特集 2.DVD-RAMの互換性問題 |
ディスク・フォーマットの違いによる性能
論理フォーマットを行えば、あとは通常のディスクと同様にファイルの書き込み、削除が行える。DVD-RAMであることを意識する必要はない。試しに、各フォーマットによる書き込み性能の違いを計測したのが下のグラフだ。UDF 1.02とUDF 2.0については、それぞれUDF 1.5とUDF 2.01と差がなかったため、グラフでは省略している。また、参考のためCD-RWで同様の計測を行った結果を載せている。CD-RWドライブは、リコーの「MP9120A(12倍書き込み、10倍書き換え、32倍速読み出し)」である。CD-RWのライティング・ソフトウェアは「Adaptec DirectCD 3.05」を使用した。テスト用PCはPentium III-800EB MHz搭載機で、IDEインターフェイスはUltra ATA/100対応、またOSはWindows 2000 Professional(Service Pack 2適用済み)である。
大きいファイルをデスクトップからDVD-RAMドライブへコピー(総ファイル・サイズ:150Mbytes/ファイル数:48個/フォルダ数:29個) |
FAT 16を除く、各DVD-RAMのディスク・フォーマットならびにCD-RWの性能差はほとんどないといってよい。FAT 16は、1パーティションで全ディスク容量がアクセスできないうえ、書き込み性能も低いことが分かる。 |
小さいファイルを大量にデスクトップからDVD-RAMドライブへとコピー(総ファイルサイズ:143Mbytes/ファイル数:12894個/フォルダ数:929個) |
大きなファイルでは、UDFとFAT 32の書き込み性能差はほとんどなかったが、小さなファイルの書き込みでは、2倍近い差ができてしまった。FAT 16では、さらに書き込み性能が落ちてしまっている。 |
これを見ると、UDFでは各リビジョン間での性能差はほとんどなく、FAT16はどちらのテストでも大幅に遅いことが分かる。FAT32は大きなファイルのコピーでは、UDFとそれほど性能が変わらないものの、小さいファイルを大量にコピーするテストでは、UDFに比べて2倍以上も遅くなっている。また、すべてのディスク・フォーマットでCD-RWに比べて遅いことが分かる。
以前のDVD-RAM関係の資料を見ると、大きなファイルではUDFが、小さなファイルではFATが性能面で有利であるという記述があったが、今回計測した結果では、どちらの場合もUDFの方が書き込み性能が高いようだ。これは、UDFのデバイス・ドライバが改善されているためと思われる。
DVD-ROMドライブとの互換性
こうして書き込みを行ったDVD-RAMディスクが、DVD-ROMドライブで読み出せるか気になるところだ。そこで、編集部内にあるいくつかのDVD-ROMドライブで読み出しが行えるかテストしてみた。その結果、残念ながらすべてのフォーマット(UDF、FATとも)で読み出しが行えなかった。DVD-RAM対応のDVD-ROMドライブが、1台もなかったことが原因だ。逆に言えば、明示的にDVD-RAM対応と書かれていないDVD-ROMドライブではDVD-RAMの読み出しが行えないと思った方がよいということになる。また、DVD-RAM対応のDVD-ROMドライブでも、カートリッジに入った状態で読み出しが行えるものは1台もない。そのため、Type Iの9.4Gbytesのディスクは、あくまでDVD-RAMドライブ専用メディアということになってしまう。DVD-RAMに対応した主なDVD-ROMドライブは、以下の表に記した程度である。これらは比較的新しい世代の製品であり、現在のところ普及しているとは言い難いことから、配布メディアとしてCD-R/RWなどのように使えないことが分かる。
ベンダ名 | 型番 | インターフェイス | 備考 |
松下電器産業 | KXL-CB10AN | CardBus対応PCカード | DVD-RAM対応、CD-R/RW書き込み可 |
松下電器産業 | LK-RV8587TZ | ATAPI | DVD-RAM、DVD-R対応 |
日立製作所 | GD-7500 | ATAPI | DVD-RAM、DVD-R対応 |
日立製作所 | GD-S200 | ATAPI(ノートPC向け) | DVD-RAM、DVD-R対応 |
アイ・オー・データ機器 | DVD-i16/US2 | USB 2.0 | DVD-RAM、DVD-RW、DVD-R対応 |
アイ・オー・データ機器 | DVD-AB16 | ATAPI | DVD-RAM、DVD-R対応 |
アイ・オー・データ機器 | DVD-i12RM/CI | ATA CardBus/16bit両対応PCカード | DVD-RAM、DVD-R対応 |
アイ・オー・データ機器 | DVDP-i8 | ATA CardBus/16bit両対応 PCカード | DVD-RAM、DVD-R対応 |
メルコ | DVD-ROM16FB | ATAPI | DVD-RAM、DVD-R対応 |
主なDVD-RAM対応DVD-ROMドライブ |
