システムベンダブリーフィング

システムインフラベンダ ブリーフィング(7)

[ガートナー]続・サーバ仮想化の普及は混乱への道筋?


三木 泉
@IT編集部
2009/4/17

企業は、サーバ仮想化とクラウドサービスを、今後どのように認識していくべきなのだろうか? サーバ仮想化を進める際の落とし穴とは? 前回に引き続き、特別編として、調査会社ガートナーのバイスプレジデント兼最上級アナリストに、サーバ仮想化の動向を聞いた

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 今回は、前回に引き続き特別編として、ガートナー リサーチ バイスプレジデント兼最上級アナリスト、カール・クランチ氏へのインタビューからお届けする。

 同氏はサーバ分野のテクノロジ・トレンドを専門とし、グリッド・コンピューティングの市場とテクノロジや、クラスタ・コンピューティングに関する主要な調査を行っている。銀行および製造業などのITユーザーやベンダを対象としたコンサルティングも行っている。取材は2009年3月初めに行った。太字は編集部による質問である。

 企業におけるクラウド利用はどう進むか

 ヴイエムウェアは社内クラウドと外部クラウドとの間の「フェデレーション」(連携)を提唱しています。サーバ資源のスピルオーバ(社内クラウドにおける資源が不足した場合に、その分を外部クラウドで補うこと)などのシナリオは、実現可能だと思いますか?

 技術として成熟しているかの問題は別として、こうした需要は昔からありました。IBMの「On Demand」という考え方が示されたとき、市場が当初非常に歓迎したのは、これ(スピルオーバ)を使えるようにしてくれると思ったからです。しかしすぐに実現してくれるものではないと分かったとき、人々はスピルオーバを実現してくれるものとしてクラウドに関心を移したのです。

 業務における間欠的なピークへの対応策の選択肢は限られています。ピークを無視し、業務のパフォーマンスが下がるのを容認するか、多数の機器に多額の金を払い、ピークが来るまで何もしないまま待たせておくか。あまり効率的ではありません。

 「スピルオーバ」という考え方は非常に面白いものです。内部的には通常のレベルをめどとして管理を行い、それ以上は外部にまかせられます。コンセプトとしては非常にいいのですが、問題は現実性です。どんな仕組みで動くか、セキュリティはどうなるか、サービス品質はどう保つか。関連技術はまだ新しすぎて、こうした難しい問題に対して十分な答えを出せていません。

 現実的かとどうかという質問に答えるならば、成熟と実証が見られるまでは、大きな疑問符がつくと思います。

 セキュリティとサービス品質を担保した次の世代のクラウドサービスが登場すれば、企業はクラウドを使い始めると思いますか?

 最初の問題は、企業自身が、クラウドサービスに自社が求めるメリットはなにかを理解することだと思います。あらゆる変化や努力はリスクを伴います。クラウドを使うという変化に見合ったメリットがあるかどうかです。多くの人々は、必ずクラウドのほうが安いと思い込んでいます。これは裏付けのない仮説にすぎません。リスクをおかす価値をもたらすには、単に安いだけでなく、十分に安いという確証がなければなりません。そうでなければ大きな変化は起こらないでしょう。

 ただし、コストが低いという観点でなく、独特な要件を満たすような場合なら、クラウドは採用されるでしょう。処理量の変化が非常に激しい場合、あるいは1年後に自社の業務がどうなっているか予測もできないような場合は、4年間の利用のためにサーバを購入することは得策ではありません。クラウドはまず、利用課金および拡張性という形でほかに見られない柔軟性を発揮できる場面で使われるでしょう。これまでの世界では、いい選択肢がないからです。

 社内のソフトウェアと外部のサービスをWebサービスで連携するようなクラウドサービス形態についても、一般的な話としてはあまり現実的とは思えません。サービスレベルが外部サービスに依存することになるからです。これを望む企業が出てくると思いますか?

 外部のサービス提供者に対する非常に高い信頼がなければなりません。この提供者が破産しないか、物事を分かったうえでやっているか、高信頼サービスを毎年続けていけるか。高い志を持っていても、実行が伴わない場合があります。この問題の解決策は、長期間にわたる実績しかありません。「この業者は何年も確実にサービスを提供しているから信頼できる」といったことです。これが満たされないかぎり、外部サービスを使うのはリスクです。

 いわゆる「クラウド」が登場する前にも、Webサービスで内部の業務アプリケーションを、例えばクレジットカード決済のために外部サービスと接続することは進められてきました。しかし、クレジットカード決済サービスが遅くなれば、被害をこうむります。こうした依存性があるかぎり、信頼できる相手を見つけるか、相手を完全に制御するしかないのです。

 
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Index
続・サーバ仮想化の普及は混乱への道筋?
Page1
企業におけるクラウド利用はどう進むか
  Page2
サーバ仮想化のリスクを業務部門に押し付けるな

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