連載

Mobile Insider

第7回 Palm系PDAのキーボード事情

塩田紳二
2001/08/16

 最近登場したほとんどのPDAは、液晶パネルの部分が感圧式のタッチパネルになっており、入力や操作をペンで行うのが一般的だ。ただし、一昔前に流行ったペン・コンピュータとは違い、ゼスチャーと呼ばれるペン操作はほとんど使わず、ペンをポインティング・デバイスとしてグラフィカル・ユーザー・インターフェイス(GUI)を操作し、文字入力には専用領域での文字認識もしくはソフトウェア・キーボードを利用する。

Palm系PDAの文字入力方法

グラフィティの例
これは「A〜G」を入力するためのグラフィティだ。点(・)は書き始めの始点を表している。このようにPalmシリーズは、ほとんどの文字・記号を一筆書きで入力できるよう設計されている。

 Palmシリーズ(当時はPalm Pilotと呼ばれていた)が登場した当時でも、ほかのPDAはアルファベットの筆記体を認識可能としていた。それにもかかわらず、コンピュータが認識しやすいように1文字1文字のアルファベットを簡約化(一筆書き化)した記号(グラフィティ)を、固定した特定の場所に入力させる、という方法をPalmシリーズが採用したのは画期的なことであった。これによりPalmシリーズは、ハードウェアを全体的に簡略化でき、低価格を実現した。その当時でも技術的には、26個の英文字と10個の数字、および若干の記号だけならば、ある程度のプロセッサ・パワーがあれば、ほぼ確実に認識が可能であることから、多くのPDAがこうした文字認識を採用するのを「常識」としてきた。一部機種では、任意の場所に筆記体を書くことで文字が入力できる、というさらにプロセッサ・パワーを必要とする方法を可能にしていたが、逆にこれがハードウェアを煩雑にし、ケースの大型化やバッテリ駆動時間の短縮を招いていたのである。

 ちなみにほとんどのPDAでは、感圧式のタッチセンサーが採用されている。これは、ペンで押さえるなどして圧力を加えた場所に応じて、電気抵抗値が変化するような透明なシートを利用するものだ。低価格で、ペン側に電池が不要なこと、検出領域とほぼ同じ大きさで実現できることなどがメリットである。これに対して、電波や磁気などを使った方式は、検出領域よりも大きな部品が必要、ペンが特殊で電池が必要、感圧式に比べると高価、といったデメリットのため、最近のPDAにはほとんど使われていない(精度の高い入力が必要なデジタイザやタブレットなどにはまだ使われているが)。

 この感圧式の欠点は、タッチする場所が同時に2カ所以上だと検出ができないこと、温度などの環境変化により、抵抗値が変化するため、補正が必要になることである。たとえば、ペンで押さえるときに手がパネルに触ってしまうとうまく動作しなかったり、指先などの面積が大きなものでは操作できなかったりなどの問題が出ることもある。また、ケースの一部がシートを圧迫すると、正しく場所を検出できなくなることもある。PDAを分解して、組み立てるときに部品がずれたり、ネジを締めすぎたりしても、うまく動かなくなることがあるようだ。

 さて、ペン入力には、キーボードという大きな部品が不要なため、全体として機器を小型化できるというメリットがあるが、一方で大量の文章入力に向かないという欠点がある。これを補うには、キーボードを使うのが手っ取り早い。というわけで、多くのPDAには、オプションやサードパーティ製品としてキーボードが用意されている。これが意外と種類がある。

名称 発売元 Palm系 Pocket PC系
Portable Keyboard(PalmTargus Palm/Targus Palm III/V/m100/m500*1、Visor*2 iPAQ*3、Jornada、CASSIOPEIA
GoType! Pro Landware Palm III/V/m100、Visor CASSIOPEIA
Happy Hacking Cradle PFU Palm III/m100
SH-Keys 富士通高見澤コンポーネント Palm III/V
ThumbType リンク・エボリューション Palm III/V
HATcker101/HATkey ダイヤテック Palm V
G300 エイサー・コミュニケーションズ&マルチメディア・ジャパン Palm V
PDA Keyboard PRO テックパーツ Palm III/V/m100*4
国内で入手可能なPDA用キーボード
*1 日本語版出荷予定
*2 Visor Edgeには現時点で未対応
*3 日本国内の出荷時期未定
*4 シリアル・ケーブルを別途用意して接続

PDA向けキーボードの種類

 ザウルス MIシリーズなどのように、一部機種では小型のキーボードを内蔵しているが、どうせならばなるべく打ちやすい外付け型のキーボードを使った方がよいのではないだろうか。というのは、内蔵にせよ、外付けにせよ、全体としての容積/重量の増加は避けられないからだ。中途半端なキーボードで機器が複雑になったり、大きくなったりするようなら、完全に分離できる、実用サイズのキーボードを必要なときにのみ持ち歩くようにした方がいいだろう。

 PDA用のキーボードには、いくつかの種類がある。

種類 特徴
1. 専用フルサイズ・キーボード 該当のPDA専用に作られたフルサイズのキーボード。PDA用に、打ちやすさや持ち運びやすさが考慮されている。このタイプは、折り畳めたり、PC用のキーボードに比べて小型だったりする
2. キーボード流用アダプタ PC用のキーボードなどをPDAに接続するためのアダプタ。自分で気に入ったキーボードを持ち歩いてもいいし、手近にあるパソコンのキーボードを流用してもいい。打ちやすさを追求するならこのタイプかもしれないが、PC用のキーボードを流用するため携帯性は劣る
3. 小型特殊キーボード 持ち運びを考慮した超小型のキーボードで、通常はPDA自体と一体化するように接続する。超小型を実現するため、特殊な入力方法を持つものがほとんどだ
4. シート・キーボード 少々変わり種で、PDAの液晶パネルがタッチパネルにもなっていることを利用して、ここにシール状のキーボードを貼り付けて使うもの。最も持ち運びに便利なタイプ
PDA用キーボードの種類と特徴

 このように、さまざまな種類のキーボードが存在するのは、ある意味で、多くのユーザーがキーボードを併用しているからでもあるのだろう。例えばメールや少し長めの文章作成などにもPDAを使うユーザーが多いわけだ。考えてみれば、多少キーボードが大きくても、ノートPCよりもはるかに小さく軽い。外出先でそれほど負荷のかかる仕事をしなければPDAで十分ともいえる。

 さて、次に具体的にどのようなキーボードが市販されているのかを見ていくことにしよう。

  関連リンク 
キーボードなど周辺機器の製品情報ページ
ストアウェイ・キーボード(Portable Keyboard)の製品情報ページ
GoType!ファミリの製品情報ページ
Happy Hacking Cradleの製品情報ページ
SH-Keysに関するニュースリリース
ThumbTypeに関するニュースリリース
HATcker101/HATkeyの製品情報ページ
G300の製品情報ページ
PDA Keyboard PROの製品情報ページ
 
 
 
 
 INDEX
  [連載]Mobile Insider 第7回 Palm系PDAのキーボード事情
  1.Palm系PDAの文字入力方法とキーボードの種類
    2.フルサイズにこだわった専用キーボード
    3.バラエティ豊かな各種キーボード
 
「連載:Mobile Insider」


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