ニュース解説

混沌のDVD規格、ライトワンス型のDVD+Rが登場
 
1.3種類の書き換え型DVD規格の行方

デジタルアドバンテージ
2001/05/26

 2001年5月17日、書き換え型DVDの1つ「DVD+RW規格」を推進するDVD+RW Allianceが新たにライトワンス型の「DVD+R規格」を発表した。すでにDVD規格のライトワンス型としては、パイオニアが対応製品の出荷を開始した「DVD-R」があるため、DVD+Rはライトワンス型としては2番目の規格ということになる。

 DVD規格の書き換え型には、DVDフォーラムで正式に規格化されたDVD-RAMとDVD-RW、そしてソニーとHewlett-Packard(HP)、Philipsなどが規格化した(DVDの規格団体であるDVDフォーラムの承認を得ていない)独自のDVD+RW(DVD+ReWritable)の3種類がある。これに加えてライトワンス型が2種類となり、DVDのライタブル(書き込み可能)規格は5種類あるという複雑な状態となっている。まず、これらライタブルDVD規格について簡単にまとめ、その後にDVD+Rの位置付けなどを確認しよう。

3種類の書き換え型DVD規格

 書き換え型DVD規格には、前述のようにDVD-RAM、DVD-RW、DVD+RWの3種類がある。DVD-RAMとDVD-RWは、DVDビデオ・レコーダーとしてすでに製品化されているほか、DVD-RAMはPC向けのストレージとして、すでにDVD-RAMドライブが販売されている*1。これに対し、DVD+RWは各所で参考展示は行われるものの、民生品、PC向けともに対応製品は未だに販売されていない。とはいえ、DVD-RAM、DVD-RWともに、市場で認知されているというほど製品の出荷量は多くない。今後の展開次第でDVD+RWも十分逆転が可能な状態である。まず、それぞれの規格の違いを見ていこう。

*1 つい最近、IEEE 1394対応の外付けDVD-RWドライブが相次いで発表されており、まもなく出荷も始まるようだ。

■本家書き換え型規格「DVD-RAM」

 DVD-RAMは、相変化技術を採用した書き換え型のDVD規格である。1997年に片面容量2.6GbytesのVer.1.0が規格化され、その後1999年10月に片面容量4.7Gbytes、両面で容量9.4GbytesのVer.2.0が公表された。DVD-RAMディスクは、10万回の書き換えが可能である。

 DVD-RAMの記録には、ウォブル・ランドグルーブ(Wobbled Land-groove)方式を採用している。ウォブル・ランドグルーブ方式とは、ディスク上にランド(溝と溝の間の部分)とグルーブ(溝の部分)を同じピッチで繰り返し配置し、その両方に記録を行うというもの。さらに溝にはウォブルという「うねり」をつけることで、クロック情報としている(あまり意味を持たないようだ)。ディスクのセクタ情報を示すアドレス情報は、あらかじめディスク上にピットとして形成されている。

DVD-RAMのTYPE 1ディスク
TDKが販売しているDVD-RAMのTYPE 1ディスク。当初のDVD-RAMでは、このようにカートリッジに入ったディスクのみが規定されていたが、Ver.2.0でカートリッジなしの仕様も追加されたようだ。

 さらに、高密度化と高速アクセスのためにゾーンCLV(ZCLV:Zone Constant Linear Velocity)フォーマットを採用するのもDVD-RAMの特徴の1つである。ゾーンCLVフォーマットとは、ディスクをドーナッツ状のゾーンに分割し、各ゾーンでのセクタ長が同じになるようにしたもの(内周から外周に向かって、各ゾーンでのセクタ数が増えていく)。DVD-RAMでは、20のゾーンに分割し、最内周ゾーンのセクタ数を17、最外周ゾーンのセクタ数を40としている。これにより、全体的な記録容量を向上できるほか、ゾーン内でのディスクの回転速度を一定にできるため、高速アクセスが可能となる。

