連載 Mobile Insider第7回 Palm系PDAのキーボード事情フルサイズにこだわった専用キーボード 塩田紳二 |
PDA界のヒット商品「Stowaway Portable Keyboard」
最近のPDA用キーボードとしてのヒット商品は、4つに折り畳めるThink Outside社の「Stowaway Portable Keyboard」である。これは、表「PDA用キーボードの種類と特徴」の「1. 専用フルサイズ・キーボード」に該当する。すでにPalm社の純正品として、あるいはTargus社のブランドで、Pocket PC用などが販売されており、いまやPDA用キーボードの標準的な地位を獲得しているといってよい。
PDAメーカー | 機種 | 発売元 | 備考 |
Palm | Palm IIIc/Vx/m100/m500(英語版はIIIx用あり) | Palm | m500シリーズ用日本語版はASCII配列 |
Handspring | Visor Deluxe/Prism/Platinum | Targus | 変換コネクタでEdgeに対応予定 |
ソニー | クリエPEG-S300/S500C/N700C | Targus | 専用のキーボード・ドライバでN600Cにも対応 |
日本HP | Jornada 548/525 | Targus | |
コンパック | iPAQ Pocket PC | Targus | 現時点で国内発売時期未定 |
カシオ計算機 | CASSIOPEIA E-700/800 | Targus | 10月発売予定 |
Portable Keyboardの対応機種と発売元 |
Stowaway Portable Keyboard |
これはPalm Computingから販売されている「Portable Keyboard(Palm V用)」。全体を4つに折り畳むことができる。 |
各機種用に細かい部分は異なるものの、全体の機構は同一で、フルサイズのキーボード(キー・ピッチは18mm程度)が4つの部分で構成されており、これを4つ折りにしてコンパクトな状態にできるのが特徴だ。また、キーボード自体は、フルサイズであるうえ、ノートPC用のものとキータッチが似て(一説によるとThinkPadのキーボードに似ているといわれている)、十分なストロークを持っていることから打鍵が容易である。
基本的には、PDAの持つ通信用/データ同期用のシリアル・インターフェイス(Visorはキーボード用の接続信号ピンを装備する)を利用してキーボードを接続し、本体側にインストールしたデバイス・ドライバでシステム側にキーストロークを伝達する。
最近のPDAは、PCとのデータ同期のために接続が簡単なクレードルを持つ機種がほとんどだ。多くの場合、簡単にクレードルを装着できるように本体の下部に通信コネクタが装備されている。これを流用して、キーボードにPDAを装着するというのがStowaway Portable Keyboardの基本的な接続方法である。動作に必要な電力は、PDA側から通信コネクタ経由で供給されるため、特に電池などは必要ない。
キー配列は、各機種用に若干の違いはあるものの、英語版ではASCII配列、日本語版は変則的なJIS配列(カナの刻印がないなど)となる。また、キー自体のレイアウトは、101型キーボードをベースに特殊キー(Fnやcmdなど)とカーソル・キー、4つのアプリケーション起動キーを持つ。簡単にいえば、ノートPCのキーボードをベースに、スケジュールや電話帳を起動できる4つのアプリケーション・キーを右端に追加したようなものだ。
実際に使ったところ、打鍵には問題がないが、構造上、開いた状態でも、中心部分の蝶番は可動であるうえ、全体に剛性がないため、平らなところでないと歪んでしまい使いにくい。例えば、膝の上や、やわらかい鞄の上などに置いて使うのは少々難しい。また構造上仕方のない面もあるが、飛行機の折り畳み式テーブルなどの上でもキーボードのセンター部分が持ち上がってしまう。
なお、国内で未発売のiPAQ用だが、英語版を入手して使ってみたところ、通常の入力には問題はないのだが、いわゆる日本語入力のオン/オフに相当するものがなく、そのたびに画面をタップしなければならなかった。ひらがな入力ソフトウェア・キーボードにした状態で、ローマ字入力は可能だったし、スペース・キーで変換も行えたが、英文の混ざる文章は面倒である。メールの返事を書く程度なら何とか利用できるが、やはり日本語版の登場待ちというところだろう。
PDA用小型キーボードの定番「GoType! Pro」
Palm系を中心として、人気のあるキーボードには、Landware社のGoType! Proがある。これも小型ながらフル・キーボードであり、対応機種は、Palm III/VII/V/m100、Handspring Visor、Casio E-100/105/115/125などになっている。
GoType! Pro |
Landware社の「GoType Pro(Palm Vx用)」。半透明のカバーを開くとキーボードが現れる。このVx用は、クレードルとしても利用できる。 |
こちらは、ピッチなどを小さくした縮小型のキーボードで、イメージとしては、B5以下のノートPCが備えているような小型キーボードである。Stowaway Portable Keyboardと同様、表「PDA用キーボードの種類と特徴」の「1. 専用フルサイズ・キーボード」に該当する。
キーボードにはカバーがついており、カバーを開けるとPDAの装着用コネクタが上を向いて現れる構造となっている。またこの状態では、重心が後ろに来て倒れてしまうため、それを防ぐために本体後部には引き出し式の足がある。充電機能(ただしACアダプタ部分は、PDA付属のものを流用)や、PC側との接続を行うためのD-Sub 9ピン・シリアル・コネクタなどを装備している。つまり、クレードルとしても利用できるし、外出時の充電もこれを使って可能となるわけだ。外出時に別にクレードルを持ち歩かずに済むという点では、出張などに持って出るには便利な製品だ。もっとも、PCとの接続にはシリアル・ケーブルが必要であるし、結局ACアダプタは持ち歩く必要があるので、重量的にそれほど軽くなるというわけでもない。
数字、アルファベットといったASCII配列のキーボードに加えて、6つのファンクションキーが装備されており、標準では内蔵アプリケーションなどに割り当てられている。
小型化しているため、キー・ピッチは狭く、横方向は16mm程度、縦方向は10mm程度しかない。このため、通常のキーボードに比べると高速打鍵時に少々打ちにくさを感じる。実際に使った印象では、打鍵ミスが多少増えるような感じである。あまり速度を上げないように心がけると、打鍵ミスはそれほど発生しない。ローマ字で日本語入力を行っての印象なので、アルファベットのみの入力とは多少印象が違うのかもしれない。
また、こちらは折り畳み式ではないので、Portable Keyboardのように平らでないところでも利用可能だ。膝の上でも使え、ある意味どこでも使え、持ち運びもそれほど不便ではない。
関連リンク | |
キーボードを含むPalmシリーズ用周辺機器などの製品情報ページ | |
ストアウェイ・キーボード(Portable Keyboard)の製品情報ページ | |
GoType!ファミリの製品情報ページ |
INDEX | ||
[連載]Mobile Insider 第7回 Palm系PDAのキーボード事情 | ||
1.Palm系PDAの文字入力方法とキーボードの種類 | ||
2.フルサイズにこだわった専用キーボード | ||
3.バラエティ豊かな各種キーボード | ||
「連載:Mobile Insider」 |
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