
いまどきのサーババックアップ戦略入門(2)
サーババックアップに関するいまどきの選択肢
株式会社シマンテック
後藤 博之
2007/9/28
バックアップポリシーの選択肢
バックアップポリシーには大きく分けてフルバックアップ、差分バックアップ、増分バックアップがある。
差分バックアップと増分バックアップの意味は人によって異なる場合があるが、ここでは差分バックアップの定義として前回のバックアップデータからの差分を取得することを指し、増分バックアップの定義は前回のフルバックアップデータを基準に、フルバックアップ+差分バックアップのデータを結合して取得することを指す。
一般的には、「フルバックアップ」+「差分バックアップ」、「フルバックアップ」+「増分バックアップ」を組み合わせ、1つのローテーションを組む方法を取っている。
このローテーションについては、前回にリストア要件からバックアップ設計を考えたのと同様に、システムにおけるRPOおよびRTOの各サービスレベルを考慮し、決定していくのが望ましい。
一般的なポリシーの考え方は次のようになる。
■バックアップ取得時間優先の場合のローテーション例
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図1 バックアップ取得時間を短縮するにはフルバックアップと差分バックアップを組み合わせる |
この場合、バックアップについては、常に1つ前のバックアップからの更新データのみを取得するため、所要時間は最短で済む。
ただし、リストアについては、仮に金曜日の取得時点まで戻したい場合は日曜日のフルバックアップから金曜日の差分バックアップまでのメディアをすべて読み込まなくてはならないため、多くの時間を要してしまうことになる。
■リストア所要時間優先の場合のローテーション例
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図2 リストア所要時間を短縮するにはフルバックアップと増分バックアップを組み合わせる |
この場合、バックアップについては、常にフルのバックアップからの更新データを取得するため、所要時間は差分バックアップより長くなる。
ただし、リストアについては、仮に金曜日の取得時点まで戻したい場合は日曜日のフルバックアップと金曜日の増分バックアップのメディアを読み込むだけで済むので、より短時間で戻すことが可能になる。
追記:「差分バックアップ」と「増分バックアップ」の意味について
上における「フルバックアップ」、「差分バックアップ」、「増分バックアップ」の用語の意味については若干混乱もあり、また読者よりご質問を頂戴したこともあり、ここで補足させていただく。
フルバックアップはその名のとおりすべてのデータのバックアップを取ることを指す。これについてはよいだろう。混乱が生じるのは差分バックアップおよび増分バックアップの内容と名称である。
何をバックアップするかということについていえば、この2つのうちの1つは「前回のバックアップから」、もう1つは「前回のフルバックアップから」の変更あるいは増加部分をバックアップする、ということである。
どちらを「差分」と呼び、どちらを「増分」と呼ぶかについては、バックアップソフトのベンダによってまちまちであるというのが(個人的には残念でもあり恐縮でもあるが)現状である。また、差分/増分バックアップの意味をファイル属性の1つであるアーカイブビットの処理に関連して解説しているものもあるが、ご存知のとおりアーカイブビットを持たないOSも多々あるので、これらは一般論ではなく特定のOSについての解説だということに注意が必要だ。
どちらの方法をどちらの名前で呼ぶかはさておき、「前回のバックアップからの違いをバックアップ」すればバックアップ時間が短くなり(代償としてリストア時間は長くなり)、「前回のフルバックアップからの違いをすべてバックアップ」すればその逆になる。ユーザー部門とバックアップ要件やリストア要件について協議する場合には、差分なのか増分なのかというバックアップソフトの用語ではなく、バックアップが短時間の方が良いか、リストアが短時間の方が良いかというように、ユーザー部門の視点で議論するべきであろう。
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サーババックアップに関するいまどきの選択肢 | |
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Page2 バックアップポリシーの選択肢 |
Page3 バックアップシステム構成の選択肢 本連載の今後の記事予定 |
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