CD廃棄時のデータ流出に注意

清水庸介
2002/01/05

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 CD-ROMやCD-Rなどの記録メディアを廃棄するときに、気をつけなければならないことが2つある。1つは、ゴミの分別である。CD-ROMなどが、不燃ゴミなのは間違いない。そのうえ、CD-Rにはシアン化合物などが含まれるため、焼却すると有毒ガスが発生する。もう1つは廃棄したCDを第三者に盗み読み出されないようにしなければならないことだ。雑誌の付録CD-ROMならば気にする必要はないが、社内向けの重要な資料を収めたCD-Rメディアや、パスワードの情報まで含まれるバックアップ用メディア(CD-R/RWやDVD-R/RWなど)を読み出し可能な状態で社外に流出するのを避けなければならないことはいうまでもない。廃棄処分したつもりのCD-Rから顧客情報が流失し、問題になっているケースもあるようだ。

 CDのようなメディアのデータを読み取り不能にするには、メディアに同心円状の傷をつける必要がある。放射方向の傷は、ドライブが備えるエラー訂正機能により比較的容易に修復されやすいし、リペア用のツールなどで簡単に修復できてしまうからだ。そこで目の粗い紙ヤスリなどを用意しておき、廃棄する際はメディアを紙ヤスリに対して円を描くようにこすりつけて傷をつけ、読み取り不能な状態になっているかチェックしてから廃棄する、という方法が考えられる。しかし、大量のCDを廃棄するときに、各ディスクごとにこの作業を行うのは、非常に面倒だ。

 そんなときに手軽にデータの機密を保持する手段として、日立マクセルの「CD-Poit」のようなツールを使うとよいだろう。これは、ノコギリのような刃でCDメディアの最内周にあるTOC(Table of Contents)部分に傷をつけることで、メディアを読み取り不能にすることができるものだ。TOC部分には、ディスク上に記録されているトラックの開始位置やその本数、データ領域の長さなどといった管理情報が記録されている。TOCが破壊されると、ドライブはデータの書き込まれたトラックの位置を特定できず、データを読み出せなくなる。このようにしてCD-Poitはデータの機密を守るわけだ。

日立マクセルの「CD-Poit」
コンパクトな直径5センチ程度の球形で、机の上でも邪魔にならない。この小さな存在に救われることがあるかも知れない。

 取り扱いはごく簡単で、CD-Poit本体にメディアを挟み込み、本体上部をメディアの円周方向に180度回転させるだけだ。これでTOCの書き込まれている最内周部分に、同心円上の傷が付く。

 注意が必要なのは、CD-Poitはメディアのデータ領域全体に傷を付けるわけではないので、高度な方法を用いれば、データを復元できる可能性があるということだ。また、マルチセッション・ディスクなどTOC部分以外に管理情報が存在するメディアでは、2番目以降のセッションが読み取れる場合があるので注意が必要だ。非常に重要な機密情報を含む場合は、TOC部分だけではなくデータ領域そのものまで破壊する別の処理方法を考えたい。

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CD-Poitの構造
CD-Poitの内側に設けられた合計16個の円形の刃が、メディアに対して同心円状に傷を付ける(左の写真)。実際に使うときには、右の写真のようにメディアをCD-Poitに挟み込んで回していく。その際、90度ごとにクリック感があり、どれだけ回したか数えられる。

 取扱説明書には、メディアの記録面/ラベル面のどちらに傷をつけるか特に指定はないが、記録面に傷をつけた場合、その表面の保護層を研磨することで個人レベルでも修復できてしまうこともあるため、ラベル面も傷付けたほうが効果的といえるだろう(なお、両面型のDVDメディアはかならず両面に傷をつける必要がある)。

 CD-Poitは約1万回使用可能で、実売価格は2000円弱である。完全にデータを消去できるわけではないが、手軽かつ低コストでメディアを読み取り不能にできるのが、CD-Poitのメリットといえる。第三者あるいは組織内における安易なデータの覗き見を防ぐために、利用を検討してみるとよいだろう。記事の終わり

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  関連リンク 
CD-Poitの製品情報ページ
 
「PC Hints」


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