連載
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カスタムDownloaderを作成する
ここまでで、UABを利用することにより、BITSを使った基本的なダウンロード機能だけでなく、Activation Processを利用して非常に柔軟な更新処理を実現できることがお分かりいただけたと思う。
しかしBITSを使ったダウンロード機能は、BITSをサポートしていないOS(Windows 98など)では利用できず、さらにはイントラネット内で利用するアプリケーションであれば、もっと手軽で高速な更新ができるように共有フォルダからUNCアクセスによってファイルをコピーしたい場合もあるだろう。
そこで次に、BITSを利用せずにUNCアクセスでファイルをコピーするようなカスタムDownloaderを作成してみよう。
●UNCDownloaderを作成する
UNCアクセスによるDownloaderを作成するには以下の手順で行う。
Visual Studioのプロジェクトの新規作成で、クラス・ライブラリ・プロジェクト(プロジェクト名はUNCDownloader)を作成する(先ほど作成したWindowsアプリケーションのソリューションに新規プロジェクトを追加すればよいだろう)
以下のアセンブリ・ファイルへの参照を追加する
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Microsoft.ApplicationBlocks.Updater.dll
→ UABをインストールしたフォルダ(基本的に「C:\Program Files\Microsoft Patterns & Practices\Updater Application Block 2.0」)の「Common」フォルダの中にある -
Microsoft.Practices.EnterpriseLibrary.Configuration.dll
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Microsoft.Practices.EnterpriseLibrary.Common.dll
→ Enterprise Libraryをインストールしたフォルダ(基本的に「C:\Program Files\Microsoft Enterprise Library June 2005」)の「bin」フォルダの中にある
で作成したプロジェクトにIDownloaderインターフェイスを継承したクラス(クラス名はUNCDownloder)を追加する
で作成したプロジェクトにDownloadProviderDataクラスを継承したクラス(クラス名はUNCDownloaderProviderData)を追加する
Manifestツールで構成設定を行う
各構成ファイルを手動で設定する
この手順のうち、のUNCDownloderクラスとのUNCDownloaderProviderDataクラスについては、UAB付属のドキュメントに記述されているCode Sampleが利用できる。なお、このCode Sampleは問題のある個所がいくつかあるため、筆者が修正したものを以下からダウンロードできるようにした。
●[Downloader]タブにおけるプロパティ設定
次にManifestツールの[Downloader]タブを開いてDownloader名として「UNCDownloader」を設定する。
[Downloader]タブにおけるプロパティ設定 |
●[Applicaton Properties]タブにおけるプロパティ設定
以下の画面は、Manifestツールの[Application Properties]タブの各プロパティの設定例である。更新ファイルが配置されているフォルダの設定などでは共有フォルダを指定する。
以上の設定を行ったら保存しておこう。
●各構成ファイルを手動で設定する
BITSDownloaderを利用する場合はConfigurationコンソールを使って各構成ファイルの設定を行えたが、UABではほかのApplication Block(例えばLoggingAB)のようにConfigurationコンソールからカスタム機能を利用するような仕組みがまだ用意されていないため、カスタムのDownloaderを利用する場合は、これを手動で設定する必要がある。
従って、実際にUNCDownloaderを利用する場合は、まずConfigurationコンソールでBITSDownloader用の設定で構成ファイルを設定してから、UNCDownloader用に各構成ファイルを修正する方が簡単であろう。
ここではまず、UAB用の構成ファイル(本稿ではデフォルトのファイル名のままでUpdaterConfiguration.config)を以下のように修正する。
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UAB用構成ファイル(UpdaterConfiguration.config)の設定 | |
<downloaders>要素の中の内容をこのように書き換える。 |
続いてアプリケーション構成ファイル(App.config)を以下のように修正する。
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アプリケーション構成ファイルの設定 | |
<includeTypes>要素の中の内容をこのように書き換える。<includeType>要素のname属性には任意の名前を設定し、type属性には名前空間付の完全修飾名、アセンブリ名の順で設定する。 |
最後にUNCDownloaderプロジェクトをビルドして、作成された.DLLファイルへの参照を、Windowsアプリケーションのプロジェクトに追加すれば完了だ。
これで「UABを使用した場合のサンプル・プログラム(C#)」を実行すると、コピー先フォルダ(ここではC:\ DestFolder)直下にファイルがダウンロードされるはずだ。
UAB付属のドキュメントには、カスタムActivation Processorとしてレジストリに任意の値を追加するRegistryProcessorの作成方法についても紹介されているため、興味のある方は試してみるとよいだろう。
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以上、今回はUABの概要説明と導入手順、さらにはActivation Processの使用方法やカスタムDownloaderを作成する手順について解説した。
UABの導入は一見すると複雑に思われるかもしれないが、Activation Processによる処理の実行や柔軟な拡張性など、ClickOnceを始めとするほかの自動更新技術にはない機能を備えているので、自動更新処理を実装する場合の選択肢の1つとして検討する価値は十分あるといえる。
次回はSecurity Application Blockについて.NETが提供する認証機能を踏まえて解説する予定である。
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INDEX | ||
連載:Enterprise Library概説 | ||
UpdaterABを使った高度な自動更新機能を実装する | ||
1.ConfigurationコンソールでUABの構成を設定する | ||
2.Manifestツールでマニフェスト・ファイルを設定する | ||
3.更新処理とActivation Processを実行する | ||
4.カスタムDownloaderを作成する | ||
「Enterprise Library概説」 |
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