特集 3.IDE RAIDの性能を測る |
IDE RAIDの性能
実際にRAIDの構築ができたところで、参考のためデータの読み出し/書き込み性能がどの程度なのか測ってみた。比較したのは、
- FastTrak TX2000のIDE 1(プライマリIDEポート)とIDE 2(セカンダリIDEポート)にそれぞれ1台ずつハードディスクを接続した場合
- FastTrak TX2000のIDE 1に2台とも接続した場合
- オンボードのセカンダリIDEポートに1台のハードディスクを接続した場合(単体のハードディスクでRAIDを構成していない場合)
の3種類だ。テストは、Windows 2000がインストールされているIDE 1のマスタに接続されたハードディスクと、それぞれのハードディスクへの1Gbytesのファイルの書き込み/読み出しを計測するという単純なものだ。結果は、以下のグラフのとおりである。
RAID 1の性能比較 |
RAID 1のIDE 1とIDE 2のマスタに接続したのが「RAID 1(マスタ/マスタ)」、IDE 1に2台のハードディスクを接続したのが「RAID 1(マスタ/スレーブ)」、オンボードのセカンダリIDEポートに1台のハードディスクを接続したのが「単体」である。 |
意外なのは、FastTrak TX2000のIDE 1とIDE 2のそれぞれに各ハードディスクを接続した場合よりも、IDE 1に2台とも接続した場合の方が書き込み性能が高いことだ。IDEコントローラがIDE 1とIDE 2で別々に並列で動作するのならば、むしろそれぞれのポートにハードディスクを接続した方が速くなると予想していたのだが、結果は逆となった。これは、IDEコントローラが別々に動くよりも、IDEコントローラ内のキャッシュが有効に働いたことで、単一ポートに2台接続した方が速くなったのかもしれない。読み出し性能は、3種類の構成で大きな差はない(1秒以内)ことから、FastTrak TX2000でRAID 1を構成する場合、単一ポートに2台接続するのが性能的にはメリットがあることが分かった。
次に耐障害性についても調べてみた。テスト中に偶然故障が発生することは期待できないので、稼働中にRAID 1を構成している一方のハードディスクのIDEケーブルを抜くことで故障をエミュレーションしてみた。抜いた時点でIDE RAIDカードのデバイス・ドライバがエラーを表示するなどの反応を期待したのだが、残念ながら何も起きず、データの書き込みはもう1台のハードディスクに対し正常に行われた(実際にハードディスクが書き込みエラーを発生するような故障が生じた場合は、何らかの表示を行う可能性もある)。この状態でシステムの再起動を行うと、FastTrak TX2000のBIOSがエラーを表示するので、ユーザーはディスクを交換し、RAIDの再構築(Rebuild)を行う必要がある。RAID 1の再構築には、テストに用いた40Gbytesのハードディスクで50分ほどかかった。セクタ・レベルでの完全なコピーを行うため、ハードディスクの容量が大きくなると再構築にはさらに時間がかかるものと思われる。FastTrak TX2000では、残念ながらWindowsを稼働した状態でのRAIDの再構築をサポートしていない。そのため、再構築が完了するまでPCを利用できない。低価格IDE RAIDカードでは、このような仕様になっているのが多いようだ。一般的にハードディスクの容量は大きい方が便利だが、RAID 1を構築する場合は、再構築の時間なども考慮して容量を選択する必要があるだろう。
なおFastTrak TX2000では、Windows上からRAIDの状態を確認できるユーティリティ「Promise Array Management Utility」が付属するので、これを使うことでエラーの発生などが検知可能だ。このユーティリティを使えば、ネットワークを介してサーバのRAIDコントローラをリモート環境からチェックすることも可能だ。
FastTrak TX2000のユーティリティ |
リモートでRAIDの状態を確認できる。故障したハードディスクは、赤で×が表示される。 |
今回は、FastTrak TX2000を例に低価格IDE RAIDカードによるRAID 1の構築を見てきた。ハードディスクの信頼性は向上するものの、読み出し性能の向上は期待できないことが分かった。また、故障時のエラー診断処理などは、低価格ゆえに貧弱であるという印象も受けた。過度の期待はせずに、あくまでハードディスクの信頼性向上の一手段として導入を検討するのが望ましいと思われる。
INDEX | ||
[特集]IDE RAID実践導入術【低価格IDE RAIDカード編】 | ||
1.最新IDE RAID事情 | ||
2.IDE RAIDの構築手順 | ||
3.IDE RAIDの性能を測る | ||
「PC Insiderの特集」 |
- Intelと互換プロセッサとの戦いの歴史を振り返る (2017/6/28)
Intelのx86が誕生して約40年たつという。x86プロセッサは、互換プロセッサとの戦いでもあった。その歴史を簡単に振り返ってみよう - 第204回 人工知能がFPGAに恋する理由 (2017/5/25)
最近、人工知能(AI)のアクセラレータとしてFPGAを活用する動きがある。なぜCPUやGPUに加えて、FPGAが人工知能に活用されるのだろうか。その理由は? - IoT実用化への号砲は鳴った (2017/4/27)
スタートの号砲が鳴ったようだ。多くのベンダーからIoTを使った実証実験の発表が相次いでいる。あと半年もすれば、実用化へのゴールも見えてくるのだろうか? - スパコンの新しい潮流は人工知能にあり? (2017/3/29)
スパコン関連の発表が続いている。多くが「人工知能」をターゲットにしているようだ。人工知能向けのスパコンとはどのようなものなのか、最近の発表から見ていこう
|
|