ニュース解説
混沌のDVD規格、ライトワンス型のDVD+Rが登場 デジタルアドバンテージ |
DVD+Rの登場で混沌とするライトワンス型
ライトワンス型のDVDは、DVD-R Ver.2.0の規格が策定されたうえ、2001年1月10日にアップルが「Power Mac G4」でパイオニア製のDVD-Rドライブをオプションながらいち早く選択可能としたことで、普及の兆しが見えてきたところであった(アップルの「Power Mac G4の製品紹介ページ」)。ところが、前述のように2001年5月17日にDVD+RW AllianceがDVD+RWのサブセットともいえるDVD+Rを発表したことで、雲行きが怪しくなってきた。
■CD-RをベースとするDVD-R ライトワンス(追記)型では、CD-Rの技術をベースとするDVD-R Ver.1.0が正式規格として規定されている。DVD-Rは、1997年に発表されたが、当初の第1世代では容量が3.95Gbytesであった。その後、1998年11月のVer.1.9でDVD-ROMと同じ4.7Gbytesとなったが、記録に用いるレーザー波長の選定や著作権保護機能などの見直しから、1999年11月にはオーサリング(プレマスタリング)向けの「DVD-R for Authoring」と一般向けの「DVD-R for General」の2種類に分け、先行して「DVD-R for Authoring」を規格化することにした。2000年11月には、「DVD-R for General Ver.2.0」も正式にDVDフォーラムで承認され、DVD-R規格が揃うことになった。
DVD-R for Authoringは、著作権保護機能がドライブのみに組み込まれており、記録用レーザーの波長はDVD-R Ver.1.0と同じ635nmとしている。一方のDVD-R for Generalは、著作権保護機能がドライブとメディアの両方に実装されるほか、DVD-RAMドライブやDVD-RWドライブでDVD-R for Generalのディスクへの書き込みを可能にするため、記録用レーザーの波長はこれらのドライブと同じ650nmとした。 DVD-RWと同様(正確にはDVD-RWがDVD-Rの仕様に合わせたのだが)、DVD-Rは記録フォーマットとしてウォブル・ランド・プリビット方式を採用する。DVD-Rディスクの基本構造は、トラッキングのための「うねり」がついたグルーブが形成されたディスク基板とレーザーの反射層との間に、ライトワンス型の有機色素層を記録層としてはさみ込んだものだ。 |
■DVD+RWのライトワンス版DVD+R
DVD+Rについては、いまのところDVD+RW Allianceのホームページに掲載されたニュースリリースしか情報がなく、仕様の詳細は不明だ。ただ、DVD+Rという名前などから、DVD+RWの記録フォーマットなどをベースに、ライトワンス化したものと思われる(記録層として有機色素を用いる)。 DVD+Rの登場により、DVD+RW Alliance陣営も、ワイトワンス型の規格を持つことになったわけだ。これまで、DVD+RW Alliance陣営もDVD-Rに関しては、規格に賛同し、ソニーなどは製品も発表してきている。ここに来て、DVD-Rに対抗する規格を提案してきた意図は不明だが、DVD規格の標準化争いに根の深さを感じる。 |
DVD-ROMディスク | DVD-RAMディスク | DVD-RWディスク | DVD+RWディスク | DVD-R for Generalディスク | DVD-R for Authoringディスク | DVD+Rディスク | |
DVD-ROMドライブ | 〇 | ▲ | △ | △/× | △/× | △/× | △/× |
DVD-RAMドライブ | 〇 | 〇/〇 | △ | △/× | 〇/× | 〇/× | △/× |
DVD-RWドライブ | 〇 | ×/× | 〇/〇 | △/× | 〇/× | 〇/× | △/× |
DVD+RWドライブ | 〇 | ×/× | △/× | 〇/〇 | 〇/× | 〇/× | 〇/× |
DVD-R for Generalドライブ | 〇 | ×/× | 〇/× | 〇/△ | 〇/〇 | 〇/× | 〇/× |
DVD-R for Authoringドライブ | 〇 | ×/× | 〇/× | 〇/× | 〇/× | 〇/〇 | 〇/× |
DVD+Rドライブ | 〇 | ×/× | △/× | 〇/× | 〇/× | 〇/× | 〇/〇 |
DVD規格のドライブとディスクの互換性 | |||||||
読み出し/書き込み:〇は可、△はほぼ可、▲はドライブの対応が必要、×は不可 |
DVD-RWとDVD+RWの統合は?
