SOHO専用サーバのお手軽度

4.多機能より管理の容易さを優先

デジタルアドバンテージ
2000/12/05

ET-NAS20Gの持つそのほかの機能

 ファイル/プリンタ共有やインターネット接続共有という主要な機能以外についても、ET-NAS20Gには管理の手間をなるべく省くという設計思想が随所に見られる。そうした機能を以下に記そう(画面は、すべてクライアントPCからWebブラウザで表示されたもの)。

定期的なハードディスク検査機能

ハードディスク内のファイル・システムの整合性が維持されているか、また不良セクタはないかを検査できる機能。Windowsでいうscandiskやchkdskと同様の機能である。毎日あるいは週末という具合にスケジュールを組んで自動実行できる。

自動シャットダウン/リブート機能とハードディスク停止機能

サーバ利用者のいない時間帯の電力消費を抑えるには便利な機能である。欲をいえば自動的に起動する機能も欲しいところだ。
  毎日あるいは週末の決まった時間に自動でシャットダウン/リブートできる。
  タイマを利用して指定時間後に自動でシャットダウン/リブートできる。
  ハードディスクへのアクセスが途絶えてから、指定した時間が経過したらハードディスクのスピンドル・モータ(記録ディスクを回転させるモータ)を停止できる。

システムのログ機能

起動やシャットダウンなど重要なイベントはハードディスクに記録されており、管理者はクライアントPCから参照できる。ただし、記録されるイベントの種類はそれほど多くない。
  これはリセット・ボタンが押されて、パスワードとIPアドレスが初期化されたことを表している。

システム・プログラムのアップグレード

本機のシステム・ソフトウェアをアップグレードするには、ベンダのWebページよりアップグレード・モジュールをダウンロードし、この画面から組み込む。
  このボタンを押すと、指定したファイル(アップグレード・モジュール)がクライアントPCから本機へ送信される。


機能・拡張性と管理コストのトレード・オフ

 ET-NAS20Gを使って感じたのは、機能や設定を適度に簡素化することにより、なるべく管理の手間を少なくする、つまり管理コストの削減を重視しているということだ。すでに記したように、ファイル共有やインターネット接続共有では、Windows PCやダイヤルアップ・ルータに比べ、機能が限定されている部分もある。しかし、機能を限定しているがゆえに、変更すべき設定項目も少ないので、初期設定でもその後の運用でも、管理は容易になる。つまり、管理コストを下げるという目的のために、SOHO向けという枠の中で必要度の低い機能を省いていった結果なのだろう。またET-NAS20Gはハードディスクを増設できないが、それは2台のハードディスクを管理する手間は必要ない、ということでもある。つまり拡張性を高めるより、管理コストの低減を優先しているわけだ(もちろん、増設ドライブ・ベイを設けると製造コストも高まるので避けた、という理由もあるだろうが)。

■意外に異なるSOHO向けアプライアンス・サーバの仕様

 こうした管理コスト優先の傾向は、アプライアンス・サーバにおける最大の特徴である。一般にコンピュータ関連機器では、機能や拡張性・汎用性を向上させるほど、その管理・運用には手間がかかる傾向があり、どちらをどれくらい重視するかで製品の性格が大きく変わる。PCサーバは明らかに機能や拡張性・汎用性を重視しているほうだ。逆にアプライアンス・サーバは、特定の用途に合わせて機能や拡張性などを絞り込むことで、管理コストを抑えることを重視しているわけだ。

 しかしSOHO向けのアプライアンス・サーバ分野に限定してみると、機能・拡張性と管理コストのバランスの取り方は、製品によって意外に異なる。ここでは、SOHOで利用できるアプライアンス・サーバの例として、ET-NAS20Gを含む4機種のスペックを比べてみた(下表)。

