IT Market Trend

第11回 日本PC市場:2001年の結果と2002年への展望(1)

ガートナージャパン株式会社
データクエスト コンピュータシステム産業分析部
パーソナルコンピュータ

蒔田佳苗
2002/03/27


ガートナージャパン、データクエストの調査結果によると、2001年の日本におけるパソコン(サーバを除くデスクトップPCおよびノートPCの合計)市場は、ベンダ出荷台数で1287万台、対前年成長率7.6%減となった。2001年は、過去2年にわたって拡大してきた個人市場において、新規需要の減退感と出荷台数の落ち込みが目立った。また、2001年前半まで堅調に投資を続けてきた企業ユーザーや政府・官公庁においても、後半からは景気の低迷が原因でクライアントPCへの設備投資が抑制され始め、需要停滞が顕著となっている。これにより、日本市場全体の成長スピードが大きく減速したものと分析している。加えて、個人・ビジネス市場ともに、2001年は大きな買い替え需要のタイミングではなかったことも、飛躍的に市場が拡大した2000年と比べて出荷台数が伸びなかった一因である。なお、2001年全体でのベンダ出荷金額は、対前年成長率14.9%減となっている。ここでは2001年に表れた中・長期的プロセスがパソコン市場にどのような変化をもたらし、それらが2002年にどのような影響を与えるのか、市場トレンドを中心に解説する。

1998年マイナス成長からの流れ

 1998年、日本国内のパソコン市場は景気低迷により、出荷台数が対前年成長率1.3%減となったが、その後は個人の買い替えやインターネット・電子メールの普及による個人市場の新規需要拡大、ビジネス市場における西暦2000年問題対応に伴う買い替えにより、1999年には回復した。続く2000年も個人需要のすそ野拡大と企業による引き続き堅調な投資によって、躍進的な市場成長を遂げていた。2001年はこの2年に及ぶ市場の急速拡大に対するリバウンド現象ともいえる需要低下に加え、景況感の悪化・不透明感によるマイナス影響が重なったために、出荷台数で大きな前年割れとなった。

2001年ビジネス市場低迷までの軌跡

 ビジネス市場向け出荷台数は、2001年前半までは、大企業、政府・官公庁を中心とした堅調なIT投資、組織の統合・合併によるシステム再編需要や単純な買い替え需要などによって、市場は底堅く成長を続けてきた。2001年第1四半期には、こうした需要を駆り立てる要因に加え、2000年度末の需要の反動、補正予算効果、また一部中小企業のパソコン減税駆け込み需要などが絡み、出荷台数前年同期比17.1%増となり、すでに下降線を描いていた個人市場の成長率9.4%増と比べ、高い伸びを示した。また、続く第2四半期も個人市場が14.4%減と大幅に落ち込みを示す一方で、ビジネス市場は依然と7.0%の増加を記録している。しかしその後、国内外の景気の悪化が深刻になるに従い、夏以降は、それまで積極的に投資を行っていた体力のある企業ユーザーの間にも、ハードウェアの買い替え・買い増しに関する予算を縮小する傾向が顕著に表れ始めた。従来、中間期末で需要が盛りあがるはずの第3四半期には、出荷台数前年同期比10.4%減となった。第4四半期も同11.6%減とマイナス成長は続き、2001年全体では前年比1.1%増と、前年比微増の出荷台数となっている。

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日本パソコン市場出荷台数エンド・ユーザー市場別出荷推移
青い点線は1998年第1四半期の個人市場の値/出典:ガートナー データクエスト(2002年2月)

2001年の個人拡大の踊り場と買い替え不需要期

 個人市場は2000年末から需要に減速感が出ていたが、2001年に入るとさらに新規需要の停滞感が強まり、前述のように第2四半期から対前年同期比マイナスとなり始めた。第3四半期は、10月出荷開始のWindows XPモデル出荷前であったことから、店頭在庫を減らす目的でPCベンダからの出荷自体が著しく抑制されたため、対前年同期比41.0%減という極めて著しい落ち込みを記録している。この数字は、世界のPC市場における各セグメントの中でも類を見ないものであった。この大幅減に対し、第4四半期には前年同期比で19.9%減と若干持ち直しが見える。