 DVD-RAMディスクは、カートリッジに密封されたTYPE 1と、カートリッジからのディスクの取り出しが可能なTYPE 2、カートリッジに入っていないものの3種類が規格化されている。当初は、TYPE 1とTYPE 2のみが規格化され、書き込み処理はカートリッジに入れた状態でしか許されなかった。ところが2000年6月には、カートリッジなしの片面4.7Gbytesのディスクが各社から販売され、カートリッジなしの状態でも書き込み可能に変更された。


■CD-RWをベースにする書き換え型規格「DVD-RW」

パイオニアのDVDビデオ・レコーダー
DVD-RWを初めて採用したパイオニア製DVDビデオ・レコーダー「DVR-1000」。1999年11月25日に発表された。

 DVD-RWは、パイオニアが開発した相変化技術を採用した書き換え型のDVD規格である。フォーマットの正式呼称は「DVD-Re-recordable」であり、DVDフォーラムで正式にDVD規格として認定されている。DVD-RWは技術的にはCD-RWをベースにしており、そのDVD-ROMに対する位置付けも、CD-ROMに対するCD-RWと同様である。DVD-RWの記録済みディスクは、DVD-ROMディスクと仕様が近いため、再生専用のDVDプレイヤーやDVD-ROMドライブでもこれを再生できるように対応させることが容易という特徴がある。

 DVD-RWは、1999年11月に初めてパイオニア製DVDビデオ・レコーダー「DVR-1000」に採用されて登場している(パイオニアの「DVR-1000に関するニュースリリース」)。記録容量は片面で4.7Gbytesで、記録フォーマットとして、ウォブル・ランドプリビット(Wobbled Land pre-bit)方式を採用しており、ブランク・ディスクには「うねり」がついたランド部分に、アドレス情報をピットで記録してある(記録はランド部に行う)。基本的な仕様は、DVD-Rに準じている。

DVD-RW Ver.1.1対応のディスク
2001年3月に発表されたDVD-RW Ver.1.1対応のディスク。第2世代のDVD-RWビデオ・レコーダーであれば、DVD-RWで記録した映像がDVDプレイヤーで再生可能となる。

 DVD-RWは、当初はDVDプレイヤーでの再生がサポートされない「DVDビデオレコーディングフォーマット記録」のみのサポートであったが、2000年3月にVer.1.1になりDVDプレイヤーでも再生可能な「DVDビデオフォーマット記録」にも対応した(日立マクセルの「DVD-RW Ver.1.1規格対応ディスクに関するニュースリリース」)。なお、DVD-RWのディスクは、DVD-RAMと異なり、カートリッジには入っていない。書き換え可能回数は、DVD-RAMの10万回に対して、約1000回と少ない。ビデオ・レコーダー用途では1000回でも十分だが、PC向けストレージとしては信頼性が低い、というのがDVD-RAMを推進している企業の主張だ。


■MMCDのリベンジはなるのか「DVD+RW」

 1997年9月に書き換え型DVD規格として発表されたのが「DVD+RW」である。相変化技術を採用する点は、ほかの書き換え型DVD規格であるDVD-RAM、DVD-RWと同様である。当初は、片面容量3.0Gbytes、両面で容量6.0Gbytesでスタートする予定であったが、実際には製品化されることはなかった。その後、2000年6月に片面容量4.7Gbytes、両面で容量9.4Gbytesのものが規格化されている。なおDVD+RWのディスクもDVD-RWと同様、片面記録、両面記録ともにカートリッジには入っていない。

 DVD+RWは、ソニーとHewlett-Packard(HP)、Philipsなど、DVDの標準化時にMMCD規格を提唱していたメンバーが中心となって規格化している。DVDフォーラムでの承認を得ていないため、正確にはDVD規格とは呼べない。簡単に歴史的な背景を説明すると、現在のDVD規格にまとまる以前、東芝と松下電器産業、日立製作所などが提唱するSD規格と、ソニーとPhilipsなどが提唱するMMCD規格の2つが標準化を争っていた。争点は、ソニー側がCDの延長とする規格を主張していたことにあるという(特許の問題などが複雑に絡み合っていた)。これをソニーが折れる形で1つにまとめたのが、現在のDVD規格なのだ。そのため、書き換え型DVDにおいても、SD陣営とMMCD陣営といったように、それぞれが規格を提案し、意見がまとまりにくい状況に陥っている。DVDフォーラムはどちらかというとSD陣営寄り(といわれている)のため、SD陣営に有利な規格が採用されることが多いようだ。そのため、MMCD陣営は独自の別規格を新たに提唱する、ということが続いている(DVDオーディオに対する、スーパーオーディオCDなど)。

