第3回 Exchange Server 2003のS/MIME、SSL、TLSの実装手順
竹島 友理
NRIラーニングネットワーク株式会社
2005/9/17
今回は、前回(連載2回目)の続編です。連載2回目では、Exchange Server 2003環境におけるユーザー認証、メッセージの暗号化、メッセージにデジタル署名を付けたときのメリット、メッセージ通信の暗号化などについてまとめました。S/MIME(Secure/Multipurpose Internet Mail Extensions)とSSL(Secure Sockets Layer)の用途の違いは理解していただけましたか?
連載3回目は、その実際の設定手順について見ていきます。最初は、S/MIME、SSL、TLS(Transport Layer Security)の設定に必要な共通の話から入って、次にS/MIME、SSL、TLSの順番でそれぞれの設定方法を紹介します。
S/MIME、SSL、TLSの設定に必要なデジタル証明書 |
S/MIME、SSL、TLSの設定にはデジタル証明書が必要です。デジタル証明書は、PKI(Public Key Infrastructure)と呼ばれている基盤のもとで、CA(Certificate Authority:認証局)と呼ばれる証明書発行機関が発行します。
Exchange Server 2003では、CAが発行したデジタル証明書を利用して、メッセージへのデジタル署名とメッセージ暗号化(S/MIME)、サーバ認証、クライアントとExchange Server間での暗号化通信(SSL)、セキュアなSMTP通信(TLS)を行います。
ここで使用するCAにベリサインなどの商用証明機関を選択する方法もありますが、ここでは、あくまでも社内限定 (もしくは関係者限定) で使用することを前提として、Windows Server 2003に標準で実装されている「証明書サービス」のエンタープライズCAを利用しています。証明書サービスを Active Directoryと連携して動作するエンタープライズCAとして構成すると、証明書要求がオンラインで処理されます。
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デジタル証明書の取得方法と種類 |
デジタル証明書は、以下の流れで取得されます。
- アプリケーションや管理ツールからCAにデジタル証明書要求を送る
- CAが要求内容を確認してデジタル証明書を発行する
- CAから発行されたデジタル証明書をコンピュータにインストールする
図1 デジタル証明書の取得の流れ |
デジタル証明書の取得はCAに要求を送るところからスタートします。デジタル証明書の種類は1つではありません。用途に合わせてさまざまな種類が用意されています。例えば、S/MIMEでクライアントが使用するのは「ユーザー証明書」、SSLとTLSでサーバが使用するのは「サーバ証明書」です。このほか、スマートカードログオン用のデジタル証明書もあれば、IPsec通信用のデジタル証明書もあります。デジタル証明書の種類は要求を送る際に指定します。
Windows Server 2003の証明書サービスのエンタープライズCAを構成している場合、上記2番はオンラインで自動処理されます。従って、CAが要求を受け取るとActive Directoryと連動して証明書を発行し、要求元に返信してくれます。
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Index | |
Exchange Server 2003のS/MIME、SSL、TLSの実装手順 | |
Page1 S/MIME、SSL、TLSの設定に必要なデジタル証明書 コラム:PKI とは デジタル証明書の取得方法と種類 |
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Page2 S/MIMEの設定はすべてクライアントコンピュータ側で行う S/MIMEが正しく動作しない場合 |
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Page3 SSLとTLSの設定は主にサーバ側で行う コラム:RPC over HTTP ってどうやるの? - SSLが正しく動作しない場合 TLSの設定方法 |
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