ノートPCのディスク環境まるごとアップグレード コラム
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CardWare 2000にはDR-DOSで起動するDOSフロッピーが付属している。しかし、ノートPCによっては正常に起動できない場合があるほか、DR-DOSはFAT32や8.4Gbytesを超えるボリュームを扱えないといった弱点もある。本稿ではWindows 2000環境を対象としているが、もしアップグレード対象のノートPCがWindows 95/98/98SE環境なら、DR-DOSの代わりにWindows 9x*1に含まれるDOSを利用して起動フロッピーが作成できる。
*1 本コラムにおける「Windows 9x」とは、Windows Meを除くWindows 95/98/98SEを指す。このうち、FAT32や8.4Gbytesを超えるボリュームを扱えるのは、Windows 95 OSR2以降のものだ。 |
CardWare 2000付属のマニュアルには、Windows 9xがインストールされたPCにおいてPCカードを認識できるWindows 9x版DOS起動フロッピーを作成する方法が記されている。しかし、こうしたDOS起動フロッピーが必要になるのは、得てしてノートPCにインストールしてあるWindows 9xが起動できない場合だ。そこで、本コラムでは、Windows 9xのリテール・パッケージ版とOEM版のそれぞれについて、インストールCDから起動フロッピーを作成する方法を紹介しよう。実際に確認したのはWindows 98/98SEだが、Windows 95でもほぼ同じ方法で通用するはずだ。
リテール・パッケージ版ではインストール用フロッピーをコピーする
パッケージ版のWindows 9xには、インストール時の起動用フロッピーが付属している。このフロッピーには、本稿で必要なファイルがすべて含まれている。起動用フロッピーそのものに改変を加えるわけにはいかないので、最初に別のフロッピーにディスク・コピーして、そのフロッピーに対して作業を行う。フロッピーのディスク・コピーはWindowsのエクスプローラ上から実行できるし、またコマンドラインからdiskcopyコマンドを実行してもよい。
コピーが完了したら、CardWare 2000の必要とする以下のファイルのみを残して、ほかはすべて削除する。
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IO.SYSとMSDOS.SYSには不可視属性が設定されているため、エクスプローラの[ツール]−[フォルダ オプション]−[表示]−[すべてのファイルを表示する]が無効だと、これらのファイルは表示されないので気を付けよう。
次にCardWare 2000付属の起動フロッピーにある\CARDWAREフォルダと\DOSCARD.EXEファイルを、新規作成したWindows 9x版起動フロッピーにコピーする(パスは同じまま)。さらに、\DOSというフォルダを新規作成し、\HIMEM.SYSをこのフォルダに移動する。
残る作業は、CONFIG.SYSとAUTOEXEC.BATというDOSの初期化設定ファイルの作成だ。デバイス・ドライバを組み込んだり、プログラムを自動実行したりする場合には、この2つのファイルを起動フロッピーのルート・フォルダに作成しておく必要がある。
CardWare 2000付属の起動フロッピーには、MS-DOS向けの設定ファイルのひな型として、config.cwMとautoexec.cwMの2つのファイルが用意されている。これらはWindows 9x版DOS起動フロッピーにも利用できるので、それぞれCONFIG.SYSとAUTOEXEC.BATというファイル名で、新しいWindows 9x版起動フロッピーにコピーする。なお、CardWare 2000側のフロッピーには、これらとは別にCONFIG.SYSとAUTOEXEC.BATが存在するが、これはDR-DOS用の設定ファイルなのでコピーしてはいけない。
コピーした初期化ファイルのうち、CONFIG.SYSの方は以下のように修正する必要がある。
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CONFIG.SYS(config.cwM)の修正個所 | |
このようにconfig.cwMをコピーして作成したCONFIG.SYSにて、EMM386.EXEを組み込むDEVICE文の行頭に「rem」を挿入し、その組み込みをやめる。これはフロッピーの容量不足のため、EMM386.EXEを起動フロッピーに格納できないからだ。EMM386.EXEを組み込まなくても、CardWare 2000のPCカード・サポート・ソフトウェアは正常に動作した。 |