 DVD+RWの最大の特徴は、既存のDVD-ROMドライブやDVDプレイヤーで再生できる点にある。記録フォーマットとして高周波ウォブル・グルーブ(High-Frequency Wobbled groove)方式を採用し、ランダム・アクセスによるデータ変更で発生するデータ・ブロックとデータ・ブロックの継ぎ目を1μm以内に収めることを可能にしている(継ぎ目をなくすことを「ロスレス・リンキング」と呼ぶ)。高周波ウォブル・グルーブ方式とは、「うねり」の周波数を高く(つまり細かく)することで、高い精度でアドレス情報を得ることを可能にしようというもの。記録は、グルーブに対して行う。記録後のディスクは、DVD-ROMディスクやDVDビデオ・ディスクに近いものとなるため、DVD-ROMやDVDビデオとの互換性が高いといわれている。

 さらにDVD+RWでは、記録フォーマットとしてCLD(記録密度一定:Constant Linear Density)を採用する。DVDでは、基本的にCDと同様、CLV(線速度一定:Constant Linear Velocity)を採用しているが、DVD+RWではランダム・アクセス性能と記録容量を向上させるため、CLDを採用したという。なお、ビデオ再生はCLVで、データの読み出しはCAV(角速度一定:Constant Angular Velocity)で行うことで、互換性とアクセス速度の向上を実現している。

 DVD+RWに対応した製品は、2001年3月に開催されたCeBITなどで参考出品されているものの、現在のところ販売まで至っていない。そのため、細かい仕様や互換性などについては明らかでない点も多い。


  DVD-ROM(単層) DVD-ROM(二層) DVD-RAM DVD-RW DVD+RW DVD-R for General DVD-R for Authoring
記録方式 相変化・書換型 相変化・書換型 相変化・書換型 有機色素・追記型 有機色素・追記型
容量 4.7Gbytes 8.54Gbytes 4.7Gbytes 4.7Gbytes 4.7Gbytes 4.7Gbytes 4.7Gbytes
読み出しレーザー波長 635nm/
650nm
635nm/
650nm
650nm 635nm/
650nm
650nm 635nm/
650nm
635nm/
650nm
書き込みレーザー波長 650nm 635nm/650nm 650nm 650nm 635nm
レンズ開口数(NA) 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6
反射率 45〜85% 18〜30% 18〜30% 18〜30% 18〜30% 45〜85% 45〜85%
トラック・ピッチ 0.74μm 0.74μm 0.615μm 0.74μm 0.74μm 0.74μm 0.74μm
最短マーク長 0.4μm 0.44μm 0.42μm 0.4μm 0.4μm 0.4μm 0.4μm
セクタ配置 CLV CLV ZCLV CLV CLD CLV CLV
トラック・フォーマット ピット ピット ウォブル・ランドグルーブ ウォブル・ランドプリビット 高周波ウォブル・グルーブ ウォブル・ランドプリビット ウォブル・ランドプリビット
カートリッジ なし なし 有り*2 なし なし なし なし
書き換え回数 10万回 1000回 1000回 1回 1回
ビデオ・レコーディング規格 不明
DVD規格の主な仕様
*2 カートリッジ有りのTYPE 1となしのTYPE 2のメディアを用意

  関連リンク
DVDフォーラム
DVDフォーラムのホームページ
DVR-1000に関するニュースリリース
DVD-RW Ver.1.1規格対応ディスクに関するニュースリリース
DVD+RWの技術紹介ページ

 

 INDEX
  [ニュース解説]混沌のDVD規格、ライトワンス型のDVD+Rが登場
   1.3種類の書き換え型DVD規格の行方
     2.DVD規格分裂は避けられないのか?

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