ノートPC用内蔵ハードディスクを選ぶポイント

平野謙
2002/03/05

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 一般的にデスクトップPCに比べてノートPCの拡張性は制限されるが、それでも内蔵ハードディスクが交換できるよう設計されている機種は意外と多い。実際、メーカーによっては大容量ハードディスクを純正オプションとして用意していたり、あるいはサードパーティが特定のノートPCのアップグレード用ハードディスクを販売していたりすることもある。こうした場合は、単に容量や価格だけでハードディスクを選べるので簡単だ。

 しかし現実には、メーカー純正やサードパーティ製のアップグレード用ハードディスクが用意されていないノートPCの方が多い。この場合でも、エンド・ユーザーのレベルでハードディスク自体の交換作業が可能なら、PCショップなどで販売されているバルク品の2.5インチIDEハードディスクを利用してアップグレードする、という手がある。

[注意]

ハードディスクの交換作業の際、マニュアルに記されている範囲を超えてノートPCを分解すると、ベンダの無償保証が受けられなくなるほか、修理すら受け付けられなくなることがあります。ノートPCの分解作業はご自身の責任において実行してください。何らかの障害が発生しても、筆者および編集部では責任を負いかねます。

 しかし、純正オプションなどを使う場合と違い、バルク品のハードディスクは基本的に汎用品であり、その選択にはいくつか気を付けなければならないことがある。そこで本稿では、2.5インチIDEハードディスクのバルク品を選ぶ際、最も注意すべき点について簡単にまとめてみた。

■ハードディスクの厚さ(高さ)
 重要なポイントの1つとして、ハードディスクの「厚さ」が挙げられる。2.5インチIDEハードディスクの幅や奥行きはどの製品でもほぼ共通だが、厚さは数種類ある。したがってノートPCによっては、厚みのあるハードディスクは物理的に装着できないことがあるからだ。そこでまず、実際に測ってみたり、あるいは型番からメーカーのWebサイトにあるスペック表をチェックしたりして、元のハードディスクの厚さを調べよう。新たに購入するハードディスクは現在使っているものと同じ厚さのものがベストだ。元のハードディスクより薄いものでも物理的には装着できることが多いが、ハードディスク上面部分にすき間が空くため、耐衝撃性が低下する恐れがある。

■ネジ穴の位置
 次に確認しなくてはならないのが、ハードディスクに設けられているネジ穴の位置だ。この位置がハードディスク装着スロットや保護用カバーなどとうまく合わないと、PCに固定できないような事態も起こり得る。最近の製品ではネジ穴の位置はおおむね統一されているが、もし現在使っているハードディスクが比較的古い世代のもの(1999年より前に製造されたもの)なら、特に注意が必要だ。ショップの店頭で、実際に新しいハードディスクのネジ穴の位置を確認するとよい。

ハードディスクのネジ穴
赤い線で囲んだ枠がネジ穴である。このように両側面に2つずつ、また底面に4つ設けている製品が多いようだ。この位置が違うと、ハードディスクの固定が困難になる。

■消費電力
 意外と見落としがちなのが、この消費電力である。ハードディスクの消費電力の増加は、バッテリ駆動時間の短縮だけではなく、発熱量の増大も招く。ノートPCはデスクトップPCに比べ部品の実装密度が高いため、パーツの発熱量が増加するとケース内温度も高まりやすく、最悪ノートPCが故障したりするので、これは無視できない問題だ。スペック表の消費電力の欄をよく確認して、少なくとも新しいハードディスクの消費電力が元のハードディスクを超えないようにした方が無難である。

■回転速度
 発熱量という点では、ハードディスクのスピンドル・モータ(磁気ディスクを回しているモータのこと)の回転速度も重要な要素となる。この回転速度が速いほどハードディスクの性能も高くなるが、発熱量も増大する傾向があるからだ。現在は4200RPMの製品が多いが、一部5400RPMという高速な製品も出回っている。ハードディスクの速度向上のために、元のハードディスクより回転速度の速い製品の購入を検討している場合は、発熱量も増える可能性が高いことを考慮した方がよい。具体的には、やはり新旧ハードディスクの消費電力をスペック表で比較し、新しい方が古い方を超えないようにするとよい。

型番 MK4019GAX MK3019GAX MK2019GAX
フォーマット容量 40.0Gbytes 30.0Gbytes 20.0Gbytes
ディスク枚数 2枚 2枚 1枚
ヘッド数 4個 3個 2個
バッファ容量 16Mbytes
データ転送速度 100Mbytes/s
インタフェース ATA-5
回転数 5400RPM
外形寸法 9.5(高さ)×70(幅)×100(奥行)mm
質量 102g 102g 98g
電源電圧 5V
消費電力 平均リード・ライト時:2.5W
平均ローパワー・アイドル時:0.85W
エネルギー消費効率 (省エネ法による) 0.021W/Gbytes
(区分名:E)
0.028W/Gbytes
(区分名:E)
0.042W/Gbytes
(区分名:D)
耐衝撃性 動作時:1960m/s2(200G)
非動作時:7840m/s2(800G)
騒音 アイドル時:27dB/シーク時:33dB
ハードディスクのスペック表の例
9.5mm厚の東芝製2.5インチ・ハードディスクの主な仕様。赤文字で示した部分を特に気をつけたい。

 さらに細かい点や購入後の新旧ハードディスクのデータの移動方法については「特集:ノートPCのディスク環境まるごとアップグレード」を参照していただきたい。記事の終わり

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ハードディスクを購入したらすぐに実行すべきこと
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