FCoEプロトコル速解

連載:FCoEプロトコル速解(1)

新プロトコルFCoEはなぜ注目されるのか


ブロケードコミュニケーションズシステムズ株式会社
小今井 裕
2008/11/14

 ところで「FC」ってどんな技術?

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 FCoEが、拡張されたイーサネットの上にファイバチャネルを通す技術であることは説明した。では、そもそもファイバチャネルとはどのような技術なのだろうか?

 ファイバチャネル技術は、ANSI T11委員会(The American National Standards Institute T11 technical committee)において標準化されている、高速デジタル・データ伝送に関する標準である。ファイバチャネルはSCSIなどに代表されるバス型の技術の拡張性や管理性の向上を可能にし、高速かつ信頼性の高いデータ伝送に適した設計になっている。

 バス型の技術からの拡張、置き換えという観点からも、ファイバチャネルはフレームドロップを「しない」前提で、フレームの順序配信を前提とした高いデータ整合性、高速・大容量データ転送、低遅延といった特性を備えている。最小転送単位のフレームは可変長で、最大2148bytesの長さを持ち、1フレーム当たりの最大データ長は2112bytesで、最大128MBのバルクデータ転送が可能である。

 ファイバチャネルのプロトコルスタックは、FC-0からFC-4までの5階層から構成されている(図4)。一般的にファイバチャネルと聞くと、サーバ・ストレージ間で使用されるSAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)用の技術として認識されている場合が多いが、ファイバチャネルはFC-4層でさまざまな上位レイヤとのマッピングが可能である。SANで使用される場合には、上位レイヤのプロトコルとしてSCSIがマッピングされており、ファイバチャネルの上位レイヤのプロトコルとしてIP(IP over Fibre Channel、RFC-2625)やATM(FC-ATM)をマッピングすることも可能である。

SCSI

HIPPI IP ATM
FC-4

上位プロトコルマッピング

FC-3

共通サービス

FC-2

フロー制御、リンクサービス

FC-1 エンコード/デコード(8B/10B変換)
FC-0 メディア、速度、コネクタ
図4 ファイバチャネル層構造

 速度に関しては、FC-0層で規定されているが、最近では8Gbpsのインターフェイスを持つ製品が出てきている。ファイバチャネルにも10Gbpsの規格はあるが エンコード・デコード方式が異なる1/2/4/8Gbpsとは互換性がなく、長距離接続を含むスイッチ間接続でのみ使用されている。

 難しいといわれがちなファイバチャネルではあるが、プロトコルとして非常に高機能な実装がされているため、デバイスの管理は別として、ネットワークとしての管理負荷は意外と低い。高機能であるがゆえに「難しい」、といわれてしまうのかもしれない。

 例えば、IPネットワークの環境では、アドレス管理としてDHCPや、ネームサービスを提供するDNS、ルーティングプロトコルとしてOSPF(Open Shortest Path First)などがあるが、ファイバチャネルも同様に、ファブリックサービスとしてアドレス管理を行うログインサーバやネームサービスを提供するネームサーバの機能、ルーティングプロトコルとしてFSPF(Fabric Shortest Path First)などを提供している。ここで大きく異なるのは、IPネットワークの環境では、別のプロトコルやサービスとして実装されているものが、ファイバチャネルの場合には、ファイバチャネルのプロトコルの一部として規定されており、それらプロトコルやサービスを管理者が設定しなくても使用できる点である。

 また、物理層とデータリンク層のみをハードウェアで処理しているイーサネットやTCP/IPと違い、OSIの第5層(セッション層)にあたる部分までがファイバチャネルのプロトコルとして規定されている。ほとんどの部分がハードウェアによって処理されているため、サーバCPUへの負荷の少ない、高速・大容量かつ信頼性の高いデータ転送が実現できる。

 ここまで説明してきたとおり、FCoEは新しいイーサネットであるCEEの上位レイヤに既存のファイバチャネルプロトコルをマッピングする技術である。ファイバチャネルやInfiniBandがある中でCEEが注目される理由としては、ネットワークインターフェイスが統合されるべく次世代データセンターインフラとして採用される技術は、ファイバチャネルのように堅牢であるとともに導入・管理が容易なものでなくてはならい。CEEの詳細は次回以降で説明するが、CEEは既存イーサネット技術をベースに拡張が行われているため、エンジニアに対してなじみのある技術であることや、導入が進めば比較的コストを抑えやすいことも挙げられる。それと同時に既存ファイバチャネルの技術をそのまま利用でき、投資の保護が可能な点も大きなポイントだ。

2/2
 

Index
新プロトコルFCoEはなぜ注目されるのか
  Page1
今日のネットワーク環境と課題
新しいプロトコル「FCoE」ってなに?
Page2
ところで「FC」ってどんな技術?

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