連載
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前回は、Enterprise Libraryがほかのオープンソースと決定的に違う性格を有していることや、Enterprise Libraryの目的、それに含まれるApplication Blockの種類などを概説した。
今回は、Enterprise Libraryを使用するうえで必須の基本ツールについて、より詳しく説明する。さらに具体的な活用方法の話(次回)に入る前に、一通りのインストール手順を示しておく。
Enterprise Libraryを使いこなすための基本ツール
Enterprise Libraryに含まれるツール、バッチ・ファイル、ドキュメントについては、前回もその名称だけは紹介した。今回はそれらの中でも特に重要な基本ツールの機能について解説しよう。
●Enterprise Library Configurationコンソール(構成管理ツール)
Enterprise Library登場以前のApplication Blockでは、構成情報(そのApplication Blockの挙動をカスタマイズするための情報)をアプリケーション構成ファイル(いわゆる.configファイル)に手作業で記述する必要があり、さらに構成管理を行うためのドキュメンテーション(XMLのスキーマ構成など)に一貫性がなかったことから構成管理に非常に手間がかかるという問題があった。
そこでEnterprise Libraryでは、「The Enterprise Library Configuration Console」(以下Configurationコンソール)と呼ばれる構成管理ツールを提供することで、構成ファイルをGUI画面から簡単に変更・管理できるようにしている。
このConfigurationコンソールには、構成管理に関する多くの便利な機能が搭載されている。例えば、そのうちの1つに入力チェックを行うための検証(Validate)機能がある。このおかげで、仮に必須入力項目が未入力だったとしても、このValidate機能が働いてエラーが通知され、エラー個所がひと目ですぐに分かるようになっている。次の画面は実際にその検証機能が働いたところである。
●ビルドおよびインストール用のバッチ・ファイル
Enterprise Libraryでは、それに含まれるApplication Block自身のビルドやインストールなどを行うためのバッチ・ファイルが標準で用意されている。具体的には次の3つがある。
- BuildLibrary.bat
すべてのApplication Blockと各ツール(具体的には、前述の「Configurationコンソール」と、後述する「Security Database Administration Console」)を(デフォルトではデバッグ・モードで)ビルドするためのバッチ・ファイル。
- CopyAssemblies.bat
各Application Blockのターゲット・ディレクトリ(=ビルドされたアセンブリが出力される場所)にあるすべてのアセンブリを、「<INSTALLDIR>\bin」ディレクトリ直下にコピーするためのバッチ・ファイル。
このバッチ・ファイルを実行すると、例えばData Access Application Blockでデバッグ・ビルドして「C:\Program Files\Microsoft Enterprise Library\Data\bin\Debug」に出力されたすべてのアセンブリは、「C:\Program Files\Microsoft Enterprise Library\bin」にコピーされる。また、リリース・ビルドの場合は、CopyAssemblies.batファイルの中に記述された「set buildType=Debug」を「set buildType=Release」に変更してからバッチ・ファイルを実行すれば、ターゲット・ディレクトリにリリース版のアセンブリがコピーされる。
なお<INSTALLDIR>は、Enterprise Libraryをインストールしたディレクトリのことで、デフォルトでは「C:\Program Files\Microsoft Enterprise Library」となる。インストールについては後述する。
- InstallServices.bat
各Application Block用のパフォーマンス・カウンタを登録するためのバッチ・ファイル。パフォーマンス・カウンタとは、何らかのパフォーマンス(例えば、メモリやネットワークの負荷状況など)を計測するためにWindowsが提供している機能である。パフォーマンス・カウンタの情報は、パフォーマンス・モニタなどで参照することができる。パフォーマンス・モニタは、コントロール・パネルの[管理ツール]フォルダにある[パフォーマンス]アイテムから起動できる。
これらのパフォーマンス・カウンタを活用すれば、各Application Blockを使用した際のボトルネックを分析することができるだろう。
●Security Database Administration Console
ユーザー・ロール権限を管理するSecurity Application Block用のツールで、以下の2つのデータベース承認プロバイダ(=対象データベースを更新するモジュール)を使ってユーザー編集、ロール編集を行うためのGUIを提供する。
- Security Database Authentication Provider
Security Application Blockが使用するSecurityデータベースを管理するためのプロバイダ。
- QuickStarts Database Authentication Provider
QuickStartsサンプルが使用するEntLibQuickStartsデータベースを管理するためのプロバイダ。
Enterprise Libraryの各Application Blockの間には、「重要な関係」がある。それについて次にページで説明しよう。
INDEX | ||
連載:Enterprise Library概説 | ||
Enterprise Libraryの基本ツールと導入手順 | ||
1.Enterprise Libraryを使いこなすための基本ツール | ||
2.各Application BlockとConfigurationコンソールの依存関係 | ||
3.Enterprise Libraryのインストール | ||
「Enterprise Library概説」 |
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