書評

IP Networkフォーラム担当編集の気になる書籍

アットマーク・アイティ編集局
鈴木淳也
2002/2/5


今回紹介する3冊
サーバ負荷分散技術
企業内データ・音声統合網の構築技法
TCP/IP入門

 2001年9月から2002年1月まで、IPネットワークにかかわる全部で6つのテーマの書籍を紹介してきた(書評の一覧は「特別企画/書評/その他一覧」で参照可能)。これまで、テーマ別の書評を基本としてきたわけだが、中にはテーマではくくりにくいもの、ほかに同様のテーマの本が出ていないものなど、紹介の機会を逸してきた書籍もあった。そこで、一区切りという意味も込めて、筆者が気にはしていたが紹介できなかった書籍を集めてみることにした。

 「サーバ負荷分散」「音声統合」「TCP/IP入門」と、少々まとまりがないものではあるが(苦笑)、現状で読者が気にしている問題の数々を解決してくれる参考書として役立つことだろう。また、どれも刊行年月が新しく、最新事情をうまくカバーしてくれるのが嬉しいところだ。現状の問題解決と将来の拡張に向け、ぜひこれらの書籍を活用してほしい。

待望のサーバ負荷分散技術解説書

サーバ負荷分散技術

Tony Bourke 著、鍋島公章 監訳、上谷 一/横山晴庸 訳
オライリー・ジャパン/オーム社 2001年
ISBN4-87311-065-3
3000円(税別)

 オライリーの最新刊で最も注目なのが本書だ。企業のネットワーク・システムにおいて、限られたコストの中、いかに増加するトラフィックを処理していくか。そこで重要になってくるのがサーバ負荷分散(SLB:Server Load Balancing)技術である。これまで、ソリューションとして聞いたことがある方は多いだろうが、その実現方法について解説した書籍はほとんどなかったといえる。本書では、その基礎知識や仕組み、設定方法についての最新情報を教えてくれる。

 本書の構成は、SLB関連用語の解説、SLBの仕組み、そしてSLBを実現するネットワーク・ベンダ各社のアプライアンス製品の設定法を紹介している。ここで紹介されているSLBのアプライアンスは、Alteon Web Systems(Nortel Networks)、Cisco Systems、F5、Foundary Networksの4社のもので、ほぼ現状で代表的な製品を押さえているといえるだろう。「ラウンドロビン方式」といった基礎用語から理解を始め、トラフィック振り分けの基本、そして実際の製品の設定方法までを順を追って理解することが可能だ。巻末には、各製品の設定コマンド一覧表が掲載されているなど、後々も資料として活用することもできる。

 さらに望みをいえば、実際の構築例や応用例なども紹介してほしかったところだが、SLBについて解説した書籍がほとんどないことを考えれば、本書の価値は非常に高い。ぜひ御社のサーバ拡張計画に活用してみてほしい。

ネットワーク構築に音声通信の視点も入れてみよう!

企業内データ・音声統合網の構築技法

松田次博 著
日経BP社 2000年
ISBN4-8222-8070-5
3000円(税別)

 近年、安価なIP-VPNサービスなどの登場により、企業内での音声/データ統合に再び注目が集まっている。これまで、専用線やフレーム・リレーなどを用いて構築されていた企業の音声/データ網を、IP-VPNなどの高速な公衆網サービスに置き換えて、コスト・ダウンを実現していこうというものだ。だが現実には、単純なリプレースだけで解決できるような問題ではない。音声品質の維持や、本当にコスト・ダウンにつながるのかなど、いろいろ検討すべき点もあるだろう。本書は、これから音声/データ統合網の構築やリプレースを考える企業の担当者の方々に、まず最初に読んで参考にしていただきたい書籍である。

 本書はおおまかに3つの構成に分けられる。まず最初は、TDMから始まりフレーム・リレー/ATMまで、企業内の音声(/データ)網の歴史を振り返り、それぞれの技術の特徴について紹介している。次に、音声/データ統合のキモとなるVoP(Voice over Packets)の仕組み、そして最後に、企業内での実際のネットワーク構築技法について解説が行われている。比較的遅延に寛容なデータ通信に対して、タイミングや優先制御、ノイズなどの障害にシビアな音声通信の視点が入ることで、これまで知っていた技術でも、その見方が変わってくることだろう。ネットワーク構築に関する書籍は数あれど、音声/データ統合を中心に、しかも丁寧に解説しているものは少ない。この分野についていろいろ研究を進められている方には、入門書兼参考書として活用してほしい。

 2000〜2001年にかけてブレイクしたIP-VPNに続き、広域LAN接続サービスなど、新しい公衆網技術が登場しつつある。「リプレースで大幅コスト・ダウンを実現!」という文句だけが踊りがちだが、そこに行き着くまでの現場の技術者たちの苦労は並大抵のものではなかっただろう。これら最新サービスの現状や問題解決法などもカバーした、本書のアップデートにも期待したいところだ。

最新情報満載のTCP/IP入門書

TCP/IP入門

吉田茂樹 著
翔泳社 2001年
ISBN4-7981-0037-4
2200円(税別)

 TCP/IP入門書というのは、ネットワークに関する書籍でも最も刊行冊数が多いジャンルであり、本来の対象読者である初心者にとっては、かえってそのチョイスを難しくする結果となっている。これら入門書にもそれぞれ特徴があり、自分の目的にあった書籍が選べればベストだろう。本書の特徴を一言でいうならば、「分かりやすいポイント解説で最新情報が学べる」ことだ。章ごとに学習のポイントがまとめられており、全体の概要を理解するのが容易になっている。また刊行年月が新しいだけに、IPv6やDNSなど、このところ仕様のアップデートが頻繁な技術要素についても、しっかりと最新情報がカバーされている。

 本書では、TCP/IP通信の仕組み、アプリケーション・プロトコルや関連技術と、TCP/IP入門書としてはオーソドックスな構成をとっており、基礎から入って、全体を広く浅く学ぶことが可能だ。また前述のように、最新情報を積極的にカバーしており、これ1冊あれば、たいがいのトピックは理解できるようになる。ネットワーク通信の基礎知識があり、完全に初心者というのでなければ、TCP/IP入門の最初の1冊としてお勧めしたい。

 もし、本書の内容をすべてマスターして、さらなるステップを踏みたいと考えたのなら、以前にも書評コーナーでも紹介した「ネットワークプロトコルがわかる」「詳解TCP/IP Vol.1 プロトコル」「インターネットルーティング入門」「TCP/IPネットワーク管理 第2版」などがお勧めだ。これらをマスターして、TCP/IPスペシャリストを目指してほしい。

各書評にあるボタンをクリックすると、オンライン書店で、その書籍を注文することができます。詳しくはクリックして表示されるページをご覧ください。


「Master of IP Network総合インデックス」


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