元麻布春男の視点
RADEON 8500はグラフィックス市場に新風を巻き起こすか?(2)
元麻布春男
2001/11/17
|
|
RADEON 8500の性能を分析する
このRADEON 8500を表2のようなシステムで簡単なテスト(3DMark 2001)を行ってみた。まず、Windows 2000とWindows XPのそれぞれにRADEON 8500をインストールし、パッケージに添付されているグラフィックス・ドライバをインストールした状態でテストを行った。驚いたことに、Windows XPのCD-ROMにはRADEON 8500に対応したドライバが収録されており、しかもそのバージョンを調べるとRADEON 8500のパッケージに添付されているものと同じであった。ベンチマーク・テスト結果も、ほぼこれを裏付けるものである。通常OSのCD-ROMに内蔵されるドライバは、OSがリリースされる数カ月前のものであることを考えると、RADEON 8500のパッケージに含まれるグラフィックス・ドライバは、少々古いといわざるを得ない。
プロセッサ |
Pentium 4-2.0GHz |
マザーボード |
Intel D850MD |
メモリ |
256Mbytes PC800 RIMM |
LAN |
オンボード(ICH2+82562ET) |
サウンド |
オンボード(AD1885 AC'97 CODEC) |
解像度 |
1024×768ドット32bit色表示 |
リフレッシュ・レート |
85Hz |
|
表2 テスト・システムの基本構成 |
グラフィックス・チップ |
RADEON 8500 |
RADEON 8500 |
RADEON 8500 |
OS |
Windows 2000 (DX8.0a) |
Windows XP |
Windows XP |
ドライバ・バージョン |
5.13.1.3276(添付CD) |
6.13.3276(OS標準) |
6.13.3276(添付CD) |
FSAAなし |
7535 3DMarks |
7471 3DMarks |
7491 3DMarks |
2x FSAA |
2027 3DMarks |
2007 3DMarks |
2003 3DMarks |
4x FSAA |
2024 3DMarks |
1999 3DMarks |
2004 3DMarks |
|
表3 3DMark 2001のRADEON 8500でのテスト結果 |
DX:DirectX
2x FSAA:2サンプルのフルシーン・アンチエイリアス
4x FSAA:4サンプルのフルシーン・アンチエイリアス
|
また、この結果から分かることは、Windows XPの性能がWindows 2000を下回る傾向がある、ということだ。現時点でこの原因は分からないが、Windows XPではWindows 2000よりも動作するサービスなどが増えているのは事実。何かが影響しているのだろう。
もう1つ分かることは、このビルド番号3276のドライバは、FSAA(ATI TechnologiesがいうところのSMOOTHVISION)をサポートするルーチンに不具合がある、ということだ。2サンプルのFSAA(2x FSAA)でのスコアの落ち込みが、FSAAを使わない場合に対して大きすぎること(7500前後に対して2000程度)、4サンプルのFSAA(4x FSAA)とスコアが変わらないことでも明らかだ。テスト中の画面に縦線や横線のようなノイズが見られ、FSAAのアクセラレーションが有効に働いていないことが分かる。だがこのグラフィックス・ドライバは、WHQL(Windowsの互換性テスト)に合格し、デジタル署名されたものである。
さて、次の表は2001年11月14日付けでATI TechnologiesのWebサイトでリリースされたAlternate Driver(ビルド番号3286)を用いたテスト結果だ(ATI Technologiesの「RADEON 8500のグラフィックス・ドライバのページ」)。このドライバは、デジタル署名もなければ、WHQLの認証もとおっていないもの。インストール中に下の画面のような警告が出る。しかもRADEONシリーズに共通のユニバーサル・ドライバではなく、RADEON 8500/8500 LE専用のドライバとなっており、ドライバ・パッケージとしての完成度は高くない(11月15日には、「Recommended Driver-6.13.3276」としてRADEONシリーズ向けのユニバーサル・ドライバ・パッケージが提供された)。しかし、スコアを見れば明白なように、大幅に性能が改善されているほか、FSAAが動作するようになっている。
グラフィックス・チップ |
RADEON 8500 |
RADEON 8500 |
RADEON 8500 |
RADEON 8500 |
OS |
Windows 2000 (DX8.0a) |
Windows 2000 (DX8.1) |
Windows XP |
Windows Me (DX8.1) |
ドライバ・バージョン |
5.13.01.3286 |
5.13.01.3286 |
6.13.10.3286 |
4.13.7206 |
No FSAA |
8000 3DMarks |
8027 3DMarks |
7948 3DMarks |
8166 3DMarks |
2x FSAA |
6054 3DMarks |
6066 3DMarks |
6051 3DMarks |
6198 3DMarks |
4x FSAA |
3215 3DMarks |
3216 3DMarks |
3208 3DMarks |
3198 3DMarks |
|
表4 RADEON 8500の最新版ドライバによる3DMark 2001のテスト結果 |
|
最新ドライバのインストール中にWindows XPで表示される警告 |
