実験
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IAAによって実際にどの程度の性能向上が得られるのか、下表に示す複数のベンチマーク・テストを実施し、効果を確認してみた。基本的にはWindows 2000の標準IDEドライバと、IAAとを比較することが目的だ。さらに起動時間の測定では、Ultra ATAストレージ・ドライバ バージョン6.1を比較対象に加えている。
ハードディスクの転送速度 | TCD Labs HDTach v2.61 |
OS起動時間の測定 | Windows 2000の起動に要する時間(Windows 2000起動メニューからログイン画面が表示されるまでの時間)の手動計測 |
2Dアプリケーション | BAPCo SYSmark 2001 Patch 3 |
ベンチマーク・テストの内容 |
テスト機のハードウェア/ソフトウェアの構成を下表に示した。IAAでは、Pentium 4のデータ・プリフェッチ機能の性能向上が行われているということなので、Celeronに加えてPentium 4搭載機をテスト対象に加えている。ソフトウェアは本稿執筆時点で正式公開されている最新版を用いた。ディスプレイ解像度は1024×768ドット16bitカラー、リフレッシュレート75Hzに変更した。解像度以外の設定はすべて初期値のまま変更していない。
■PCのハードウェア仕様 | |
プロセッサ | Pentium 4-1.4GHz |
Celeron-900MHz | |
マザーボード | Intel D850GB BIOS P14(Intel 850、Pentium 4) |
MSI 815ET Pro BIOS V8.0(Intel 815E、Celeron) | |
メモリ | 256Mbytes PC800 RIMM(Pentium 4) |
256Mbytes PC133 SDRAM(Celeron) | |
ハードディスク | 30Gbytes 7200RPM Ultra ATA/100対応IDEハードディスク(IBM製Deskstar 60GXP) |
グラフィック・カード | Creative 3DBlaster GeForce2 GTS |
ネットワーク | Intel PRO/100+マネージメント・アダプタ |
■ソフトウェアとそのバージョン | |
OS | Windows 2000 Professional(Service Pack 2) |
ディスプレイ・ドライバ | NVIDIA Detonator XP v21.81 |
DirectX | DirectX 8.0a |
Intel製IDEドライバ | Intelアプリケーション・アクセラレータ・バージョン1.1、Intel Ultra ATAストレージ・ドライバ・バージョン6.1 |
チップセット・ソフトウェア | Intel Chipset Software Installation Utility v3.20.1008 |
テスト機の構成 |
ハードディスクとシステム間のデータ転送速度に変化はなし
HDTachは、OSのファイル・システムを介さずにディスク・アクセスを行い、ディスクの性能を計測するベンチマーク・ソフトウェアだ。下表はPentium 4とIntel 850チップセットの組み合わせでHDTachを実行した結果を、Windows 2000標準状態と比較したものだ。測定結果の差は、CPU占有率を除けばすべて1%程度で、測定誤差以上の意味を持たず、IAAがデータ転送速度に関しては効果がなかったことを示している。
Windows 2000標準 | IAA | |
バースト読み出し速度 | 84.9Mbytes/s | 83.8Mbytes/s |
読み込み速度(平均) | 29.2Mbytes/s | 29.2Mbytes/s |
書き込み速度(平均) | 19.4Mbytes/s | 19.2Mbytes/s |
アクセス時間 | 12.1msec | 12.2msec |
CPU占有率 | 4.5% | 3.6% |
HDTach v2.61による結果 |
HDTachはファイル・システムの影響を極力排除するよう設計されているため、IAAがファイル・システムで何らかの高速化手法を導入している場合、その差が表れない可能性がある。そのため、単純なファイル・コピーを行い、時間を計測してみたが、こちらも有意な差は表れなかった。IAAによって、ファイルI/O全体が高速化されるわけではないことが分かった。ただ、CPU占有率が明らかに下がっているので、負荷が大きなアプリケーションの利用中に発生するディスクI/Oでは速度面での効果が表れるかもしれない。
起動時間は大幅に短縮
Windows 2000の起動時間(Windows 2000起動メニューからログイン画面が表示されるまでの時間)は、IAAをインストールすることで、最大で27%も短縮された。Celeron、Pentium 4ともに同様の傾向が見られることから、対応するチップセットならば、プロセッサにかかわらず起動時間が短縮されることが分かった。
Windows 2000標準 | IAA | Ultra ATAストレージ・ドライバ | |
Celeron-900MHz+Intel 815E | 41.6 | 30.3 | 29.9 |
Pentium 4-1.4GHz+Intel 850 | 42.9 | 34.0 | 34.2 |
Windows 2000起動時間(単位:秒) | |||
このベンチマークは、実環境に近付けるためネットワークを有効(IPアドレスはDHCPで取得)にした状態で測定したため、その結果にばらつきがある。表に示した値は5回測定した結果を平均したものである。IAAとUltra ATA ストレージ・ドライバ バージョン6.1はともに、システムにサウンド・カードが含まれる状態では10%程度起動時間が長くなった。 |
ただテスト中、Ultra ATAストレージ・ドライバ バージョン6.1をインストール済みの環境で、IAAにアップグレードしても、体感上の起動速度に差がないことに気が付いた。そこでUltra ATAストレージ・ドライバ バージョン6.1をインストールした状態でも同様に起動時間を測定したところ、IAAと同程度の時間短縮が確認された。Windows 2000の起動時間については、少なくとも前バージョンからすでに短縮されていたようだ。
アプリケーションでの効果は?
