ISA Server 2004 Enterprise Editionの実力
大規模ネットワークを支える
マイクロソフトのファイアウォールサーバ
NRIラーニングネットワーク株式会社
ラーニングソリューション部
(Microsoft MVP for Windows Server System - ISA Server)
2005/10/5
Active Directory Application Modeと 構成保管サーバによる柔軟なインフラ構築 |
アレイでまとめた複数のISA Server 2004は構成データを共有します。このため、例えばアレイでNLBを有効化し、複数のISA Serverを1台の仮想的なファイアウォールとして利用すると、実際に処理を担当したISA Server 2004が違っても同じファイアウォールルールやキャッシュルールが適用され、まったく同じように処理されることになります。
また、エンタープライズレベルで設定したエンタープライズポリシーは、全アレイ内のISA Server 2004にもれなく適用されます。このようなアレイ/エンタープライズの構成データを共有する仕組みを提供しているのが構成保管サーバです。
図5 構成保管サーバ |
実はこの構成保管サーバが、「ISA Server 2000 Enterprise Edition(ISA Server 2000 EE)」にはまったくなかった仕組みであり、大きくアーキテクチャが変更された点です。
ISA Server 2000でも、ISA Server 2004のようなアレイ/エンタープライズ構成が実装できました。ISA Server 2000ではActive Directory(AD)を利用し、このようなファイアウォール構成データの組織内での共有を実現していました。
つまり、ISA Server 2000 EEでは、Exchange Serverと同じように導入時にADが必要となります。インストール時には、まずADスキーマを拡張し、ISA Server用のオブジェジェクトクラスや属性を追加し、ISA Serverのアレイ/エンタープライズレベルの構成はすべてADドメインコントローラ(DC)のADデータベース「ntds.dit」に保存していたのです。
具体的には、エンタープライズの構成データは、フォレスト全体、つまり組織全体で利用できるようにADの構成パーティションに保管し、アレイレベルの構成データは、ドメイン内で利用できるようにADのドメインパーティションに保管していました。
ところが、このようにISA Serverの構成データをADに保管することで次のような問題が発生します。
- ADを導入していない企業では、ISA Server 2000 EEを導入できない
- アレイ構成をする場合、複数のISA Server 2000 EEは同じADドメインに所属している必要があり、ADの論理構造が直接ISA Serverの構成にも影響してしまう
- AD DCが存在しない小規模サイトにISA Server 2000 EEを配置しようとすると、ISA Serverと別サイトのDCとの間で通信が発生する、あるいはそのサイトにDCを追加する必要がある
このような問題を解決するため、ISA Server 2004 EEでは、ADをまったく必要とせず独立して動作するようにアーキテクチャが大きく変更されました。では、どうやって構成データを組織内で共有するのでしょうか?
答えは「Active Directory Application Mode(ADAM)」の使用です。ADAMはMSが無償で提供するLDAPサーバであり、「Windows Server 2003 R2」にも同梱される予定のサービスです。今後ADAMの重要度は高くなり、活用されるシーンも増えていくと考えられますので、ADAMについて紹介しましょう。
【ADAMとは】
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注意していただきたい点は、ADAMはADのサブセットではなく、異なる種類のLDAPサーバであることです。ADAMはADにはない同一サーバ上での複数インスタンスの実行や、インスタンスごとの複数スキーマの構成、X.500のオブジェクト命名規則準拠、Windows XP Professional上でも実行可能など、ADとは異なった機能を提供します。
ADAMはLDAP対応アプリケーションに対して、シンプルなLDAP対応データストレージを提供するためのサービスです。ISA Server 2004 EEでは、図6のようにインストール時に構成保管サーバを選択すると、ADAMが自動的にインストールされ、ISA Server用のアプリケーションパーティション(CN=FPCConfigration)が作成されます。
図6 インストールウィザード(1) |
アレイメンバーは、LDAP/LDAPSプロトコルを通じて、構成保管サーバのADAMアプリケーションパーティションから、アレイ/エンタープライズの構成を取り出します。もし、低速ないしは狭帯域な接続でリンクされている小規模な拠点にISA Server 2004 EEを配置したい場合には、必要に応じて構成保管サーバのレプリカ、つまりADAM サーバをインストールすることができます。
図7 インストールウィザード(2) |
ADAMデータベースはADデータベースと違い、アプリケーションパーティションベースで構成されているため、以前のバージョンのようにDCを配置するのと異なり、必要となるデータベースサイズも極めて少なくて済みます。そのうえ、サイトの機能自体はADと同等のものが実装されており、構成保管サーバ同士のADAMレプリケーション頻度も自由に調整することができます。
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Index | |
ISA Server 2004 Enterprise Editionの実力 | |
Page1 ISA Server 2004 Enterprise Editionとは? |
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Page2 アレイ/エンタープライズ構成による分散管理 |
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Page3 ADAMと構成保管サーバによる柔軟なインフラ構築 |
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Page4 統合NLBによるロードバランシングとフォールトトレランス |
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