IT Market Trend第10回 2002年の国内サーバ市場を展望する
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景気の先行きに対する不透明感が続くなか、ITに対する見方も、米国のITバブル崩壊を契機とし、これまでの期待から一転、巷ではIT悲観論も目立つようになってきた。日本政府は2002年の実質経済成長率の見通しを過去最低の0.0%とする方向であるなど、国内経済が早期に回復する兆しもいまのところ見られない。今後の国内IT需要も景気の影響を受けることは免れないが、様相は各セグメントによって異なるだろう。日本国内サーバ市場については、2001年の市場規模を対前年比0.9%減の8965億円、また2002年は2001年比で1.1%減の8866億円と予測しており、本市場の将来については、それほど悲観的になる必要はない。本稿では、2002年の日本国内サーバ市場について、最新の予測データに基づき展望する。 |
底固い需要に支えられる国内サーバ市場
IT悲観論一色のなかにあっても、国内サーバ市場については比較的堅調に推移している。確かに2001年に入ってから、市場成長率は四半期ごとに下降傾向にあり、2001年第3四半期には金額でマイナスとなってしまった。ただ、これはUNIXサーバの製品切り替え時期にあたる買い控えがあったことが大きい。
しかし、ここで認識すべきことは、昨今のような悪い材料が重なっている時期にあっても、日本国内のサーバ市場は台数で対前年同期比17.2%増と、まだ決して悪くない水準を維持しているということだ。
日本国内のサーバ市場出荷推移 |
出典:ガートナー データクエスト(2001年12月) |
国内サーバ市場が比較的堅調な理由は、「不況下にあっても、企業ビジネスや組織の活動基盤を最新ITにより強化し続けようとしている企業・組織が多く存在するため」であると考えている。今後、各企業の収益悪化に伴い、IT投資がさらに減少することを懸念する声もあるが、逆に企業ビジネスは、早期にグローバルな競争に耐えられるよう革新する必要性に迫られているのも事実である。よって、企業や官公庁においては、急を要さないIT投資や大規模なシステム改修は見直される可能性が高いが、全体的に情報化投資マインド自体が大きく落ち込むとは考え難く、情報プラットフォームの核をなすサーバに対する需要も、ある程度底固いものとなるだろう。
国内サーバ市場と平均株価との相関
一方、国内のサーバ市場出荷金額は、日経平均株価と一定の相関関係にある*1。このことは、今後の国内サーバ市場を予測する上で重要な事実である。
*1 (編集注)現在の日経平均株価の計算に採用されている企業のうち、IT関連業種の占める割合が高いことが大きく影響していると考えられる。サーバの販売が増えることは、これらIT関連業種の業績が伸びることであり、それが株価に反映されるという面がある。逆に、株価上昇による潤沢な資金を使って、IT関連業種が積極的な設備投資を行う(つまり、サーバを購入する)ことによって、サーバの売上が伸びるという面もあるだろう。 |
国内サーバ市場出荷金額と日経平均株価の推移 |
出典:ガートナー データクエスト(2001年12月) |
現在、日経平均株価は1万円程度で推移しているが、これが仮に8000円程度にまで落ち込むことがあれば、国内サーバ市場出荷金額も大きく落ち込むだろう。逆に、今後も平均株価が現在の1万円程度を維持するなら、国内サーバ市場出荷金額についても、それほど落ち込むことはないと考えられる。
各セグメントの変化
2002年の国内サーバ市場は、水平と垂直の両方向で新たな変化が見られるだろう。
■水平セグメント
水平セグメントでは、台数で圧倒的シェアを有するPCサーバの価格競争が年々激化し、いまやエントリ・サーバの中には7万円前後の製品も登場している。サーバ価格の低下傾向は、引き続き注目すべきポイントとなるが、ガートナー データクエストでは、2000年に66万円であったPCサーバの平均単価は2002年末には50万円程度にまで下がると予測している。
PCサーバ平均単価実績と予測 |
出典:ガートナー データクエスト(2001年12月) |
サーバ・ベンダ各社にとって、低価格化の中でいかに利益を出すかという課題はさらに重要なテーマとなる。しかし、チャネル・ビジネスが中心の各サーバ・ベンダは、デルコンピュータのような直販モデルを作り出すことはまず不可能であり、デルコンピュータを除くほとんどのサーバ・ベンダでは価格競争上厳しい状況が続くことになる。昨今は株式市場からの圧力が強まっており、利益が出せない状態が続くならば、撤退を余儀なくされるところも出てくるだろう。
