特集
Visual Studio .NETベータ2 オーバービュー

7.Webアプリケーション開発環境として見たVS .NETとC#

槙邑 恭介
2001/09/06

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 すでに説明したように、Visual InterDevという開発ツールはもう存在しない。これはWebアプリケーションが、プログラミング言語を使って実現するソリューションの1つとして位置づけられたことを表わしている。VS .NET上でC#やVBでWebアプリケーションを作成すると、ASP .NETによるWebアプリケーションのひな形(テンプレート)が生成される。これをベースにWebアプリケーションを作成していくわけだが、従来のVBScriptなどを使ったASPベースの開発をどのようにフォローしていくのかについては明らかではない。

 ASP .NETによるアプリケーション作成では、ビジネス・ロジック以降の層がCLRに移されることで、ロジックの記述やデータベース接続などがこれまでよりも容易に実装できるようになっている。ビジネス・ロジックの中からXML Webサービスを利用することで、多階層の分散処理も容易に実現できるようになる。

C#でのアプリケーション作成

 C#については、本フォーラムの別稿(C#入門C#プログラミングTips)などで詳しく解説されているので、ここで改めて詳細は説明しない。ただ、C#はCLR上で動作するアプリケーションを記述するためのプログラミング言語のリファレンス的な存在であることには間違いない。C#は分散アプリケーションを構築するためのキーとなるプログラミング言語であるように思われるが、もちろんコンソール・アプリケーションを作成することも、Windowsアプリケーションを作成することもできる、最も適応範囲の広いプログラミング言語だといえる。このWindowsに関連するすべてのプログラミング領域をカバーするプログラミング言語としてC#に注目したい。

Enterprise Architectに含まれる機能

 今回公開されたベータ2には、Enterprise版の機能のいくつかが含まれている。Visioもその1つで、オープンしているプロジェクトを解析してUMLを作成したり、作成したUMLからソースを生成したりできる。ただしこれがEnterprise Architectに含まれるソフトウェアモデリング機能を示しているのかはやや疑問である(Visual Studio 6.0では、Rational社のモデリング・ツールのサブセットが含まれていた)。ソース・コード(バージョン)管理システムであるVisual SourceSafeについても、VS .NETベータ2にはバージョンは6.0cが付属しており、インストーラもVS .NETから独立している。Visual Studio 6.0に含まれるものとほとんど変更されていない感じである。このあたりは製品版でどのような構成になるのか興味深い点である。

 もう1つ、今回のベータ2には「Microsoft Application Center Test 」というツールが含まれていた。これは、VS .NETとは独立したアプリケーションで、ターゲットのWebアプリケーションにアクセスする処理を行い、Webアプリケーションのパフォーマンスや安定性のテストを行えるようにする。

Microsoft Application Center Test
nterprise Architectに含まれるWebアプリケーション・テスト・ツール

終わりに

 .NETフレームワーク(CLR)という共通のプラットフォームを提供することで、あらゆるプログラミング言語による、あらゆるアプリケーションの作成からデバッグまでが1つの開発環境で行えるというのはすばらしいことであるといえる。また.NET Frameworkでは、クラス・ライブラリやユーザーの作成したコードのバージョン管理、セキュリティの管理などを厳格に行うことで、従来からあった、いわゆるDLL地獄(DLLのバージョンの不整合や競合などによって引き起こされる数々の不具合)をなくすことができるという。MFCのバージョンによってアプリケーションの動作が不安定になるといったことは、CLR上では起こらないことになっている。

 ただ、1つ気になるのは、システム・レベルのクラス・ライブラリ提供のタイミングである。Windows 2000がリリースされてからすでにずいぶん時間が経つが、いまだにMFCがバージョンアップされず、Windows 2000の新機能を利用したければ、Win32 APIを直接呼び出す以外に方法がない。.NET Frameworkのクラス・ライブラリがこのようにならないことを願うばかりである。だからといって、バージョンアップを待ちきれずにアンマネージド・コードなコードを書き始めてしまうと、.NETの意味が半減してしまうだろうから、悩ましいところだ。End of Article

 

 INDEX
  [特集]Visual Studio .NETベータ2 オーバービュー
    1.Visual Studio .NETの概要
    2.統合開発環境の概要
    3.作成可能なプロジェクト
    4.Windows FormsとWeb Forms
    5.Visual C++でのアプリケーション作成の変化
    6.Visual Basicでのアプリケーション作成の変化
  7.Webアプリケーション開発環境として見たVS .NETとC#


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