米持幸寿のJava Issue
Javaコンソーシアムが卒業式
米持幸寿
日本アイ・ビー・エム
2001/7/5
「Javaコンソーシアム」は、Javaの普及を目指した企業団体である。会員数335会員となり、日本国内最大級の企業団体といえる。そのJavaコンソーシアムが、去る5月24日に行われた第4回総会をもって、正式にその幕を閉じることになった。
Javaコンソーシアムのホームページ |
これは、同コンソーシアムが「すでにその目的を達成した」との判断からである。Javaコンソーシアムの生い立ち、そして、その活動内容などを振り返り、Javaコンソーシアムの解散が何を意味しているのか、今後どうなっていくのか、まとめてみた。
◆Javaコンソーシアムの目的と活動内容◆
Javaコンソーシアムが設立されたのは、3年前の1998年5月27日のことだ。設立当時から、活動期間を3年(3期)と定めて活動してきた。そして、今回の総会において、活動終了が正式に決議された。
ホームページから見ることのできる会員規約の(目的)の項によれば、「第3条 本会は、Javaを利用したアプリケーション開発及びシステム構築の普及を推進する非営利団体である。」とある。すなわち、Javaの普及を推進する団体であったのだ。Javaの普及を目指して、Javaコンソーシアムが3年間にわたって実施してきた活動は以下のようなものだ。
●セミナー
Javaコンソーシアムでは、ほぼ毎月セミナーを行ってきた。合計68回のセミナーを行い、参加者数は延べ8853名という驚異的な数字を誇る。筆者も、何回かセミナーで話をさせてもらったことがある。内容が未定でも満員に近い参加者が集まるという、非常に人気の高いセミナーであった。
●部会活動
Javaコンソーシアムは、
- エンタープライズ・システム部会
- パッケージ製品部会
- 基礎技術部会
- 開発技法部会
- 工業応用部会
- XML部会
- 情報家電・組み込み研究会
- Java初心者のための勉強会
などの専門部会や研究会があり、それぞれにたくさんのメンバーが集って研究や試作などを行ってきた。コンソーシアムの資料によれば、部会に参加したメンバーは3年間で延べ2479名に上り、その規模の大きさがうかがえる。
●海外視察ツアー
昨年までは、毎年、海外視察ツアーが企画された。1998年には、「Java Business Expoツアー」、1999年、2000年には「JavaOne視察ツアー」が実施された。
●展示会
13回の展示会において、会員各社のJava対応製品カタログ(514種類)の展示、70のセッションでJava/XMLに関する講演を行った。
●原稿執筆、広告掲載
月刊『JavaWorld』誌において、連載「Javaコンソーシアム通信」を合計30回掲載した。また、32回にわたり、『JavaWorld』や『Business Computer News』紙に広告を掲載した。ほかに、部会メンバーによる記事も多数掲載された。
◆XML部会は、XMLコンソーシアムへ◆
XML部会は、その活動を「XMLコンソーシアム(http://www.xmlconsortium.org/)」に移し、XML部会の各チームは、今後XMLコンソーシアムの部会として存続することになった。
XMLコンソーシアムのホームページ |
XMLコンソーシアムは、JavaコンソーシアムのXML部会と、XMLjapan.orgのXMLを推進してきたメンバー企業が集合して設立したXML普及のための活動をする非営利団体であり、これも強力な企業団体になることが予想される。昨年7月に設立されたコンソーシアムであるが、しばらく活動していなかったが、今年6月18日の総会から本格的に活動を開始した。
筆者も、Javaコンソーシアムにおいては、XML部会リーダーグループ、XML部会・基盤研究グループ・APIチームに参加させてもらっていた。APIチームにおいては、去年から今年にかけて、Xerces(Java用XMLパーサ)の機能を改造してXPath機能を追加するための、クラスライブラリを開発するという活動を行ってきた。今後もXMLコンソーシアムの方で活動を継続する予定である。
◆なぜ活動終了なのか?◆
Javaコンソーシアムは、日本国内でのJavaの普及促進を目指した団体であった。今年4月に行ったアンケートでは、会員335の全会員にアンケートを取ったところ、94%の会員企業が「Javaは普及した」あるいは「普及しつつある」との回答をし、活動満了に関するアンケートにおいても、95%の会員企業が「『日本におけるJavaの普及促進』の目的を達成し、役割を果たした」と回答しており、設立当時の予定どおり、3年の会期をもって終了することとなった。
総会の中で、コンソーシアム代表である、NTTコムウェア株式会社 代表取締役社長 松尾勇二氏は、「Javaは、携帯電話などで、子どもたちが手にする時代にまでなった」と、iモードを例にしてJavaの普及を示し、「Javaは、今後、新しいエリアにさらに広がっていくだろう」と付け加えた。
総会では、Commencement(米語での卒業式、新しいことの始まりを意味する)という単語が引用され、「これは、解散ではない。Java関連企業が、Javaコンソーシアムを卒業し、それぞれの道へ旅立っていくのである」とのゲストスピーカーからの讃辞も飛び交った。当日、総会では、記念品として参加者全員にJavaコンソーシアムのロゴ入り電卓付き時計がプレゼントされた。
アットマークアイティでも、Javaフォーラムが盛況であるが、「Javaは普及した」というのは重みのある言葉だ。「もっと活動を続けてほしい」「セミナーだけでも続けてほしい」との声も多かったようだが、Javaコンソーシアムを卒業したメンバーが、さらに応用分野において活躍することを期待したいと思う。
今後、Javaは「知っていて当たり前のプログラミング環境/言語」となるだろう。今後、日本でのJavaの一層の発展が楽しみである。
Index |
第1回
ソフトウェアの部品化は現実になる?(2000/12/19)
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プロフィール |
米持幸寿 1987年、日本アイ・ビー・エム入社。 IBMメインフレームOSであるVSE、およびVM関連ソフトウェアプロダクト の保守、 システム無人化ソフトウェア開発を手がける。現在はJava、XML、EJBに関わるプロモーション活動を行っている。 [筆者執筆記事一覧] ・JavaとXMLはなぜ仲良し? ・Java Servlet徹底解説(JSPとの連携) ・Java Servlet徹底解説(EJBとの連携) |
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