■垂直セグメント
垂直方向ではハイエンドUNIXサーバとIPF(Itanium Processor Family)サーバが、市場に変化をもたらす主要因となるだろう。
(1)ハイエンドUNIXサーバ
2000年の日本HPの「HP superdome」に続き、2001年10月、サン・マイクロシステムズから「Sun Fire15K(Starcat)」が、日本IBMから「eserver pSeries690モデル681(Regatta H)」の出荷が開始され、各社の次世代ハイエンドUNIXサーバが出揃った。これらのサーバは、高い信頼性を掲げ、メインフレームから市場を奪おうとしている。
新たなハイエンドUNIXサーバの登場により、これまで聖域とされていた大型メインフレーム市場は、ついにその存在を脅かされることになるだろう。いまやメインフレーマ(メインフレームを開発・販売するベンダ)におけるサーバ戦略上のポイントは、「いかにメインフレームを守るか」ではなく、「いかにメインフレームに代わる収益源を確保するか」に移行している。守るべきメインフレームやUNIXサーバを持たないサーバ・ベンダはこれらのサーバをどう戦略的に扱っていくかがさらに重要となるだろう。
(2) IPFサーバ
2001年、IPFサーバの出荷がようやく開始されたが、この年の出荷は性能やOSといった課題を抱えながらの試行的なものに終わった。しかしながら、2002年のIPFサーバ市場は、次期IPFプロセッサである「McKinley(開発コード名:マッキンリー)」と「64ビット版Windows.Net Server OS」の登場に伴い、その拡大に向けて大きく前進するだろう(それぞれ2002年第2四半期以降に出荷開始予定)。McKinleyではItaniumプロセッサで実現できなかった設計性能の達成が期待され、Windows OSの正式サポートが相まって、「64ビットIAサーバ」が本格化する可能性が高い。
一方、UNIXサーバ・ベンダ各社は、ハイエンドに注力している分、ローエンドからミッドレンジ・セグメントへのアピールが弱い。サン・マイクロシステムズを除くベンダは、戦略的にUNIXサーバからIAサーバへのシフトを開始することも考えられ、今後ハイエンドを除くセグメントに対する強いメッセージは期待できない。このことから、このまま進むと、ローエンドおよびミッドレンジUNIXサーバ市場は、次第にIA(インテル・アーキテクチャ)およびIPFサーバに市場を奪われる可能性が高い。
そのほかの動向
(1) HPとCompaqの合併問題とその影響
2002年2月、HPとCompaqの合併問題が一応の決着を見る。合併の成立いかんにかかわらず、この結果はサーバ市場の今後のベンダ関係に大きな変化をもたらす可能性が高い。
(2)ブレード・サーバ
水平方向においては、価格以外に、サーバ市場規模のさらなる拡大をもたらす新たなテクノロジ「ブレード・サーバ」が投入される。ブレード・サーバとは、これまでのラックマウント型サーバに代わって、一枚のボードでサーバのほぼ全機能を提供する高密度サーバである。省スペースと低消費電力の点で、特にキャリア、xSP(ISPやASPなど)、データセンターなどの市場での普及が期待されている。なお、本稿に示すサーバ市場予測にはブレード・サーバは含まれていない。
ガートナー データクエストの分析
ガートナー データクエストでは、2002年の国内サーバ市場を、出荷台数で13.7%増の53万6326台、出荷金額で1.1%減の8866億円と予測している。セグメント別には、前述の背景に従い、メインフレームは台数、金額ともにそれぞれ16.1%減、14.7%減と予測する。UNIXサーバは、台数の伸びが鈍化し4%程度を、また金額ではハイエンド・サーバが貢献し7.9%増を見込んでいる。PCサーバは、台数成長率は昨年より鈍化するものの、少なくとも15%台はキープし、45万台以上の市場規模になるだろう。ただし金額では価格低下の影響により3%増に留まるものと考えられる。
セグメント別成長率予測 |
出典:ガートナー データクエスト(2001年12月) |
日本を除く世界各地域におけるサーバ出荷が低迷し、かつ国内の主要ITセグメントでもマイナスが目立つなか、国内サーバ市場は引き続き比較的堅調なセグメントに属することになるだろう。このとき、ベンダは昨今のITおよびそれを取り巻く情勢を過度に悲観することなく、特にセグメントごとのトランジションを的確に捉え、次のビジネス・チャンスを確実に狙う積極性が求められるだろう。
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