DVD+RW規格の発表は、単にライトワンス型DVDに新たな規格が登場した以上に、実は重要な意味を持っている。2000年5月に発足した、DVD-RWの普及と促進を図る「RWプロダクツ プロモーション イニシアティブ(RWPPI)」には、DVD+RWを推進している(はずの)ソニーが参加していたからだ(パイオニアの「RWPPI発足に関するニュースリリース」)。そのときのソニーのコメントは、「DVD-RWはDVDビデオ・レコーダーなどの民生機器に、DVD+RWはPC向けストレージとして、それぞれ推進していく」というものであった。その一方で、ソニーのRWPPIへの参加によって、DVD-RWとDVD+RWが統合されることを多くの人が期待していたのも事実だ。
しかし、DVD+RWのサブセットともいえるDVD+Rの発表は、DVD+RWを独立して推進していくというソニーの意思の現れともいえる。DVD-RWとDVD+RWの規格統合は、やはり難しいということなのかもしれない。
DVD MultiはDVD規格の救世主になるのか
SD規格とMMCD規格がDVD規格に統一された1995年ごろでは、1997年にはCD-ROMからDVD-ROMへの移行が行われ、ストレージ・メディアとしてもDVD-RやDVD-RAMが主流になるだろう、と予想されていた。しかし、DVDビデオ・プレイヤーは普及し始めたものの、DVD-ROMドライブは未だに主流と呼べるほどまで普及していない。DVD-RやDVD-RAMに至っては、PCパーツ販売店の片隅に置かれていればいい方、というほど普及していない。このようにDVD普及が遅れている原因の1つは、書き込み型DVD規格が乱立し、標準化されていないことにある。
もちろんDVDフォーラムでも、こうした混乱した状況がDVD普及のブレーキとなっていることは承知しているようだ。すでに、DVD規格の相互互換性を実現する「DVD Multi」と呼ぶ規格を策定中だ。DVD Multiには、PC向けのDVD Multi Drive(Read-Only)とDVD Multi Drive(Writable)、民生機器向けのDVD Multi Player(Read-Only)とDVD Multi Recorder(Writable)の4種類が規定されている。DVD Multi Drive(Read-Only)では、DVD-RAM、DVD-RW、DVD-R for Generalの各フォーマットで書き込まれたディスクの読み出しを可能にする。また、DVD Multi Drive(Writable)では、DVD-RAM、DVD-RW、DVD-R for Generalの各フォーマットでの読み出し/書き込みを可能にしようというものだ。DVD Multi Player(Read-Only)とDVD Multi Recorder(Writable)も同様である。現在、Ver.0.9がDVD規格のライセンス提供会社「DVD Format/Logo Licensing Corporation(DVDFLLC)」のホームページ上で公開されている(DVD Multi Ver.0.9の入手先)。
この仕様を見ると分かるが、DVDフォーラムで認定していないDVD+RW/+Rは、DVD Multiの対象に入っていない(それがDVD+Rの背景にあるのかもしれない)。つまり、DVD MultiによってDVD規格の一応の統合が行われても、DVD+RW/+Rがある限り、市場には同じような書き込み型DVDが2種類存在することになる。DVD規格を決めたときのように話し合いで統一を図るのか、それともDVD MultiとDVD+RWが市場で標準を争うことになるのか、DVDの標準化はまだ目が離せない。ただ両陣営には、企業の利益を優先するあまり、ユーザー不在の標準規格作りに陥っていないかどうか、再考を願うばかりだ。
関連リンク | |
Power Mac G4の製品紹介ページ | |
DVD+RWの技術紹介ページ | |
DVD Multi Ver.0.9の入手先 |
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[ニュース解説]混沌のDVD規格、ライトワンス型のDVD+Rが登場 | ||
1.3種類の書き換え型DVD規格の行方 | ||
2.DVD規格分裂は避けられないのか? | ||
「PC Insiderのニュース解説」 |
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