特集:Windows Azure SDK 1.3の新機能(前編) Windows Azure 1.3の新機能の概要 株式会社 ビービーシステム 亀渕 景司2010/12/27 |
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■新しい管理ポータル
●Windows Azure Platform管理ポータル
今回のリリースでWindows Azure Platform管理ポータルが刷新された。新しい管理ポータルはSilverlight 4ベースのWebアプリケーションとなっている。次の画面はその例。
新しい管理ポータルでは、仮想マシンなどを効率的に管理できるよう、タスクの共通化やデザインの刷新、リボン・インターフェイスの採用など、各コンポーネントの操作がより直感的に行えるようになっているほか、稼働しているロール・インスタンスの再起動や再展開を行う機能も搭載されている。
※執筆時点では、管理ポータルにWindows Azure Platformの全機能が統合されておらず、Windows Azure AppFabricおよびSQL Azure Reporting/Data Syncについては従来の管理ポータルを利用する必要がある。
○複数の管理者(Multiple Admins)
新しい管理ポータルでは、契約したサブスクリプションに対し、別のWindows Live IDを管理者としてひも付けることが可能だ。これにより管理の委任や複数のサブスクリプションの統合管理が容易になる。
次の画面は、管理ポータルで管理者アカウントを表示しているところ。
図11 管理者アカウント設定例 |
現在管理しているサブスクリプションに対し、別のWindows Live IDユーザーを管理者として割り当てることが可能だ。 |
●SQL Azure管理ポータル
SQL Azure上のデータベースに関する管理など、詳細な作業はSQL Azure管理ポータル(旧称:“Project Houston”)で行うことができる。
SQL Azure管理ポータルは、ベータ段階では独立したWebアプリケーション(“Project Houston”)として提供されていた。新しいWindows Azure Platform管理ポータルでは、SQL Azureサーバ・インスタンスの管理が可能になり、より詳細な作業を行うためのSQL Azure管理ポータルへすぐにアクセスできるよう統合されている。
次の画面は、SQL Azure管理ポータルの表示例。
[Manage]ボタンをクリック |
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図12 SQL Azure管理ポータル | ||||||||||||||||||
Windows Azure Platform管理ポータルには、SQL Azure管理ポータルが統合されている。 | ||||||||||||||||||
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SQL Azure管理ポータルでは以下の機能が利用可能だ。
- データベースに関する利用統計や概要表示、各種リソースへのリンクなどをキューブ状に表示
- テーブルのデザイン・編集
- ビューのデザイン支援
- ストアド・プロシージャのデザイン支援
- T-SQLエディタ
■そのほかのアップデート
SDK 1.3での追加機能ではないが、米国で開催された開発者向けイベントであるPDC10以降に公開、アップデートされた機能を最後に紹介しておく。
●Windows Azure AppFabric Caching
Windows Azure AppFabric Cachingは、2010年10月末にCTP版がリリースされたWindows Azure向けの分散型メモリ内キャッシュ機能だ。この機能では、オンプレミス上で利用可能なWindows Server AppFabricに搭載されているキャッシング機能(旧称:“Velocity”)と同じコンセプト、プログラミング・モデルでキャッシュ機能を利用できる。
開発者はWindows Azure AppFabric Cachingを利用することで、Windows Azureアプリケーションにおけるデータ・アクセスの高速化や複数のロール・インスタンスでのASP.NETセッション状態の共有など、統合されたキャッシュ層を活用することができる。
執筆時点ではCTP版リリースのため、Windows Server AppFabric Cachingでは提供されている一部のサブセット機能が利用できない(例えば通知やキャッシュの期限変更など)。
Windows Azure AppFabric Cachingのほか、Access ControlやService Busのベータ機能が含まれているWindows Azure AppFabric Labsの利用はこちらの管理ポータルから行える。
●SQL Azure Reporting/Data Sync
SQL Azure Reportingは、SQL Server Reporting ServicesをベースとしたWindows Azure Platform上のレポーティング機能だ。この機能を使えば、SQL Azureデータベースをデータ・ソースとしてテーブルやチャート、地図、マトリックスといったレポートをクラウド上で生成できる。そのため、特別な準備などを行わずに、すぐにレポーティング機能を利用することが可能になる。
開発者はすでにオンプレミスで生成しているSQL Server Reporting Servicesのレポート・フォーマットを利用することも、無償のBusiness Intelligence Development Studioを使用して新たに作成することも可能だ。
