プロダクト・レビュー
ビジネスでも使えるインクジェット・プリンタ「エプソン PM-900C」 澤谷琢磨 |
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PCと接続可能なカラー・プロジェクタの普及によって、PowerPointなどで作成した資料を直接プレゼンテーションで表示する機会が増えつつある。このような場合は、カラー表示を前提としたプレゼンテーション資料となることが多く、同時に配布する資料のカラー印刷がどうしても必要になる。特にグラフが多用されたプレゼンテーションでは、カラー印刷でなければ、折れ線グラフなどのデータが判別しにくい。 カラー・レーザー・プリンタの低価格化も著しいとはいえ、その多くが20万円以上する製品であり、気軽に導入できる価格ではない。頻繁にカラー印刷を行うならば、投資を回収することも可能だろうが、プレゼンテーション資料などの印刷で、たまにしか使わないのであれば、カラー・レーザー・プリンタはやはりまだまだ高価だ。 このような場合、低価格化/高機能化の進むコンシューマ向けのカラー・インクジェット・プリンタでカラー印刷が賄えるならば、あえてカラー・レーザー・プリンタを導入する必要はないかもしれない。そこで、今回はカラー・インクジェット・プリンタがビジネス用途でも利用可能なのかどうか、セイコーエプソンの「カラリオPM-900C」を取り上げ、検証してみたいと思う。 PM-900Cの主な特徴PM-900Cは、2000年冬のセイコーエプソンのインクジェット・プリンタ・ラインアップの中で、A4対応の最上位に相当する製品である。写真クオリティの印刷品質を向上させるため、2ピコリットルのインク滴(1440dpi印刷時)と、新たにダーク・イエローを加えた7色インクを採用している。機能面では、四辺フチなし全面印刷、CD-Rレーベルへの直接印刷、厚紙への印刷のサポートが新たに加えられた。もちろん、旧モデルのPM-800Cから採用されているロール紙印刷も、ロール紙の巻き取り操作を容易にするなどの改善が行われたうえ、引き続きサポートされている。豊富な専用紙が用意されることも、カラー・レーザー・プリンタとは異なる特徴としていえるだろう。 豊富な機能を備える付属ドライバインクジェット・プリンタは、ホストPC側で多くのイメージ処理が行わなければならないこともあって、ドライバの完成度が印字品質や速度、そして安定性に大きく影響する。この点エプソンは、インクジェット・プリンタ用ドライバの完成度が高いことで知られている。PM-900Cに付属するドライバ(バージョン5.1)は、写真印刷のクオリティを向上させるオートフォトファイン!4、インターネットで多用される低解像度グラフィックスの印刷品質を向上させるWebスムージングなど、印刷時の補正機能の充実が目立つ。 また、印刷品質とは直接関係しないが、PM-900Cのマニュアル(ユーザーズガイド)は、HTMLで作成されている。オンライン・ガイド化されているため、トラブルが発生した場合でもWebブラウザで参照が容易だし、イントラネットでの共有も行いやすい。 十分実用となるCD-Rレーベル印刷機能前述のとおり、オプションながらCD-Rレーベル面の直接印刷をサポートしたことが、PM-900Cの機能面における特徴の1つとなっている。編集部で試用した結果、CD-Rプリントキットの取り付けに多少手間がかかるのは難点だが、インクジェット用ホワイトレーベル(レーベル面への印刷が可能な白いレーベル面を持つもの)のCD-Rには非常にきれいな印刷が行えた。CD-Rプリントキット自体は、価格が2000円と、専用ソフトウェア(EPSON CD Direct Print)が付属するにもかかわらず、低価格に抑えられている。サンプルのデータなどをCD-Rで部外あるいは社外に配布するような用途が多い場合は、非常に有用な機能であると感じた。 CD-R専用トレイは、本体背面から挿入するのだが、これを取り付ける際にはプリンタ内部のローラー上にキット付属のスペーサーを取り付ける必要がある。マニュアル記載の手順どおりに作業しないと、取り付けるのは難しい。また、通常印刷時にはこのスペーサーを取り外す必要がある。