構築からトラブルシューティングまで
InfiniBandで変わるデータセンター内通信(後編)
松本直人
仮想化インフラストラクチャ・オペレーターズグループ チェア
さくらインターネット研究所 上級研究員
2011/7/20
InfiniBandネットワークのトラブルシュート
InfiniBandネットワークはイーサネットとは異なるネットワークです。動作するシステムが異なるということは、見るべきシステム動作個所もコマンドも異なってきます。
ここでは、より詳しいInfiniBand関連デバッグコマンドをいくつか例示していきます。動作確認は、OpenSMが動作しているScientific Linux 6.0上から行いました。
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InfiniBand Network関連デバッグコマンドの一覧 |
ibhostsコマンドでは、InfiniBand上に接続されるホスト一覧を表示します。
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ibhostsコマンドコマンドの実行例 |
iblinkinfoコマンドでは、スイッチおよびホストの接続状況を表示します。
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iblinkinfoコマンドコマンドの実行例 |
ibswitchesは、スイッチ一覧表示を行います。複数台でInfiniBandネットワークを構成した場合などに有効です。
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ibswitchesコマンドの実行例。今回の構成例では1台のみの表示 |
ibtracertコマンドは、ホスト間でのInfiniBandネットワークの接続性を確認します。
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ibtracertコマンドの実行例 |
InfiniBandネットワークを構成するために、Subnet Manager(OpenSM)で設定されるルーティングアルゴリズムは全部で5種類あります。通常のデフォルト値では、各ホスト間を最小距離でつなぐ「MinHop」によって構成されるようになっています。
より大規模なシステムを想定したInfiniBandネットワークを構成する場合、「FatTree」を用いる場合も多くあります。データセンター内部での利用方針などと合わせて、Subnet管理方法を選択するとよいでしょう。
1. Min Hop Algorithm 2. UPDN Unicast routing algorithm 3. Fat Tree Unicast routing algorithm 4. LASH unicast routing algorithm 5. DOR Unicast routing algorithm |
より深いデバッグを行う場合などは、ibdumpコマンドが有効です。お試しあれ ;-)
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より深いデバッグを行えるibdumpコマンドの実行例 |
Wiresharkで通信を可視化
また、InfiniBandのパケットダンプツール(ibdump)により出力されたファイルは、Wiresharkを使うことで、より視覚的に確認することも可能です。
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ibdumpの出力結果 |
上記の出力内容をWiresharkで確認できる |
SCSI RDMA Protocol対応ストレージにも要注目
InfiniBandは、低遅延で最初からQoSを考慮したネットワーク設計である特性を生かして、ストレージシステムの接続にも利用可能です。
中でも最近、SCSIをRDMA転送環境で実現したSRP(SCSI RDMA Protocol)に対応したストレージに注目が集まっています。InfiniBandではすでに、10GbEを超える40Gbps QDR InfiniBandネットワークが普及価格帯にまで下りてきており、この流れに拍車がかかっています。
SRPは、ホスト側で「SRP Initiator」が、ストレージ側で「SRP target」が動作することで構成され、いずれもInfiniBandネットワーク上でネイティブ動作をします。
図4 InfiniBandを構成するプロトコルのスタック |
SRP Initiatorは、すでにVMware ESXiなどにも導入される段階まできており、今後の普及も期待されます。日本国内においても、日本オラクルやテクノグラフィー、ニューテックなどのベンダが取り組んでいます。
東日本大震災を挟んでの掲載となりましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。これにてInfiniBandで変わるデータセンター内通信の前編・後編は終わりですが、今後もInfiniBandとIP、ストレージネットワークの新たな動きには注目が集まりそうです。
「Master of IP Network総合インデックス」 |
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