今回は、ビデオの書き込みについては試していないが、DVD-ROMドライブと同様、「DVD-RAM対応」と明示的に記されている民生用のDVDビデオ・プレイヤーでなければ再生できないと思った方がよいだろう。
DVD-RAMのメリット
ここまでDVD-RAMを見てきて、使いにくい面ばかりが目立ってしまったが、クライアントPC向けのバックアップ・デバイスという視点から見ると、唯一残された手軽なものであることが分かる。
ハードディスクの高容量化が進み、現在ではクライアントPCにおいても手軽にバックアップできるデバイスがなくなってしまった。ハードディスクのミラーリングなどによって、信頼性を高めるという手もあるが、こうした方法では、地震や火災などによるPC全体の物理的な破壊からデータを守ることはできない。やはり、リムーバブル・メディアによる何らのバックアップを行う必要があるだろう。DVD-RAMの4.7Gbytesという容量は、数十Gbytesという現在の平均的なハードディスク容量からすると、小さすぎてバックアップにならないような気がするが、クライアントPCのデータ領域(バックアップが必須なデータ量)であれば、4Gbytesもあれば十分なはずだ(4Gbytesをバックアップするのに約1時間かかるので、夜間にエージェント・ソフトウェアなどを使って自動的に行う必要があるだろう)。
4.7Gbytesのデータ記録が行える安価なリムーバブル・デバイスは、DVD-RAMとDVD-R、DVD-RWしかない。このうち、DVD-Rは1回の書き込みしか行えないため、バックアップ用途にはあまり向かない。また、DVD-RWは1000回しか書き換えが行えないため、バックアップ用途には不安が残る。それに対し、DVD-RAMは10万回の書き換えをサポートするため、比較的長期間に渡って、ディスクを使いまわせる。また、信頼性の点でも、10万回の書き換えをサポートするDVD-RAMの方が安心感がある。
前述のように、DVD-RAMは配布メディアとしては、現在のところ使いにくいが、バックアップ用途であればDVD-RAMドライブを搭載したPCで読み書きできればいいので問題がない。また、メディアは4.7Gbytesのカートリッジなしで1600円程度と、CD-RWなどと比べると安価とはいえないが、数枚をローテーションして使うには無理のない価格だ。
期待はDVD Multiか
以上をまとめると、書き換え型DVDの最大の問題は、
- 規格が乱立していること
- ドライブ・レターが2つに見えること(OSサポートの弱さ)
- サポートするディスク・フォーマットが多すぎること
- DVD-ROMドライブとの互換性が低いこと
- 書き込み性能が低いこと
といったことに代表される。このうち、ドライブ・レターとディスク・フォーマットの点は、デバイス・ドライバの改善と標準化によってすぐにでも解決できる問題だ。また、書き込み性能については、ドライブ自体の高速化など、世代が進めば自然と解決するだろう。
問題は、規格の乱立と、DVD-ROMドライブとの互換性の低さである。実は、DVDの規格を策定しているDVD Forumもこの点を認識している。現在、DVD Forumでは、「DVD Multi」と呼ぶ、DVD-R、RW、RAMの3種類の読み出しが行えるDVD-ROMと、書き込み型DVDの規格策定を行っている。DVD Multiに規格が統一されれば、規格の混乱やDVD-ROMと書き込み型DVDとの互換性の問題がすべて解決するはずだ。ただ、DVD Multiの規格化はあまり進んでいないようで、2001年2月にDVD FLLC(DVD Format Logo Licensing Corpration)から「DVD MULTI SPECIFICATIONS PRODUCT REQUIREMENTS Version 0.9」が発表されて以来、動きがない。このまま既存のDVD-ROMドライブや民生用DVDプレイヤが出荷され続けると、例えDVD Multi対応製品が登場しても、標準にならなくなってしまう可能性もある。
また、一方でDVD Forumとは別にDVD-ROM互換の書き換え型DVD規格を策定しているDVD+RW AllianceがDVD+R/RWドライブを年内にも出荷開始する予定となっている。すでに世界最大のPCベンダ、デルコンピュータがDVD+RWドライブの採用を決めていることから、このままでは本家であるDVD-RAMが標準規格でありながら、業界標準(デファクト・スタンダード)でないという「おかしな」ことにもなりそうだ。
まだまだDVD規格の混沌は続きそうだが、それは先行する本家のDVD-RAMの「デキの悪さ」が最大の原因になっているように感じる。メーカーには、上述のDVD-RAMの使いにくい点を早急に改善し、使いやすいものをぜひとも作っていただきたい。
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[特集]DVD-RAMドライブの実像 | ||
1.DVD-RAMドライブの使い勝手 | ||
2.DVD-RAMの互換性問題 | ||
「PC Insiderの特集」 |
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