
ネットワークを仮想化し、可視化せよ~ShowNetの挑戦
高橋 睦美
平田 修
@IT編集部
2009/6/30
2009年6月10日から12日にかけて、千葉・幕張メッセで開催された「Interop Tokyo 2009」は密度の濃い展示会となった。そのハイライトをレポートする。(編集部)
2009年6月10日から12日にかけて、千葉・幕張メッセで「Interop Tokyo 2009」が開催された。使用フロア数は4面と過去に比べぐっと小さくなったが、その分、ネットワーク技術という本来のテーマが深く掘り下げられ、密度の濃い展示会となった。
すっきり収納が目立ったShowNet
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Interopを最も特徴付けるのが、機器の相互接続性を検証するとともに、展示会のネットワークインフラとして稼働する「ShowNet」の存在だ。スイッチ/ルータにはじまり、レイヤ1の伝送装置、トラフィックジェネレータや監視用デバイス、セキュリティ機器に至るまで、さまざまなコントリビュータ(ベンダ)から提供された機器を組み合わせ、運用を検証、デモンストレーションすると同時に、出展各社にネットワーク接続を提供している。幕張メッセと都内のデータセンターの間は、計131Gbpsという帯域で接続された。
2009年は、フロア面積は縮小したものの出展者数は約300社とほぼ変わらず、結果として利用するケーブルの総延長もほとんど変わらなかった。ケーブルに関する大きな変化は、UTPから光ファイバへの移行が進んだことだ。背景には伝送速度の高速化がある。ギガビットクラスまでならばUTPで引き回すこともできたが、バックボーンを10ギガとし、高速インターフェイスで装置間を接続しようとすると、光ファイバを利用せざるを得ない。また、これまでは天井を伝って提供されていた出展者へのドロップ(=接続)だが、今回は足元を這って提供される形になった。
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Interop Tokyoのネットワークインフラを支えるShowNetの機器群 | 出展社へのネットワーク接続は、今年は床下から |
出展社へのネットワーク接続を提供する中継点となる「ポッド」の機器構成も、年々簡素化している。理由の1つは、機器自体に搭載されるネットワークインターフェイスの密度が高まったこと。また「ルーティングのポイントとドロップのポイントをきれいに切り分けるデザインにしていることも大きい。ポッドにはレイヤ3の機器は置かず、レイヤ1の伝送装置と仮想化されたレイヤ2スイッチを置くだけで、非常にシンプルになっている」(ShowNetの設計・運用に当たるNOCチームメンバー 慶応義塾大学の重近範行氏)。
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実体は1つでもネットワークは4面
2009年のShowNetは、昨年に続き「ネットワーク全体の仮想化」をテーマの1つに掲げた。昨年は1つの物理バックボーンの上に2つの論理ネットワークを構築したが、今年は倍の4面(スライス)ネットワークを構成したという。
もともとネットワークは、VLANやVPNといった形で仮想化を活用してきており、親和性は高い。レイヤ1ならばDWDMのように光波長を仮想化して束ねる技術があったし、レイヤ2のVLANは、いまやほとんどのインテリジェントなスイッチに実装され、オフィス環境などに広く普及している。
これに対し、ShowNetが取り組んでいるネットワーク全体の仮想化は、複数の論理ネットワークを構成し、それぞれを独立して運用するというものだ。1台のルータの中で複数のルーティングテーブルを動かすというレベルにとどまらず、別々のポリシーを持つ4つの論理ネットワークを構成した。
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1つのバックボーン上に、4つの論理ネットワークを構成して運用した |
具体的には、IPv4/v6のグローバルアドレスを提供し、P2Pでつながる昔ながらのインターネット環境を提供する「スライスG」、ラージスケールNAT(キャリアグレードNAT)によってプライベートアドレスを提供する「スライスNA/NJ」、さらに、攻撃に対する防御のデモンストレーションなどを行いたいという出展者向けに、生のインターネットで流れてくるであろうさまざまなトラフィックを再現する「スライスY(=NOCチームではこれを『よごれ』と呼んでいる)」という4つの構成だ。
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仮想化技術を用いて、1台のスイッチのように見せかけた「スタック4兄弟」 |
こうした論理ネットワーク(面)は、IP-VPNで培われてきたVRF(Virtual Routing and Forwarding)やLR(Logical Router)/VR(Virtual Router)といった技術を使って構成される。さらに、ISSR(Inter Service Slice Router)という仕組みによって、面(VRF)間のルーティングが行われるようになっている。「今年は4面のネットワークを提供しているが、必要があれば、要望に応じていくらでも増やしていくことができるのが仮想化のいいところ」(重近氏)。この仕組みをうまく活用すれば、出展社、つまりユーザーのニーズに合ったサービスレベルを持った論理ネットワークを、オンデマンドで提供することも可能になるだろう。
逆に、仮想化技術を用いて複数のスイッチを論理的に1つのスイッチのように見せるという試みも、昨年に続き行った。実体は4台のスイッチを論理的に1台のように見せかけることで、離れた場所でも同一のネットワークを構成できる。「1カ所から、複数地点に置かれたスイッチの設定をまとめて変えることができる」(重近氏)ことがメリットで、ひいては運用管理のコスト削減にもつながる。
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ネットワークを仮想化し、可視化せよ~ShowNetの挑戦 | |
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Page1 すっきり収納が目立ったShowNet 実体は1つでもネットワークは4面 |
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