
真数型 | bigint、bit、decimal、int、money、numeric、smallint、smallmoney、tinyint | サポート |
概数型 | float、real | サポート |
日付および時刻型 | date、datetime2、datetime、datetimeoffset、smalldatetime、time | サポート |
文字列型 | char、varchar、text | サポート |
Unicode文字列型 | nchar、nvarchar、ntext | サポート |
バイナリ文字列型 | binary、varbinary、image | サポート |
そのほかのデータ型 | cursor、sql_variant、table、timestamp、uniqueidentifier、xml | サポート |
hierarchyid、geography、geometry、CLRユーザー定義型 | サポート対象外 | |
SQL Azure Databaseでのデータ型のサポート状況 |
この表を見て分かるとおり、ほとんどのデータ型はサポートされているので、移行の際は既存のテーブル・スキーマを大きく変更することなく対応できるだろう。
サポートされていないデータ型の1つはCLRユーザー定義型で、現在はSQL CLR自体がサポートされていないため使用できない。ほかに、SQL Server 2008から追加された、Hierarchyid(階層ID型)、Geography(平面空間データ型)、Geometry(地理空間データ型)も使用できないので、移行の際は注意が必要だ。
それではSQL Azure Databaseについて特に知っておくべき制約を解説する。
●データ領域のサイズ制限
後でSQL Azure Databaseの料金体系で解説するが、現在のSQL Azure Databaseには1つのデータベースの最大容量が10GBytesまでという制約がある。
筆者が各種資料を読んだ限りでは、SQL Azure Databaseの思想として、巨大なデータベースを1つ用意するよりは、比較的小規模なデータベースを多数連携させることによりスケーラビリティを確保するという考えがあるようだ。これは、従来のデータ・パーティショニング機能を用いて大規模データベースを実現する方法と似たものだろう。
ただし、現在SQL Azure Databaseでは、データのパーティショニング機能は使用できない。10GBytesというデータベースの最大容量では足りないという場合は、データベースを追加で購入し、均等に分散させることのできる値(例:日付、キー値のハッシュ値)に基づいて、手動で複数のデータベースのテーブルにデータを分散させるという方法がある。
実際にデータベース分割(Database Sharding)によるスケールアウトをどのように行うかは「Windows Azure Platform Training Kit(英語)」のdemosの「Scaling Out SQL Azure with Database Sharding」にトレーニングがあるので参考にしてほしい。
●ユーザー認証
SQL Serverの認証方式にはWindows認証とSQL Server認証があるが、SQL Azure Databaseでの認証はSQL Server認証のみがサポートされ、Windows認証は使用できない。そのため、現在、データベースのユーザーやログイン、権限などの管理をActive Directoryのユーザーにひも付けて行っているデータベースを移行する際は注意が必要だ。
●バックアップと復旧
「T-SQL機能のサポート状況」の表にあるとおり、特に注意しなければならないのは、現在のSQL Azure Databaseではデータベースのバックアップや復旧、データベース・ファイルのアタッチ、デタッチが使用できないということだろう。
先に説明したとおり、SQL Azure Databaseは自動的にデータのレプリケーションを行い、障害発生時には自動的に復旧するという高可用性を有する。しかし、当然ながらオペレーション・ミスが発生した場合のロールバックなどまでサポートされるわけではないので、任意のバックアップや復旧を行う手段は必要となるだろう。
バックアップや復元に関しては、後編の「SQL Azure Databaseを実際に使用する」で説明するBCP(bulk copy)ユーティリティ、SSIS(SQL Server Integration Services)を使用するという方法がSQL AzureのSDKで提示されている。
●参考リンク
SQL Azure Databaseの制約に関する詳細が記載されているページへのリンクを以下にまとめた。必要に応じて適宜参照してほしい。
- ガイドラインと制約(英語)
- Transact-SQLのサポート(英語)
- データ型(英語)
- サポートされるTransact-SQLステートメント(英語)
- 部分的にサポートされるTransact-SQLステートメント(英語)
- サポートされないTransact-SQLステートメント(英語)
続いて、SQL Azure Databaseに今後追加される予定の機能の説明を行う。
INDEX | ||
Windows Azure Platform速習シリーズ:SQL Azure(前編) | ||
SQL Azureの機能と制約を理解する | ||
1.SQL Azureの概要と特徴/SQL Azure Databaseの制約 | ||
2.SQL Azure Databaseに今後追加される機能の予定/料金体系とSLA | ||
Windows Azure Platform速習シリーズ:SQL Azure(後編) | ||
SQL Azureを実際に活用する | ||
1.SQL Azureの契約とSQL Azure Databaseの準備 | ||
2.SQL Server Management StudioによるSQL Azure Databaseの操作 | ||
3.SQL Azure Databaseの開発手法 | ||
「Windows Azure Platform速習シリーズ」 |
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