Alternate Driverをインストールすると、Windows XPではデジタル署名がないことから警告を表示する。
|
|
最新ドライバの設定画面 |
Alternate DriverではDirect3DとOpenGLの両方で、SMOOTHVISIONの設定が可能となった。
|
WHQLの認証はドライバの安定性を保証するものではない
新しいOSをリリースするに際して、1種類でも多くのデバイスをサポートしたいと考えるのは当然のこと。しかし、そのために開発途上のデバイス・ドライバを収録してしまっては、何のためのWHQLか、ということになってしまう。おそらくMicrosoftが社内でWHQLの審査を行っている限り、この矛盾は解消しない。ユーザーにとって、WHQLをパスしているから安心だとは、到底思えない状況が続くだろう。
|
表4ではDirectX 8.0aと8.1の違い、さらにはWindows Meもテストに加えてある。この結果を見る限り、大きな差ではないものの、RADEON 8500はDirectX 8.1のランタイムをインストールすることで、微妙だが性能が向上する傾向が分かる。また、このドライバでもWindows XPよりWindows 2000の方が成績はよいが、さらにそれをWindows Meが上回っている(4xFSAAでは大きな差がないが、これはグラフィックス・メモリの性能がボトルネックになっているためだと考えられる)。Microsoftは、Windows XPの高性能をうたっているが、このテスト結果からその主張を裏付けることはできなかった。
RADEON 8500かGeForece3 Ti 500か? それが問題だ
表1で示したように、RADEON 8500のライバルは、本来GeForce3 Ti 500なのだが、残念ながら手元にカードがなかった。GeForce3 Ti 500は非常によい製品だと思うものの、すでにGeForce3ベースのグラフィックス・カードを買ったユーザー(筆者を含む)が買い替えるほどの性能向上があるかというと、正直言って難しいところだ。そのような理由から、手持ちのGeForce3を表4と同じ条件でテストしたのが表5だ。
グラフィックス・チップ |
GeForce3 |
GeForce3 |
GeForce3 |
GeForce3 |
OS |
Windows 2000 (DX8.0a) |
Windows 2000 (DX8.1) |
Windows XP |
Windows Me (DX8.1) |
ドライバ・バージョン |
Detonator XP 21.83 |
Detonator XP 21.83 |
Detonator XP 21.83 |
Detonator XP 21.83 |
No FSAA |
6959 3DMarks |
6956 3DMarks |
6913 3DMarks |
6983 3DMarks |
2x FSAA |
4983 3DMarks |
4999 3DMarks |
4967 3DMarks |
4987 3DMarks |
4x FSAA |
3201 3DMarks |
3198 3DMarks |
3181 3DMarks |
3177 3Dmarks |
|
表5 3DMark 2001のGeForce3でのテスト結果 |
GeForce3は、GeForce3 Ti 200とGeForce3 Ti 500の間の性能だと考えられるが、RADEON 8500の性能は明らかにGeForce3を上回っている(GeForce3 Ti 500とどちらが高性能なのかは気になるところではあるが)。GeForce3の結果でRADEON 8500と異なる傾向を示したのは、DirectX 8.1による性能向上でほとんど差が見られないこと、Windows XP、Windows 2000、Windows Me間の性能差が小さいことだ。GeForce3のドライバの方が、Windows XPへの最適化が進んでいるのかもしれない。
今回のテストを見る限り、RADEON 8500の性能はハイエンドを競うにふさわしいものに思える。現時点では、GeForce3 Ti 500とどちらが性能がよいか、結論を下すことはできないし、市販されているゲームの中には、GeForceを前提に最適化されているものも少なくない。それくらいNVIDIAが高いシェアの状態を続けてきた、ということのあかしでもある。だが、よい製品をリリースしない限り、状況は変化しない。RADEON 8500の性能は、状況に変化をもたらしうるものだと思うし、比較的早期にSMOOTHVISIONをサポートしたグラフィックス・ドライバがリリースされたことも、よい兆候ではないかと思う。問題は、こうしたハイエンドのグラフィックス・チップに相応しいゲームが乏しいことだが、これはRADEON 8500だけの問題ではないだろう。
System Insider フォーラム 新着記事
- Intelと互換プロセッサとの戦いの歴史を振り返る (2017/6/28)
Intelのx86が誕生して約40年たつという。x86プロセッサは、互換プロセッサとの戦いでもあった。その歴史を簡単に振り返ってみよう
- 第204回 人工知能がFPGAに恋する理由 (2017/5/25)
最近、人工知能(AI)のアクセラレータとしてFPGAを活用する動きがある。なぜCPUやGPUに加えて、FPGAが人工知能に活用されるのだろうか。その理由は?
- IoT実用化への号砲は鳴った (2017/4/27)
スタートの号砲が鳴ったようだ。多くのベンダーからIoTを使った実証実験の発表が相次いでいる。あと半年もすれば、実用化へのゴールも見えてくるのだろうか?
- スパコンの新しい潮流は人工知能にあり? (2017/3/29)
スパコン関連の発表が続いている。多くが「人工知能」をターゲットにしているようだ。人工知能向けのスパコンとはどのようなものなのか、最近の発表から見ていこう
System Insider 記事ランキング
本日
月間