ネットワークを仮想化し、可視化せよ〜ShowNetの挑戦
高橋 睦美
平田 修
@IT編集部
2008/6/30
仮想化されたネットワークを可視化せよ
こうして複数のレイヤで仮想化が進むと、今度は、ネットワークの全容を把握するのが難しくなってくる。そこでShowNetでは「運用を簡単にするため、またトラブルを少なくするため、ビジュアライゼーションにもトライしている」(重近氏)。
「仮想化によって、物理層は見えても、その上がどんどん見えなくなってくる。ヘタすると、作った人にしか分からないということもあり得るが、そこをどうやって可視化するかにチャレンジしている」(重近氏)。
ただ、仮想化されたネットワークを可視化・文書化するのは非常に大変な作業だ。「仮想化によって、ネットワークトポロジの図を書くのが大変になってきた。VLANの場合も、1つのリンクに載っている複数のVLANを示すのは大変な作業だったが、今回は、複数の面をどのように示すかに苦労した」(重近氏)。紙の上に表すのはそろそろ限界かもしれないという。
nicterでは、ShowNetのトラフィックのリアルタイムでの「見える化」にトライ |
見えないネットワークを人の目に見えるようにするため、ShowNetのNOCでは、いくつかの方法を駆使して可視化に取り組んだ。SNMPやsyslog、NetFlow/sFlowといったフロー情報の収集と分析、表示はもちろん、光タップを用いたトラフィックの監視を実施。死活監視に関しては、ICMPに加え、SSRP(Simple Server Redundancy Protocol)によってレイヤ2冗長構成のステイタスを監視している。
EtherOAMの相互接続検証 |
レイヤ2に関しては、「EtherOAM」の相互検証も実施した。IPの下のレイヤで障害が起こっていないかどうか、イーサネット疎通に障害がないかどうかを確認する技術で、IEEE802.1ag/ITU-T Y.1731として標準化されている。ShowNetでは、これをフレームの監視に利用しつつ相互接続性をチェックし、きちんと「使える」技術であることを確認した。
また、これらを可視化する監視ツールとしては、NTTコミュニケーションズの「トラフィック解析ツール(SAMURAI)」や、そろそろおなじみになってきた情報通信研究機構(NICT)の「nicter (Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response)」などが利用された。なお、NICTのブースでの説明によると、2009年の傾向として「昨年と比べると明らかに異なり、Confickerと思しき通信が多い」という。
なお、長年ShowNetで取り組んできたIPv6に関しては、IPv4アドレスの新規割り当てが困難になると見られる「枯渇問題」がいよいよ間近に迫りつつある。その移行プロセスをにらんで、ラージスケールNAT(キャリアグレードNAT)の検証を実施したほか、4SLB(IPv6-IPv4 Server Load Balancer)によって、IPv4のトラフィックをIPv6ネットワークで負荷分散させたり、その逆を行うといった取り組みを実施した。「グローバルにはIPv6でつながりつつ、ロードバランサのところで、IPv4で運用している顧客のトラフィックを処理するといったことが可能になる」(重近氏)。IPv6へのスムーズな移行をにらみ、64Proxyやトランスレータ(NAT-PT)などにもトライした。
ほかに、地味ながら、1本のファイバに10GbEとファイバチャネルを同居させる、FCoEの相互接続も実施している。
パンデミックやコスト削減、エコに効果的なビジュアルコミュニケーション
今年の春先に起きた新型インフルエンザのパンデミック問題は読者の記憶にも新しいことだろう。今回のInterop Tokyo 2009も例外ではなく、一時期は開催が危ぶまれていた。ネットワークの進化によって、パンデミックなどによる自宅作業の場合でも、オンライン上でリアルタイムのコミュニケーションやコラボレーションが可能になってきており、注目されている。
ここでは、「アイティメディア スペシャルクラスルーム」で行われた、ブイキューブ 代表取締役社長兼CEO 間下直晃氏によるセッション「ビジュアルコミュニケーションがビジネスに不可欠になる時代」の模様を少しだけ紹介しよう。
間下氏はビジュアルコミュニケーションを、テレビ/Web会議はもちろん、オンラインセミナーやWeb相談による営業支援、遠隔教育、遠隔医療・診断・カウンセリング、映像配信、オンラインセールス&サポートなど多岐にわたるものと定義する。
「ビジュアルコミュニケーションは、すでに米国では2007年で約1200億円の市場となっていて、今後10年間で日本でも約1000億円規模の市場になるだろう」(間下氏)としている。その根拠としては、まず移動コストの削減・業務効率化、自宅作業や少子高齢化による人的資源の減少などに強いといったことが挙げられた。
例えば、ブイキューブの提供する「nice to meet you」というツールでは、Webページ上に、携帯電話からの参加を含む複数の参加者のWebカメラ映像を出してマイクで会話しながら、チャットやホワイトボードなど、文字でのコミュニケーションが可能だ。また、ファイルを表示して、そこに文字や図形を書き込むことや、参加者のデスクトップの様子を見ながらのコミュニケーションも可能となっている。
アイティメディア スペシャルクラスルーム内で行われた「nice to meet you」のデモ。左下は、公演中に携帯電話でデモのWeb会議に参加しているブイキューブ 代表取締役社長兼CEO 間下直晃 氏 |
またオンラインコミュニケーションによる移動に掛かるCO2排出量などの削減など、エコロジーの視点でもビジュアルコミュニケーションは有効だ。しかし、実際にどれくらいの量が削減されたのかは使っている人にも分からないのが現状だろう。ところが、nice to meet youの「ECOメーター」機能はそれを可視化するという。
「ECOメーターは、環境へのECOとして『CO2排出量』、会社へのECOとして『交通費』、自分へのECOとして『移動時間』を計測して数値を表示します。これらの機能を使って、『会う』ことと『電話・メール』の間を埋めるものとして、もっとビジュアルコミュニケーションを当たり前にしていただきたいです」(間下氏)
後編では、IPv6移行はどの程度進んでいるのかをDNSトラフィックから探ったセッションの模様に加え、会場に登場した注目製品を紹介します |
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ネットワークを仮想化し、可視化せよ〜ShowNetの挑戦 | |
Page1 すっきり収納が目立ったShowNet 実体は1つでもネットワークは4面 |
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