Linux Book Review
Linux管理者になるならコレを読め!
中澤勇
@IT編集局
2002/3/1
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駆け出し管理者に薦めるLinux/UNIX関連書籍の公開から約1年。その間に数多くの管理者向け書籍が出版されてきた。そこで、またあらためて管理者向けの優れた書籍を集めてみることにした。これらの書籍が、スキルアップや管理の助けになってくれるだろう。
なお、こうして新しい書籍を紹介したからといって、1年前に紹介した書籍の価値が減ずるわけではない。以前に紹介した5冊とこれから紹介する4冊は、共に読んでおくべき書籍である。
各種サービスの使い方を分かりやすく網羅 |
Red Hat Linux 7で作る ネットワークサーバ構築ガイド 7.2対応 サーバ構築研究会 著 秀和システム 2001年12月 ISBN4-7980-0214-3 4200円 ※改訂により、本書は絶版となりました。改訂版は下記欄で注文できます。 |
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書名のとおり、本書はRed Hat Linux 7.2によるサーバ構築を詳細に解説したものだ。ssh、FTP、DNS、Web、メール、DHCP、Sambaなどの設定や運用はもちろん、initプロセスとそれにかかわる各種スクリプトの解説や制御、クオータ、RAIDの設定や運用、syslogとログ管理に関連するツール(swatchやTripwireなど)、ipchainsやiptablesの設定など、サーバの構築や運用に必要な事項が一通り網羅されている。
事項によって長短に多少の差はあるが、概要からインストール、サービスの制御、設定ファイルの構成や内容の詳細まで解説されている。Apacheなどの設定をまったく知らない人を、サービスの立ち上げから運用まで行えるようにするには十分な情報量である。これ以上凝ったことをやりたくなったら、sendmailやApacheの専門書を手にすればいいだろう。また、各種サービスの技術的な背景についても説明されており、単なる設定解説に留まっていないところも評価したい。本書の意義は、インストール本と各種の専門書の間をつなぐことにあるといえるかもしれない。
特定のディストリビューションやバージョンに特化しているため、どのRPMファイルをインストールすればよいのか、あるファイルがどこにあるのかといったことを具体的に説明でき、初心者にとっては分かりやすいというメリットもある。半面、内容がRed Hat Linux 7.2(のFTP版)に標準で収録されているパッケージに限定されるという制約にもなっている。レッドハット提供のRPMだけでシステムを固めるというのも1つの運用法ではあるが、若干広がりに欠ける面がないでもない。
いずれにせよ、初めてサーバを構築するならまず本書をとことんしゃぶり尽くすことから始めるのがいいだろう。インストール本を卒業した人に安心してオススメできる1冊だ。
名著が最新事情を取り込んで再び登場 |
Linuxネットワーク管理 第2版 オラフ・カーチ、テリー・ドーソン 著 オライリー・ジャパン 2001年12月 ISBN4-87311-067-X 5200円 |
Linuxでサーバを構築するなら、ネットワークの知識が不可欠である。TCP/IPの知識がなければIPアドレスの設定もままならず、ほかのホストと通信することすらできない。まして、DHCPサーバとしてクライアントにIPアドレスを割り当てたり、DNSサーバとして名前解決を引き受けるなど論外だろう。
というわけで、本書ではネットワークの基礎からTCP/IPの技術解説に多くのページを割いている。最近のディストリビューションではインストーラがやってくれること(例えば/procのマウントやNICの設定など)についてもきっちりと解説されており、あらためてLinuxのネットワーク機能を学ぶのに最適の1冊である。DNSやファイアウォール(ipfwadm、ipchains、iptables)、inetdやxintedなどについての解説はもちろん、「IPアカウンティング」やIPXネットワーク、UUCPなど、通常のサーバ構築本では触れられることの少ない事項についても1章を割いている貴重な存在でもある。
また、本書は単なる翻訳書ではなく、日本語化に当たってDHCPやSamba、Postfix、qmail、Apacheについての章が加えられている。これらの章は「詳細を極める」というほどではないが、要点を手堅く押さえた記述で要領よくまとまっている。
本書には、管理者が知っておくべき事項が詰まっている。Linuxサーバを管理するなら一通り目を通しておくべきだろう。
システム管理のポイントを解説 |
Linux管理トラブル解決Q&A Brian Ward 著 オーム社 2001年5月 ISBN4-274-06415-8 3200円 |
書名を見ると単なるQ&A集のように思えるが、それは本書の一要素にすぎない。基本的には、一般的な解説書と同じくテーマごとに章を分けて概念や使い方を説明するという体裁を取っている。
例えば、「バックアップとクラッシュからの復旧」という章では、何をバックアップすべきか、どのデバイスを使うのがよいのか、テープの操作方法やtarやddなどのコマンド、Amandaの使い方、そして復旧方法が解説されている。このような形で、ネットワークの設定方法やNFS、NIS、Samba、印刷、ソースからのソフトのインストール、カーネル再構築、ユーザー環境の整備の仕方を扱っている。それぞれ、機能や設定方法を詳述するというより、管理者が知っておくべきポイントにフォーカスした記述になっている。「Linux管理者としてどうすべきか」という視点で書かれており、非常に参考になる。
書名にもなっている(注)「トラブル解決Q&A」だが、これはコラム形式で本書全体にちりばめられている。「シグナルをinitに送ったらシステムが死んでしまう」「squidを起動すると、アクセスエラーで終了する」「『can't mount root fs.』というエラーが出る」といった質問とその答えが、115個用意されている。目次もあるので、Q&Aだけを拾い読みすることも可能だ。
個々のコマンドやサービスの使い方/設定方法を解説した書籍は山ほどあるが、詳述すればするほど管理上のポイントはボケてしまう。本書のように、ポイントに絞った書籍が役立つことも多いだろう。
注:本書の原題は『Linux Problem Solver』で、「Q&A」という言葉は入っていない。 |
とにかくバックアップしたくなる本 |
Unixバックアップ&リカバリ W. Curtis Preston 著 オライリー・ジャパン 2001年8月 ISBN4-87311-049-1 6600円 |
本書は、バックアップ専門家がその経歴の中で得たすべての知識・技術を結実させたものである。技術書として高い価値があるのはもちろんだが、啓蒙書あるいはホラー(!)としても読める。著者自身あるいはその友人・知人の、バックアップにまつわる体験談は管理者の心胆を寒からしめること必至。冗談抜きでかなり怖い。
内容をざっと紹介すると、序盤はバックアップの必要性やポリシーを説く啓蒙セクション。続いて、dump、cpio、tar、dd、AMANDAといったツールの詳細な使用法と続く。また、OSごと(SunOS&Solaris、Linux、Tru64 Unix、HP-UX、IRIX、AIX)およびデータベースごと(Informix、Oracle、Sybase)にそれぞれ1章を割いて(つまり9章分)、バックアップとリカバリの方法を解説。ほかにも、クラスタ(HAシステム)やRAID、ジャーナリングファイルシステム、商用バックアップユーティリティについての考察、バックアップ用ハードウェアの選択方法や技術&用語解説など、ありとあらゆる要素が盛り込まれている。そのすべてが、著者の長い経験に裏打ちされているのだ。
あなたのシステムは、この瞬間にHDDトラブルが起こってもリカバリできるだろうか? できないのであればいますぐ本書を読むべきだろう。
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Linux Square Book Review |
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