 しかし、店頭需要の中心は買い替え・買い増しユーザーであり、個人市場の全体的な需要回復には至っていない。1998年後半のWindows 98出荷をきっかけに買い替え・買い増しをしたPCへの関心が高いユーザーを中心としたごく限定的な需要にとどまっている。これらのユーザーが2001年にも買い替え・買い増し購入を行ったのは、高性能ノートPCや高性能プロセッサ搭載デスクトップPC(特にPentium 4を搭載した省スペース型PC)の登場や、液晶ディスプレイの価格低下といった理由からだ。外部の店頭調査結果を見ても、新規ユーザーの1台目購入比率は減少の一途をたどっている。これは1999年以降、個人市場拡大の中核となった電子メールとインターネットが目的の新規ユーザー層が、2001年末時点では、まだ買い替え・買い増しをしようとは考えていないことが理由である。

 1999年から2年続いた個人市場の拡大は、2001年にいったん収束し、既存ユーザー層の買い替え・買い増し需要もタイミング的にこの年全体の出荷台数を底上げするほどの規模にはなっていない。景気の悪化については、当然雇用・所得への圧力から個人消費の低迷にダイレクトに影響すると考えるのが自然である。しかし、少なくとも2001年の個人需要低迷は、景気低迷の影響よりも、むしろ市場成長段階の移行プロセスと周期的な要因による影響の方が大きいと考える。2001年全体で個人市場への出荷台数は、前年比16.4%減となっている。

形状別動向:ノートPCが初めて50%を超える

 デスクトップ型、ノート型といった形状別の動向調査によれば、ノートPCの部材コストの低下と性能向上により、デスクトップPCよりもノートPCへの需要が増加していることが分かる。特に既存のデスクトップPCユーザーで買い替え・買い増しを狙う数少ない層も、次はノートPCというように、形状のシフトが見られる。個人ユーザーにとっては、

  • ノートPCの性能が大幅に向上したこと
  • ノートPCの価格がデスクトップPC価格の下げ幅に比べ大きく、デスクトップPCに比べてノートPCの方が購買動機としての「買い時感」が強く感じられたこと
  • 既存デスクトップPCと併用し複数のPCを所有する場合、ノートPCの方が省スペース効果があること
  • 同じ複数台所有でもデスクトップPC2台よりもノートPCとデスクトップPCの組み合わせの方が宅内での利用スタイルを多様化できること

などのさまざまな理由が挙げられる。またビジネス・ユーザーにとっても、デスクトップPCと遜色ない性能の製品の絶対的価格が安くなってきたことで、省スペース・デスクトップPCの代わりとしてのノートPCがこれまで以上に採用しやすくなったという側面も考えられる。これにより2001年はノートPCの出荷構成比が拡大し、台数も前年から微増ながら3.9%増となった。2000年はPC全体の出荷台数のうち45.2%がノートPCであったが、2001年ではそれが50.8%に達している。

 一方のデスクトップPCも、ノートPCに比べて優位な点が皆無というわけではない。ビジネス市場で投資抑制スタンスの強まった2001年第3四半期ごろから、本来ノートPCの導入を予定していた一部の企業ユーザーが、ノートPCよりもさらにシステム価格を低く抑えられるデスクトップPCに変更することにより、台数は減らさずコスト削減を行うという傾向が見られるからだ。しかし個人市場においては、前述したようにプライス・ポイントと性能改善の点でノートPCが優位にある。新規・買い増し需要だけでなく、買い替え需要もデスクトップPCからノートPCへと置き換えられる傾向が強い。その影響からかデスクトップPCは、2001年全体では対前年成長率で17.0%減となっている。

2001年のハイライト

  1. 出荷台数1287万台、対前年成長率7.6%減

  2. 個人新規ユーザー層の拡大、踊り場を迎える

  3. 景気低迷により、後半から企業需要が減退

  4. ユーザー市場別の出荷台数対前年成長率、個人市場16.4%減、ビジネス市場1.1%増

  5. 個人市場の構成比45.1%、2000年の49.8%からシェア減少

  6. 形状別成長率でデスクトップPCが17.0%減、ノートPCが3.9%増、その結果ノートPCがわずかに過半数を上回り、構成比で50.8%となる

 
 
     
 INDEX
  IT Market Trend 第11回
   日本PC市場:2001年の結果と2002年への展望(1)
     日本PC市場:2001年の結果と2002年への展望(2)
 
「連載:IT Market Trend」


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