ノートPCのディスク環境まるごとアップグレード 5.ハードディスク間コピーの準備と実行澤谷琢磨
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ここまででハードウェアのセットアップは完了したので、次はソフトウェアのセットアップに移ろう。ポイントは、PCカード接続の外付けハードディスクがDriveCopy 3.0から正常に認識されるように設定することだ。
PCカード接続の外付けハードディスクを認識させる
まずは、HardDisk StationがDOS上で認識されることを確認しよう。ノートPCとHardDisk StationをPCカードで接続してから、CardWare 2000付属のフロッピーでノートPCを起動してみると、PCカードの種類(ATAかSCSI)を選ぶメニューが表示されるので「1... CardWare 2000 load with ATA Card」を選択する。正常にブートできれば、デバイス・ドライバの初期化メッセージなどが表示された後、コマンド・プロンプトが現れるはずだ(表示は英語モード)。そこでdoscard.exeというCardWare 2000付属のコマンドを以下のように実行すると、HardDisk Stationが認識されているかどうかが明らかになる。
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doscard.exeによるHardDisk Stationの認識結果 | ||||||
doscard.exeは、装着されているPCカードに関する各種情報を表示するプログラムだ。上記は、HardDisk Stationを接続した状態で、詳細表示(/d)とスロット0(/s:0)のオプションを付けてdoscard.exeを実行して表示された内容である。 | ||||||
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もしHardDisk Stationが認識されていれば、このようにPCカードの情報が表示されるはずだ。また、HardDisk Stationに組み込んだ元のハードディスク内に、DOSからファイル・アクセスの可能なファイル・システムがある場合は、DIRコマンドなどでそのドライブ(上記の例ではC:)の内容を表示できるはずだ。
正常にDOSが起動できないときは?
CardWare 2000の起動フロッピーには、CalderaのDR-DOS Ver.7.02という互換DOSが組み込まれている。さらに、ATA対応PCカード接続のストレージを利用するのに必要なドライバも、自動的に組み込むよう設定されている。そのため、トラブルなしでブートできれば、上記のように何も変更することなく、PCカード接続の外付けハードディスクを認識させることが可能だ。
しかし残念なことに、ノートPCによってはCardWare 2000の起動フロッピーで正常に起動しないものがある(下の画面)。
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起動に失敗した場合に表示されるメッセージ | |
特定のノートPCでは、このようにHIMEM.SYSというメモリ管理ドライバの組み込みに失敗し、正常にDOSが起動できない。これはDR-DOS付属のHIMEM.SYS特有の問題のようだ。正常に起動できないノートPCのリストは、製品に付属しているほか、ネットジャパンのWebサイトにも掲載されている。 |
ここでトラブルのもとになっているHIMEM.SYSというドライバは、DOSに深く依存しているため、DR-DOSをあきらめて、別の種類のDOSを利用せざるを得ない。つまり、MicrosoftのMS-DOSやIBMのPC DOS、あるいはWindows 9xの起動フロッピーと、CardWare 2000のPCカード関連のデバイス・ドライバを組み合わせて、新たな起動フロッピーを用意しなければならないのだ。
起動フロッピーの作成で特に面倒なのは、CONFIG.SYSとAUTOEXEC.BATというDOSの起動をつかさどる2つのテキスト・ファイルの作成である。これについては、CardWare 2000に付属のマニュアルにCONFIG.SYSとAUTOEXEC.BATの記述例が記載されているほか、付属の起動フロッピーにもMS-DOS向けのファイルが収録されている。この記載例に従って、CONFIG.SYSとAUTOEXEC.BATを作成する。
Windows 9xのライセンスが利用できるのなら、Windows 9xをベースに起動フロッピーを作成するのが、最も現実的だろう。その方法については、コラム「PCカードを認識できるDOS起動フロッピーの作り方」にまとめたので、そちらを参照していただきたい。
DriveCopy 3.0の起動方法
DOSの起動フロッピーでPCカード接続の外付けハードディスク(HardDisk Station)が認識できたら、後はDriveCopy 3.0を起動してハードディスク間コピーを実行するだけだ。
DriveCopy 3.0を起動するには、コマンド・プロンプトが表示された状態でDOS起動フロッピーを引き抜き、DriveCopy 3.0の3枚組起動フロッピーのうち、2枚目を挿入して、
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と入力・実行する(DriveCopy 3.0の起動フロッピーの作成方法などは、「特集:ディスク環境まるごとアップグレード」の「3.DriveCopyでハードディスクをコピーする」を参照していただきたい)。そして画面の指示どおり 、DriveCopy 3.0の3枚目の起動フロッピーに入れ替えていくと、DriveCopy 3.0が起動する。
DriveCopy 3.0起動時のエラー・メッセージについて