では、実アプリケーションにおける効果はあるのだろうか。それを調べるため、オフィス・アプリケーションを用いたベンチマーク・プログラムであるBAPCo(販売元はMadOnion)の「SYSmark 2001」を使って性能を測定した(本稿執筆時点での最新版はPatch 3)。SYSmark 2001については、「元麻布春男の視点:最新ベンチマークはPentium 4が好き」を参照していただきたい。
下表に示したとおり、Celeron-900MHzではWindows 2000標準状態と、IAAとの間に有意な性能差は確認できない。
■Celeron-900MHz + Intel 815E | ||
Windows 2000標準 | IAA | |
SYSmark 2001 Rating | 84 | 83 |
Internet Content Creation | 81 | 81 |
Office Productivity | 87 | 86 |
■Pentium 4-1.4GHz + Intel 850 | ||
Windows 2000標準 | IAA | |
SYSmark 2001 Rating | 142 | 144 |
Internet Content Creation | 157 | 159 |
Office Productivity | 129 | 130 |
SYSmark 2001の結果 | ||
SYSmark 2001の結果は、すべて基準PCの結果を100とした相対値で示される。 |
SYSmark 2001の結果から、IAAの備える機能のうち、グラフィックス・アプリケーションなどにおけるディスクI/O性能の向上については確認できなかった。Pentium 4のデータ・プリフェッチ性能が実際に向上する可能性は否定できないが、その差はベンチマーク・テストではほとんど表れないようだ。
IAAをインストールすべきか
IAAのもう1つの効能であるBig Drive(容量137Gbytes以上のIDEハードディスク)の対応は明らかだ。現状では、137Gbytes以上のIDEハードディスクは一般的でないため、必要性はあまり感じないが、現在のペースでハードディスクの大容量化が進めば、2002年中ごろには容量140Gbytesクラスのハードディスクが次々と登場し、IAAの必要性が増すことになる。Big Driveを正式にサポートするIDEドライバは、2001年10月現在、IAAだけであり、容量137Gbytes以上のIDEハードディスクの互換性を確認する唯一のデバイス・ドライバでもある。Intel 800系チップセットを採用したPCにBig Drive対応ハードディスクを追加するには、現状IAAのインストールは必須となるだろう(ただし、Windows XPは追加のソフトウェアなしでBig Driveに対応できるようだ)。
IAAやUltra ATAストレージ・ドライバで気になるのは、各種ATAPIデバイスとの互換性問題だ。しかし本稿執筆時点で、IAAとATAPIデバイスとの間の互換性問題はまだ報告されていない。Ultra ATAストレージ・ドライバと、Easy CD CreatorなどのCD-R/RWライティング・ソフトウェアとの間で発生した互換性問題は、ライティング・ソフトウェア側の対応により解決している。同様の問題はIAAでも発生するので、あらかじめCD-R/RWライティング・ソフトウェアに最新のパッチを適用しておきたい。
■
容量が137Gbytes未満のハードディスクを備えた従来の環境の場合は、IAAはあくまでオプションで、必ずインストールしなければならないものではないが、IAAをインストールすることで、Windows 2000の起動時間は明らかに高速化される。ディスクI/Oの性能は少なくとも低下することはないし、Pentium 4環境では多少向上する可能性もある。念のため元の環境のバックアップを取ったうえで導入したい。ただし、すでにIntel Ultra ATAストレージ・ドライバをインストールしていて、現状で安定動作しているなら、起動時間の短縮といったメリットがほとんどないので、IAAに急いで更新する必要はないだろう。
関連記事 | |
最新ベンチマークはPentium 4が好き |
関連リンク | |
SYSmark 2001の情報ページ | |
HDTachの情報ページ |
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[実験]PCの起動を高速化する「Intelアプリケーション・アクセラレータ」の実体 | ||
1.IAAとIDEドライバの関係 | ||
2.ベンチマークから見るIAAの効果 | ||
「PC Insiderの実験」 |
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