以上で、Windows 9xリテール・パッケージ版からの起動フロッピー作成は完了である。
OEM版Windows 9xではインストールCD-ROMから起動する
PCハードウェアに添付されて出荷される、いわゆるOEM版のWindows 9xは、PCを起動できるインストールCD-ROM(ブータブルCD-ROM)で提供される。その代わり、起動用フロッピーは添付されないことがあり、リテール・パッケージ版のような方法が必ず使えるとは限らない。そこで、インストールCD-ROMからいったんDOSを起動してから、起動フロッピーを作成する。
OEM版Windows 9xのインストールCD-ROMからPCを起動すると、最初にハードディスクとCD-ROMのどちらから起動するかを選択するメニューが表示されることがある(下の画面)。ここでは、CD-ROMからの起動を選ぶ。
起動デバイスを選択するメニュー |
OEM版Windows 9xのインストールCD-ROMからPCを起動すると、このようにハードディスクとCD-ROMのどちら側を起動デバイスとするか、選択を求められることがある。「2. Boot from CD-ROM」を選択すると、インストールCD-ROMから起動する。 |
CD-ROMからの起動を選択すると、続いてWindows 9xを起動するモードを選択するメニューが表示される(下の画面)。ここでは、CD-ROMにアクセスできる状態で起動する必要がある。
Windows 9xの起動モードを選択するメニュー |
1は、Windows 9xのインストールを自動実行するモードで、2はCD-ROMドライブをアクセス可能にする起動モード、3は逆にアクセスできない状態で起動するモードだ。起動後にインストールCD-ROMをアクセスする必要があるので、ここでは2を選ぶ。 |
CD-ROMドライブのデバイス・ドライバが無事組み込まれると、コマンド・プロンプトが表示される直前に、CD-ROMドライブに割り当てられたドライブ名が表示される(下の画面)。このドライブ名が分からないと次の作業に移れないため、必ずメモしておこう。
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CD-ROMドライブのドライブ名 | |
このように、コマンド・プロンプトの表示直前に、CD-ROMドライブに割り当てられたドライブ名が表示される。この例ではD:というドライブ名が割り当てられているのが分かる。 |
このように起動可能なCD-ROM(ブータブルCD-ROM)から起動した場合、注意が必要なのはフロッピードライブのドライブ名だ。通常割り当てられるA:は、インストールCD-ROMに含まれる仮想的な起動フロッピーに割り当てられる。この場合、実際のフロッピードライブには、B:が割り当てられる。
次に、これから作成する起動フロッピーのために空のフロッピーを用意し、フロッピードライブに挿入する(これはB:でアクセスできるはずだ)。そしてフォーマットを行い、起動に必要なシステム・ファイル(IO.SYSとMSDOS.SYS、COMMAND.COMなど)とブート・セクタ用の起動コードをBドライブに転送する。この作業は、/sオプションを付けてFORMATコマンドを実行すればよい。FORMATコマンドはAドライブに存在せず、インストールCD-ROM内から起動する必要がある。具体的には、次のようにコマンドを入力して、CD-ROM上のFORMATコマンドを実行する。
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フロッピーのフォーマットとシステムの転送 | ||||||||||||||||||
FORMATコマンドでフォーマットと同時にシステムも転送するのがポイントである。 | ||||||||||||||||||
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これでBドライブのフロッピーには、システム・ファイルが転送された。あとはリテール・パッケージ版で説明したのと同じく、CardWare 2000から必要なファイルをコピーし、CONFIG.SYSとAUTOEXEC.BATをコピーおよび修正すれば、PCカードを認識できるWindows 9x版起動フロッピーは完成である。
INDEX | ||
[特集]ノートPCのディスク環境まるごとアップグレード | ||
1.アップグレード方法を決める | ||
2.セットアップ前に確認すべきこと | ||
3.コピーに必要な機材をそろえる | ||
4.ハードディスクのセットアップ | ||
5.ハードディスク間コピーの準備と実行 | ||
コラム:PCカードを認識できるDOS起動フロッピーの作り方 | ||
「PC Insiderの特集」 |
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