第3回 読者アンケート結果
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2001年は Microsoft .NET に関するさまざまな動きが見られたが、システム開発の現場に携わるエンジニアにとって最も重要な出来事といえば、「Visual Studio .NET ベータ2」のリリースだったのではないだろうか? .NET や XML Webサービスの概念についてはすでに多くが語られてきたが、その本質を理解するには、製品版に近いこのベータ2を使うことで得られる体験に勝る情報はないからだ。では実際どのくらいのエンジニアがベータ2を入手し、どのように使用しているのだろうか? Insider.NET フォーラムが実施した第3回読者アンケートから、その状況を報告する。
読者の約4割がVisual Studio .NETベータ2を利用
本題に入る前に、Insider.NETフォーラム読者の開発環境を確認しておこう。図1は、読者が日ごろよく使用している開発ツールについて質問した結果だ。「Visual Basic」「Visual Studio」といったマイクロソフト関連ツールの使用率が高いのはもちろん、「Java2 SDK」「Borland JBuilder」などのJava開発ツールの使用者も少なからず存在しているのが特徴だろう。言語やプラットフォームに縛られない、XML Webサービスに関心を持つ層の拡がりが表れた結果といえよう。
図1 日ごろ使用する開発ツール(ソフトウェア開発関与者、複数回答 n=196) |
ではさっそく、読者の Visual Studio .NETベータ2(以下VS .NET)の入手状況から見てみよう。図2に示すとおり、「すでに入手して使用している(使用する予定がある)」層は、全体の39%となった。「すでに入手しているが、使用する予定はない」人も11%いるが、コメントを見ると提供メディア(DVD-ROM)やマシン・スペックがネックとなっているケースもあるようだ。またこの時点では全体の半数が未入手であったが、「近いうちに使ってみたい」「製品版が出てから使ってみたい」との回答が各20%に達しており、入手状況にかかわらず、VS .NETへの興味度は非常に高いレベルにある。
図2 VS .NETベータ2入手状況(N=219) |
今すぐ C#! ちょっと待ってWebサービス?
では続いて、VS .NETの使用状況をチェックしよう。VS .NETの特徴の1つは「使用可能言語が豊富であること」だが、現ユーザーの使用言語を見ると「Visual C# .NET」がVB/VC++を上回り、トップとなっている(図3 青い棒グラフ)。歴史的には最も浅いC#であるが、既存言語の集大成/進化形といわれる魅力からか、着実に利用者は増えているようだ。
一方、VS .NET利用意向者も含めて、今後使用したい言語を聞いたところ、C#人気が現在同様高いことに加え、「Visual J# .NET」の使用意向がVB/VC++並みに上がっている点が注目される(同黄色の棒グラフ)。J#投入目的の1つは「Javaプログラマが.NET FrameworkベースのWebサービス・プログラミングを始めやすくすること」だが、図1で見たようなJava開発者にとって、やはりJ#は気になる存在であるようだ。
図3 VS .NET言語使用状況/使用希望(複数回答) |
次に、VS .NETによる各種プロジェクトの作成状況を見てみよう。図4は、VS .NETの現ユーザー/利用意向者を対象に、現在作成している/今後作成したい各プロジェクトを尋ねた結果だ。現在のプロジェクトでは「Windowsアプリケーション」および「Webアプリケーション」の作成率が高い反面、.NETの本領ともいうべき「Webサービス」作成者は1割程度にとどまり、新機軸という点では、C#言語の利用状況と対照的な結果になった。
考えてみれば、当フォーラムの主な読者は何らかの言語を使用して開発業務に携わってきた人達であり、大半はいままでの経験を生かしてC#を利用することができるだろう。それに比べてWebサービスは「インターネット上の分散アプリケーション」であり、分散オブジェクトを扱った経験がなければとっつきにくい面があるのかもしれない。 Insider.NETでは、手軽にXML Webサービス作成を体験できるプロジェクト「NetDictionary」も実施しているので、「Webサービスに興味はあるけれど、何から手をつけたよいか分からない」という方にはぜひご活用いただきたい。
図4 VS .NETプロジェクト作成状況/作成希望(複数回答) |
WebホスティングとVisioで広がるIDEの概念
さてVS .NETでは、ベータ2よりいくつかの新機能が搭載されているが、読者が実際に使っている/使ってみたいのはどのような機能なのだろうか? VS .NET使用者/使用意向者に聞いた結果、「Webホスティング」を挙げる読者がダントツの5割に達した(図5)。VS .NETで開発したWebアプリケーションやWebサービスを簡単にテスト/公開できるこの機能は、今後Webサービス普及のカギを握るインフラとなりそうだ。ただしベータ2で提供されているWebホスティングは英語版のものであり、当フォーラムの掲示板でも多少の不具合が報告されている。製品版発売の際は、ぜひ日本のプロバイダでもこの機能を実現してほしいところだ。
図5 VS .NETベータ2新機能利用意向(複数回答 n=197) |
またグラフでは、Webホスティングに次いで「Visio」のポイントが高い点も興味深い。ネットワーク構成図やフローチャート作成ツールとして普及したVisioであるが、VS .NETではUML 1.2をサポートしたビジュアル・モデリング・ツールとしての側面がフィーチャーされている。
いままでIDEといえば、エディタ/コンパイラ/デバッガなどが統合された開発環境を意味してきたが、VS .NETの新機能利用意向を見ていると、その概念が大きく拡張されていく予感がする。多くのアプリケーションがインターネット・ベースになりつつある現在、刻々と変化する顧客ニーズの中で開発生産性を高めるには、モデリングによる要件定義からコーディング、実行環境(ホスティング)までがシームレスに統合されることの意義は大きいのではないだろうか? 「インターネット時代のIDE」分野を確立できるのかどうか、いよいよ正式出荷される2002年のVisual Studio .NET動向に注目していきたい。
調査概要 | |
調査方法
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Insider.NET サイトからリンクした Webアンケート |
調査期間
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2001年10月26日〜11月26日 |
有効回答数
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219件 |
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「Insider.NET 読者調査結果」 |
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