製品名
Altos SA50
PLASMA2000
OpenBlockS
ET-NAS20G
ベンダ
標準価格
12万9800円より
9万8000円(参考価格)
4万9800円
9万8000円
サーバ・サービス
ファイル共有(PC)
○(FTP)
○(SMB)
○(FTP)*1
○(SMB)
ファイル共有(Macintosh)
○(FTP)
○(AppleTalk)
○(FTP)*1
○(AppleTalk)
プリンタ共有
インターネット接続共有
オンデマンド・ダイヤルアップ接続
*1
DHCPサーバ
DNSサーバ
*1
Webサーバ
*1
FTPサーバ
*1
メール・サーバ
*1
プロキシ・サーバ
リモート・アクセス・サーバ
*1
セキュリティ/管理機能
パケット・フィルタリング手動設定
Webブラウザ経由の設定
ログ機能
ハードウェア仕様
ストレージ
HDD 10Gbytes×1台(最大2台)
HDD 15Gbytes×1台
オプション(2.5インチHDD、コンパクト・フラッシュ)
HDD 20Gbytes×1台
ミラーリング
オプション
メモリ
64Mbytes(最大256Mbytes)
64Mbytes
16Mbytes
32Mbytes
LANインターフェイス
100BASE-TX/10BASE-T×1
10BASE-T×1
100BASE-TX/10BASE-T×1
100BASE-TX/10BASE-T×1
WANインターフェイス
10BASE-T×1、シリアル・ポート×1、アナログ・モデム×1
シリアル・ポート×1
10BASE-T×1、シリアル・ポート×1
シリアル・ポート×1
プリンタ・ポート
シリアル・ポート
そのほか
搭載OS
Linux(ROM内蔵)
Linux
Linux(ROM内蔵)
Linux
表示デバイス
LCD、ステータス用LED
ステータス用7セグメントLED、ストレージ・アクセス用LED
ステータス用LED
外形寸法
95(W)×360(D)×300(H)mm
290(W)×225(D)×53(H)mm
84(W)×118(D)×51(H)mm
210(W)×271(D)×66(H)mm
備考
HDDを30Gbytesにした上位モデルもあり。 *1 オプションのストレージが必要。  
SOHOで利用できるアプライアンス・サーバの例

 この表から、日本エイサーのAltos SA50は、多機能や拡張性を重視した設計であることが分かる。ハードディスクは2台目を増設できるほか、アナログ・モデムを内蔵し、さらにケーブル・モデムやADSLモデムも外付けできるくらいだ。ぷらっとホームのOpenBlockSは、標準ではローカル・ルータ(ブロードバンド・ルータ)程度の機能しかないが、ストレージを組み込むと、さまざまなインターネット向けサーバ・サービスが利用できるようになる。さらに、ユーザーが作成したアプリケーションまで実装できる。

 ET-NAS20Gをこの3機種と比べると、Webサーバなどインターネット向けサーバ・サービスをほとんど備えていないことに気付く。こうしたサービスは、ISPが提供するサービスかLANにつながった別のサーバ・マシンに任せる、というのがET-NAS20Gの設計ポリシーと思われる。例えば、小規模な営業所でファイル/プリンタ共有サービスは必要だが、管理者は用意できない。本社/本店との連絡などにインターネット接続は必要だが、営業所内にメール・サーバやWebサーバを必要とするほどのものではない(こうしたオフィス環境はSOHOでも多いだろう)。このようなオフィス環境と用途にET-NAS20Gは適している。

 アプライアンス・サーバの市場はまだ立ち上がり始めたばかりであり、たとえSOHO向けのオールインワン・サーバという具合に分野を限定しても、前述のように製品ごとに仕様や指向などが少なからず異なっているのが現状だ。しかも汎用性はPCサーバより低いので、用途に対して選び方を間違えると、別の製品への買い替えを強いられる可能性が高い。またアプライアンス・サーバの場合、例えばサーバにセキュリティ・ホールが見つかったとき、ユーザーレベルでは対処できないことが多く、ベンダのサポートに頼らざるをえない。つまりPCサーバの場合に比べ、ベンダの信頼性はより重要な選択のポイントになる。購入時には、こうした点に注意しながら製品を選びたい。記事の終わり

 

関連リンク
Altos SA50の製品情報
PLASMA2000の製品情報
OpenBlockSの製品情報
ET-NAS20Gの製品情報
 
 

 INDEX

  [特集]SOHO専用サーバのお手軽度
     1.ET-NAS20GのハードウェアはPC相当
     2.ファイル共有機能
     3.プリンタ共有機能とインターネット接続共有機能
   4.多機能より管理の容易さを優先

「PC Insiderの特集」


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