一度セットしてみればコツはつかめるが、もう少し容易に取り付けられるような工夫を望みたい。 CD-Rプリントキットに付属する専用ソフトウェア「CD Direct Print」は、コーパスからOEM供給を受けた製品だ。凝った図形を作成するのは難しいが、手元にある画像を貼り付けたり、飾り文字を入力する程度のCD-Rラベルならば、CD Direct Printだけでレーベルの作成と印刷は完結できる。画像や文字を印刷するだけでも、CD-Rの見栄えは格段によくなる。なお、CD-Rプリントキットには、コーパスの「CDラベルプロダクション3」を優待販売価格(3800円、2001年1月中旬発売予定)で購入する権利が付与されている(コーパスの「CDラベルプロダクション3」の製品情報ページ)。こちらは、画像素材を大幅に増やしたうえ、MOディスクやビデオ・カセットのラベル印刷にも対応しているという。 エコノミー印刷ならば十分実用的な印刷速度PM-900Cの備える機能は確かに有用だが、印刷速度次第では、ビジネス用途には向かない可能性もある。そこで、実際の印刷速度を測定した。今回印刷テストに使用したのは、Platform 2000でAMI2が配布した、DDR SDRAMのプレゼンテーション資料である。グラフを多用しているうえ、論理回路図やプリント基板図など複雑な図形を含む、48ページのPDFファイルだ。これ以上複雑な図形を含む資料を印刷する機会は少ないと考え、実用上の最悪値の測定を目標として選択した。実験結果は次のとおりである。ここでは普通紙のデフォルト設定での印刷速度と、エコノミー印刷モードでの結果とを比較している。
エコノミー印刷モードで印刷すると、1枚あたりの印刷速度は6割近く向上した。しかし、当然のことではあるが、エコノミー印刷モードでは印刷クオリティが大きく低下する。そこで、次に推奨設定とエコノミー印刷モードでの印刷クオリティを比較した。
推奨設定の印刷結果は、「きれい」、「はやい」ともに満足できる品質だ。特に「きれい」での印刷結果は、ディスプレイ上での表示をほぼ再現できている。それに対し、エコノミー印刷モードの印刷結果は全体的に薄く、色の種類が判別できる程度にすぎない。ただ、印刷結果がぼやけたり、文字がかすれたりはしていないため、正確な色再現さえ要求しなければ、エコノミー印刷モードでも十分に実用的だ。印字テストや内部向け配付資料は、エコノミー印刷モードで印刷し、外部向け配布資料は推奨設定で印刷する、といった使い分けを行うとよいだろう。 モノクロ・プリント以外の汎用プリンタとして導入したい
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機種名 | PM-900C |
価格 | 6万9800円 |
URL | http://www.i-love- epson.co.jp/products/printer/inkjet/pm900c/pm900c2.htm |
問い合わせ先 | TEL:0570-00-4116 |
コントロール・コード | ESC/Pラスター |
印刷方式/解像度 | 最大1440×720dpi |
ノズル配列 | 各色96ノズル |
インタフェース | パラレル・インターフェイス/USB |
給紙容量(ASF) | A4:最大100枚(55kg紙)、ハガキ:30枚 |
インク | モノクロ・インク・カートリッジ+カラー・インク・カートリッジ(6色一体型) |
用紙 | 用紙サイズ:ハガキ〜A4縦/ロール紙:89/100/127/210mm幅 |
背面トレイ | CD-Rプリント・トレイ/単票紙:用紙厚0.4〜2.5mm/マットボード紙 |
消費電力 | 約18W |
外形寸法 | 493(W)×306(D)×183(H)mm |
重量 | 約7.2kg |
PM-900Cの主な仕様 |
関連リンク | |
PM-900Cの製品情報 | |
CDラベルプロダクション3の製品情報 |
「PC Insiderのプロダクト・レビュー」 |
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