結論からいえば、ここでは[いいえ]を選ぶべきである。エラーの原因は、ノートPC内蔵のディスクBIOSと、CardWare 2000付属のPCカード用デバイス・ドライバが提供するディスクBIOSの間で、ハードディスクをアクセスするためのアドレッシング方式に相違があることだ。ここでいうアドレッシング方式とは、CHSパラメータというシリンダ(Cylinder)/ヘッド(Head)/セクタ(Sector)という3種類のパラメータを用いて特定のセクタを指定する方式を指す。コピー元ハードディスクのパーティションは、ノートPC内蔵のディスクBIOSが提供するCHSパラメータをベースに作成される。一方、DriveCopy 3.0実行時、コピー元ハードディスクはHardDisk Stationに収納され、CardWare 2000側のディスクBIOSの管理下にある。その結果、パーティション作成時とDriveCopy 3.0実行時でCHSパラメータの不整合が生じてしまい、上記のようにエラーとして扱われてしまうのである。 しかし実際のところ、HardDisk Station側でパーティションを操作しない限り、上記のエラーは悪影響を及ぼさない。むしろ、上記エラー・メッセージにて[はい]を選んでパーティションを「修正」する方が危険である。コピーが終了して新しいハードディスクでシステムが正常に稼働するまで、元のハードディスクの内容はバックアップとして維持すべきだが、ここでいう「修正」とは、元のハードディスクのパーティション情報を書き換えることであり、バックアップを損なう可能性があるからだ。 ディスクBIOS間のパラメータ不整合が悪影響を及ぼすのは、ハードディスクの配置を本稿とは逆、つまり元のハードディスクをノートPC側に残したまま、新しいハードディスクをHardDisk Stationに収納してDriveCopy 3.0を実行した場合だ。実際にこの構成でコピーを試したところ、新しいハードディスクからWindows 2000が起動できないというトラブルが生じた(ブート・ローダのあるパーティションのファイル・システムがFAT32の場合)。パーティションを作成したときと異なるディスクBIOSの管理下でハードディスクを運用しようとすると、こうしたトラブルが生じる可能性があることは覚えておきたい。 |
DriveCopy 3.0起動後のコピー作業手順は、「特集:ディスク環境まるごとアップグレード」の「3.DriveCopyでハードディスクをコピーする」に記したものと同じである*1。コピー元/コピー先も同じで、「ディスク2」がコピー元、つまりHardDisk Station側(PCカード接続の外付けハードディスク)で、「ディスク1」がコピー先、つまりノートPC内蔵ハードディスクである。
*1 コピー元のハードディスクにインストールしたWindows 2000にService Pack 2を適用している場合、2001年7月上旬の時点でDriveCopy 3.0ではNTFSのパーティションをコピーできないようだ。DriveCopy 3.0の開発元であるPowerQuest社のサポート情報ページによれば、DriveCopy 3.0を含む同社製ユーティリティにて、Windows XPベータ版やSP2を適用したWindows 2000のNTFSパーティションをコピーまたは操作しようとすると、1527番のエラーが発生するという。この問題を解消するには、PowerQuestから対応パッチか新バージョンが提供されるのを待たなければならない。 |
DriveCopy 3.0によるコピーが完了したら、必ず外付けハードディスクを外した後で、内蔵の新しいハードディスクからOSをブートしてみよう。正常にコピーできていれば、一見した限りではコピー作業前と変わらないソフトウェア環境が現れるはずだ。後は、Windowsのエクスプローラから各ドライブの空き容量が増えていることを確認すればよい。注意が必要なのは、Windows 2000環境では最新ハードディスクが持つ性能を完全には発揮できない場合があることだ。これについては、「PC TIPS:IDEハードディスクの転送モードにかかわるトラブルを解決するには?」を参照していただきたい。
リスクもあるけど見返りも大きいノートPCのディスク・アップグレード
ノートPCにおけるハードディスクの交換には、少なからずリスクがつきまとう。交換作業はデスクトップPCと比べて難しく、作業中にほかのパーツを壊してメーカー修理へ出さざるを得なくなったりすることもあり得る。また、本稿のようにPCショップから安価にハードディスクを購入する場合、対象のノートPCにおける動作保証がないので、交換作業自体は完了しても、微妙な仕様の違いなどにより正常に稼働しない可能性も否定できない。
しかし、アップグレードに成功したときの見返りも大きい。数Gbytesから文字どおり「桁違い」の10Gbytes〜30Gbytesに容量が向上するのは当然として、ほかにも恩恵はある。例えば、最新のハードディスクでは「流体軸受け」という最新技術を用いてモータから生じる騒音を小さくしているほか、シーク速度を抑えて騒音レベルを下げる動作モードを備えた製品もあり、静粛性が高まっている。性能面でも、ここ数年で2.5インチ・ハードディスクは転送レートが大きく向上しているし、大容量ディスクでは内部バッファ・メモリの容量も増えている。ノートPCのディスク・インターフェイスにも依存するが、体感できる程度にディスク性能が向上する可能性もあるのだ。
いわばハイリスク・ハイリターンであるノートPCのハードディスク・アップグレードだが、交換作業にかかる費用もそれほど高くはなく、しかも交換用ハードディスクの市販価格もまだまだ下がり続けている。アップグレードの敷居はそれほど高いものではない。日々、ノートPCのディスク容量不足に悩まされ、泣く泣くファイルの削除を繰り返しているならば、挑戦する価値はあるのではないだろうか。
関連記事(PC Insider内) | |
ディスク環境まるごとアップグレード 3.DriveCopyでハードディスクをコピーする |
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IDEハードディスクの転送モードにかかわるトラブルを解決するには? |
関連リンク | |
CardWare 2000 for DOSの対応機種確認リスト | |
Windows XPとWindows 2000 SP2の環境におけるDriveCopyのエラー情報 |
INDEX | ||
[特集]ノートPCのディスク環境まるごとアップグレード | ||
1.アップグレード方法を決める | ||
2.セットアップ前に確認すべきこと | ||
3.コピーに必要な機材をそろえる | ||
4.ハードディスクのセットアップ | ||
5.ハードディスク間コピーの準備と実行 | ||
コラム:PCカードを認識できるDOS起動フロッピーの作り方 | ||
「PC Insiderの特集」 |
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