レポートを参照する利用者は、ブラウザさえあればどこからでもSQL Azure Reportingに接続し、レポートの参照やPDF/Excel/CSVファイルとしてダウンロードすることができる。
また、SQL Azure Data Syncはコーディング不要なSQL Azureデータベース同期機能だ。これを利用することで、同一データセンター内のSQL Azureデータベース同士での同期およびSQL Azureの(世界各地にある)データセンター間でのデータベースの同期が可能になる。
今後リリースが予定されているSQL Azure Data Sync CTP2では、さらに複数のオンプレミスのSQL ServerやほかのSQL Azureデータベースと同期を行うことが可能になる。これにより、開発者は複雑なコーディングをせずにデータベース同期を行うことができ、自社および支店への同期など、多様なシナリオに対応することが可能だ。
SQL Azure Reporting CTPおよびSQL Azure Data Sync CTP 2の申込みはMicrosoft Connectから行うことができる。
●Windows Azure Marketplace
Windows Azure Marketplaceは、さまざまなデータセットや、Windows Azure Platformに関連するコンポーネント、トレーニング、サポート、セキュリティなどの多様なカテゴリにおける完成されたサービスやアプリケーションを、共有、検索、購入・販売することができるオンライン・マーケットプレイスだ。
○Windows Azure Marketplace DataMarket
DataMarketセクション(旧称:“Dallas”)は、商用データを提供するデータ・プロバイダを集約したオンライン・マーケットプレイスだ。
DataMarketセクションではすでに70を超える多様な商用データ・プロバイダが登録されており、利用者の目的に最適な、例えば人口統計やニュース、小売業、金融といったデータセットを提供しているデータ・プロバイダを検索できる。また、多数のデータセットを保持しているプロバイダ(パブリッシャ)は、DataMarketセクションに登録することで顧客へ販売する機会を得ることができる。
データセットそのものはWindows Azure Platform上からOData形式で提供される。Microsoft PowerPivot for Excel 2010など、OData形式をサポートするさまざまなクライアントにより、購入したデータセットをそのまま操作することや、Visual Studioなどの開発ツールを使用してアプリケーション内で利用することも可能だ。
DataMarketセクションは現在英語版インターフェイスのみが提供されているが、すでに日本企業からもデータセットが公開されている。
○Windows Azure Marketplace Applications
Applicationsセクションは、Windows Azure Platformに関連する、さまざまなカテゴリの完成されたサービスやアプリケーションを参照、検索できるオンライン・マーケットプレイスだ。
Applicationsセクションは、Microsoft PinPointに統合されており、Microsoft Partner Networkを通じて管理する。パートナー企業はアプリケーションだけに限らず、トレーニングやサポートといったプロフェッショナル・サービスについても登録することができる。
利用者はApplicationsセクションを使用し、統合された入り口から必要なサービスを検索し、詳細を見ることができる。
Applicationsセクションは、さまざまなソリューションを集約した市場としてパートナー企業と利用者を結べるようになるだろう。
※Applicationsセクションは執筆時点で英語ベータ版のみが公開されている。
■まとめ
ここまでに紹介したように、Windows Azure SDK 1.3には多くの機能追加と変更が含まれている。追加された機能はどれも強力で、クラウド・アプリケーションを開発・運用する際に開発者を助けてくれるだろう。
ただし実際の利用に当たっては、フルIISなど、従来のバージョンに比べて動作仕様が変更された個所もあるため、アップグレード時や新規実装時には十分に注意してほしい。
追加された機能の一部には、正式版ではなくCTPやベータ版のものも多数含まれているが、Windows Azure PlatformおよびWindows Azure SDK 1.3そのものはすでに(開発者による利用が)“Ready”だ。またWindows Azure Marketplaceなど、利用者・開発者ともに恩恵を受けられるサービスの提供も始まりつつある。
これを機に、既存アプリケーションの移行や運用の見直し、新規開発やビジネス開拓など、“Cloud Power”の活用に、ぜひチャレンジしてみてはいかがだろうか。
INDEX | ||
特集:Windows Azure SDK 1.3の新機能(前編) | ||
Windows Azure 1.3の新機能の概要 | ||
1.Windows Azureの新機能とSDK 1.3 | ||
2.新しい管理ポータル/そのほかのアップデート | ||
特集:Windows Azure SDK 1.3の新機能(中編) | ||
Windows Azure実行環境へのリモート・デスクトップ接続 | ||
1.リモート・デスクトップ接続の概要/事前準備 | ||
2. リモート・デスクトップ接続を利用する | ||
特集:Windows Azure SDK 1.3の新機能(後編) | ||
すべてが自由自在なクラウド環境「仮想マシン・ロール」 | ||
1.仮想マシン・ロールの概要/仮想マシンを準備する | ||
2. 仮想マシン・ロールを利用する | ||
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