デジタル時代のくちコミ、「CGM」の秘密
江原顕雄
2008/1/31
Web 2.0で一躍有名になったCGM
CGMという言葉の歴史は意外と古く、2002年ごろにくちコミ調査会社の役員であったピート・ブラックショウ(Pete Blackshaw)が生み出しました。ブラックショウ氏は現在でもCGMについていろいろと考えており、彼が運営するWebサイト「ConsumerGeneratedMedia.com」には多くのCGM関連エントリーが掲載されています。
さて、ブラックショウ氏が発案したCGMですが、当初はあまり注目されませんでした。CGMが人気となっていくにはWeb 2.0の登場を待つ必要があります。
Web 2.0は、いろいろなアイデアや考えの複合体です。CGMの考え方にはWeb 2.0的な要素が多くあり、Web 2.0を代表するサービスの1つとして認識されたのです。では、Web 2.0の要素とCGMの要素がどれだけが重なり合っているのか、チェックしてみましょう。
・ユーザーの信頼
レビューや感想の投稿者は、企業からお金をもらってライティングしているわけでありません。自分の意思で感じたことをライティングしており、投稿された内容はうそではなく、信頼できる情報だと閲覧者は考えます。
・「集合知」を形成する
「集合知」とは、たくさんの意見・感想、経験が書かれ集計されることです。例えば、くちコミサイトで数多くのレビューが投稿・分類され集合知が形成されます。くちコミサイト利用者は、そんな集合知を見て「みんなが『良い製品』といっているなら、良い製品に違いない」といった判断をし、購入する際の材料にします。
・リッチなユーザー体験
CGMを利用したサービスは、Ajaxや各種Web APIを利用したWeb技術が導入されており、HTMLやCGIだけで作られたWebサイトとは格段に使い勝手が違います。CGMに限らず、最新のWeb技術が使われたWebサイトを、ユーザーが利用し経験することを「リッチなユーザー体験」といいます。
・ロングテイル
1つの商品を大量に販売するのではなく、たくさんの商品をちょっとずつ販売して利益を出すビジネスモデルです。ネット販売にとってロングテイルは相性が良いビジネスモデルです。同様に、商品やサービスに感想や意見を投稿できるCGMもロングテイルと相性が良いのです。
・マッシュアップ
複数のサービスや技術を使って、より良いサービスを提供することをマッシュアップといいます。また、元の情報や意見に、ほかのユーザーからの投稿や指摘があったり、さらにその意見に反論したりと、ユーザー間での切磋琢磨(せっさたくま)により掲載される情報の質がどんどん向上していくこともあります。これもコンテンツのマッシュアップの一例であり、盛んに行われています。
企業側から見るCGMの魅力と恐怖
CGMという単語はインターネット用語の1つでもありますが、マーケティング用語の1つでもあります。
マーケティングとは広辞苑(第6版)によると「商品の販売やサービスなどを促進するための活動。市場活動」と定義されています。CGMが登場する以前の広告・広報は、雑誌や新聞、Web媒体へ広告を出したり、テレビコマーシャルを流したり、街頭でキャンペーン活動を行ったりと、商品やサービスを提供する側がお金と時間をかけてするものでした。
しかしCGMでは、「消費者が自発的に商品の感想や宣伝」をし、さらに「商品の購入ができるボタン」まで設置をして営業活動(アフィリエイト)してくれるのです。また、商品やサービスに対する消費者の感想や意見などを簡単に手に入れることもできます。
これらは企業にとって夢のような話です。CGMをうまく使えば、企業にとってとても強力な販促ツールとなります。
しかし、消費者が自由に意見をいえるのがCGMの特徴でもあります。100人が100人とも「これはとても素晴らしい製品です!借金をしてでも買うべきです!」と褒めてくれるわけではありません。悪い点があれば徹底的にたたかれますし、ユーザーの勘違いによって非難されることもあります。
企業がユーザーに対して強引なコントロールを行えば、消費者の反発を招きます。また、すべてのユーザーの声を監視し、それぞれのユーザーに意見や反論していくのは現実的ではありません。
消費者の“素人視点”ならではの危険性
消費者のコメントは基本的には「素人の視点と文章」です。だからこそ、企業色の薄い、説得力のあるくちコミとなり得ます。しかし、知識不足や文章力のなさ、思い込みなどによって「正しいレビュー」がきちんとされない危険性もはらんでいます。
あるDVDプレーヤのレビューであったケースです。あるユーザーは大絶賛し、あるユーザーは「特徴もない」とコメントし、あるユーザーは「観るに耐えない画質だ」と断定しました。同じ製品なのに評価や感想がバラバラです。
それは、それぞれのユーザーが使っている出力側の機器に起因していたのです。プロジェクター、17インチのブラウン管テレビ、24.1インチのフルHD対応液晶ディスプレイ、42インチのプラズマディスプレイ……。これだけ出力側が異なっていれば、同じDVDプレーヤを使っても感じ方が全く異なるのも当然です。
しかし、それぞれのユーザーにとっては、自分が使っている出力機器が“当たり前の状態”なので、レビュー中に自分の利用環境を記す必然性を感じていませんでした。既存のメディアでは、書き手にとって自明なことでも省略せず、読み手に分かりやすく表現することを意識しています。また、客観性を保つように努力し、恣意的な表現にならないように、複数のチェック体制を整えています(このチェックが甘いと消費者の批判にさらされます)。
CGMを使ったマーケティングでは、必ずしも正しい評価(企業が望んでいる評価という意味ではなく)がされない可能性があります。
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Index | |
デジタル時代のくちコミ、「CGM」の秘密 | |
Page1 CGMって何のこと? システム上の特徴とは? |
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Page2 Web 2.0で一躍有名になったCGM 企業側から見るCGMの魅力と恐怖 消費者の“素人視点”ならではの危険性 |
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「Master of IP Network総合インデックス」 |
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