デジタル時代のくちコミ、「CGM」の秘密
江原顕雄
2008/1/31
2008年1回目の「納得!知っ得!キーワード」は「CGM」を取り上げます。「CGI」でも「CMS」でもありません。2006年ごろから「Web 2.0」とともに注目されているこのキーワードを解説します。 (編集部)
CGMって何のこと?
CGMは「Consumer Generated Media」の略です。「消費者生成メディア」という訳が割り当てられることが多いのですが、もうちょっとやさしい表現にすると「お客さんやユーザーの声で作るメディア」といったニュアンスです。
つまり、CGMとはインターネット上にある掲示板やSNS(ソーシャルネットワークサービス)、ブログ、くちコミサイトなどに書き込まれた「この商品は良かった!」「この製品は使いづらい」といった消費者の声で形成されたデジタル媒体のことです。
CGMの手法は、商品の販売促進のための商用サイトだけで使われるものではありません。インターネット上の百科事典サイト「Wikipedia」やYahoo!オークション、オーマイニュースなど利用者の声が集約・反映されるサイトもCGMの仕組みを利用しています。
従来のインターネットメディア、新聞社のWebサイトやニュースサイト、例えば、いまご覧になられている@ITなどは、ライターや編集者といったプロフェッショナルが、コンテンツを作成して読者(消費者)に配信しています。
しかし、CGMは、ユーザー自身がブログや掲示板に記事を執筆してほかの読者(消費者)に情報を提供する新しいタイプのメディアです。そのため、「商品やサービスの販売促進のために、とても有効なツールとなるのではないか」と、多くの企業から注目を浴びています。
既存メディアとCGMの違い |
システム上の特徴とは?
CGMは「ユーザーがネット上に書いた消費者の声」です。「2ちゃんねる」に書かれたゲームの感想、Twitterに1行だけ書いた昼に食べたランチの品評、Amazon.co.jpに投稿した面白かった小説のレビュー、自身のブログ上にアップロードしたデジタルカメラで撮影した多数の写真や使用感に関するコメントなど、これらすべてがCGMといえます。
すべてのCGMに当てはまるものではないのですが、システム的にいくつかの特徴があります。
1. 検索がとても簡単にできる
Amazon.co.jpのレビューや価格.comの口コミは膨大です。この中から自分にとって必要なものを1つ1つチェックしていたら、目的の投稿にたどり着くまでどれだけの時間がかかることでしょう(投稿は毎日増えていますし)。
そのため、多くのCGMサイトでは、欲しい情報を単語やフレーズから検索するための検索窓を設置したり、ディレクトリ型に商品や投稿を整理・分類したりして、ユーザーが欲する情報を苦労なく発見できるような仕組みになっています。
また、ブログやソーシャルブックマークサービスなどでは、エントリーに関連する単語を「タグ」として登録し、記事の整理や検索に役立てています。
2. 情報の全体傾向を手早く把握できる
「欲しいデジタルカメラのレビューを発見したのはいいけれど、なんと投稿数は100以上!全部読んでいくといったい何時間かかるやら。それに最後まで頑張って読んでも最初のレビューを忘れちゃうよ」
このような悩みを解消するために、その商品に対するユーザーの評価を総合的にチェックできる工夫がされています。例えば、「5段階評価で星何個」「100点満点中、何点?」といった項目から、消費者全体の満足度を直感的に理解し、参考にできます。
3. レビュワーや投稿者のクオリティを判断できる
レビューをしている人の評価や、投稿ごとの「質が高い・低い」「参考になる・ならない」といった判断もユーザーによって生成されるコンテンツとなっています。このような機能は、「このユーザーはこんなことを書いているけど、信頼できるのかな」と思ったときの判断基準として使えます。
例えば、Amazon.co.jpのレビューでは、「このレビューは参考になりましたか?」という投票ボタンが用意されていて投稿そのものの評価ができるほか、「良質なレビューをしている」と多くのユーザーから支持されているユーザーを「ベストレビュアー」としてランキングしています。
4. ユーザーの使い勝手が良い
ブログ、掲示板、SNS、くちコミサイトなどへの投稿は、Webブラウザ上で文章を書いて「送信」ボタンを押せば、掲載される仕組みになっています。HTMLのタグを付けたり、アップロードのためにFTPソフトを利用したりといった専門知識は不要です。
同様にユーザーや記事の評価も「はい(良い)」か「いいえ(悪い)」のボタンを押すだけで評価できるシンプルな作りになっていることが多く、利用者は直感的に操作できるようになっています。
1/3 |
Index | |
デジタル時代のくちコミ、「CGM」の秘密 | |
Page1 CGMって何のこと? システム上の特徴とは? |
|
Page2 Web 2.0で一躍有名になったCGM 企業側から見るCGMの魅力と恐怖 消費者の“素人視点”ならではの危険性 |
|
Page3 CGMを利用した各種サービス CGMの今後 |
「Master of IP Network総合インデックス」 |
- 完全HTTPS化のメリットと極意を大規模Webサービス――ピクシブ、クックパッド、ヤフーの事例から探る (2017/7/13)
2017年6月21日、ピクシブのオフィスで、同社主催の「大規模HTTPS導入Night」が開催された。大規模Webサービスで完全HTTPS化を行うに当たっての技術的、および非技術的な悩みや成果をテーマに、ヤフー、クックパッド、ピクシブの3社が、それぞれの事例について語り合った - ソラコムは、あなたの気が付かないうちに、少しずつ「次」へ進んでいる (2017/7/6)
ソラコムは、「トランスポート技術への非依存」度を高めている。当初はIoT用格安SIMというイメージもあったが、徐々に脱皮しようとしている。パブリッククラウドと同様、付加サービスでユーザーをつかんでいるからだ - Cisco SystemsのIntent-based Networkingは、どうネットワークエンジニアの仕事を変えるか (2017/7/4)
Cisco Systemsは2017年6月、同社イベントCisco Live 2017で、「THE NETWORK. INTUITIVE.」あるいは「Intent-based Networking」といった言葉を使い、ネットワークの構築・運用、そしてネットワークエンジニアの仕事を変えていくと説明した。これはどういうことなのだろうか - ifconfig 〜(IP)ネットワーク環境の確認/設定を行う (2017/7/3)
ifconfigは、LinuxやmacOSなど、主にUNIX系OSで用いるネットワーク環境の状態確認、設定のためのコマンドだ。IPアドレスやサブネットマスク、ブロードキャストアドレスなどの基本的な設定ができる他、イーサネットフレームの最大転送サイズ(MTU)の変更や、VLAN疑似デバイスの作成も可能だ。
|
|