第1回 まさかわが社の顧客情報が漏えいするとは!

根津 研介
園田 道夫
宮本 久仁男
2004/10/30
※ご注意
本記事はフィク ションであり、実在の人物・組織などとは一切関係ありません。

 ファイルはどこに?

 早速ファイルサーバにログオンし、ファイルを探し始める。うかつなことに、その時になって、そもそも探すべきファイルの名前は何かということすら知らないことに気付いた。戻って聞いてみると小野さんも知らないようだ。しかし、ほかの誰にも聞くわけにいかない。再びあてもなく探し始めると、幸いそれらしい「顧客情報」という名のフォルダがあった。取りあえずはこれを信じるしかない。

 ファイルは存在した。名前はそのものずばりで「顧客情報.xls」というものだ。中を見てみると個人情報や会社の情報などがごちゃごちゃと多数記録されている。それにしても膨大な行数(データ数)で、3万行を超えているようだった。ほかの社員に気付かれないようにこっそりと印刷する。

 印刷をしている間、さらにファイルを検索してみると、なんと「顧客情報.xls」というファイルはほかの場所にも2つ存在していた。最終更新日付から判断すると、最初に見つけたものが最新バージョンのようだ。

 念のために「kokyakujouhou」とか「kokyaku」、「顧客」などをキーワードにして検索してみる。すると、「kokyaku.xls」というファイルが……。中村君は天を仰いだ。

 会議室に戻り小野さんに報告すると、

小野さん 「ファイルが複数存在するのか。ある意味それは好都合かもしれないぞ」
中村君 「え? なんかみんなバージョンが違っているみたいですけど、都合が良いってどういうことですか」
小野さん 「もしかしたら漏えいしたのがいつのデータなのかを確認できるかも」

 そのとき、久保部長が会議室に戻ってきた。

久保部長 「人事総務の玉田に詳しく聞いてきた。漏えいした、と指摘してきたクレームを受けたのが彼だったんだ」

 電話を受けた玉田さんによると、クレームは複数あったようだ。そのうちの1件のクレームは、「最近引っ越ししていろいろな登録住所の変更をしている最中だが、これまで変更したのは役所と中村君の会社だけ。現住所にハガキが来たので、そのどちらかから漏れたはず」というものだったらしい。

 役所から漏えいした可能性ももちろんあるが、ほかにもクレームが来ていることから考えると、どうやら中村君の会社から情報が漏えいした、と考えて間違いないようだ。

小野さん 「登録住所の変更って、いつされたんですかね?」
久保部長 「1カ月前くらいだそうだ」
中村君  「3カ月前のファイルがありますね。それで確認できます」

 確認してみると、まさしくそのお客さんのいうとおりだった。3カ月前の住所と最新版の住所は異なっている。これでほぼ間違いなかった。やはり中村君の会社から顧客情報が漏えいした、ということだ。

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Index
まさかわが社の顧客情報が漏えいするとは!
  Page1
まさか、最悪の事態?
  Page2
さあ、調査開始だ
Page3
ファイルはどこに?
  Page4
とにかくログ!もっとログを!
  Page5
見えてきた解決の糸口
  Page6
衝撃の事実


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