連載:ストレージ・アーキテクトになろう(1)
ストレージ・アーキテクトはどう戦略を構築するか
EMCジャパン株式会社
グローバル・サービス統括本部
マネージド・サービス部 部長
森山 輝彦
2008/10/22
ITインフラの統合と最適化は、多くの企業にとって重要な課題となってきている。ストレージ統合に関しては、特に米国では「ストレージ・アーキテクト」と呼ばれる人々が、スペシャリストとしての立場から社内プロジェクトに深く関与するケースが増えている。日本でも「SNIA認定アーキテクト」などの資格が整備されつつあるストレージ・アーキテクトの職務内容を通じ、統合ストレージの導入プロセスを解説する |
ストレージ・アーキテクトという職業
IT基盤を担当するIT技術者、特にITアーキテクトと分類される職種の方は、IT基盤の“全体最適化”というキーワードを最近良く耳にしていると思います。IT基盤のオープン化が始まって10年余り、ブレード化の技術や仮想化の技術が本格的に市場に導入され始めています。IT基盤の市場は、集中化、分散化、仮想化のサイクルを繰り返し、現在は、“全体最適化”というキーワードに集約されています。これは、ITIL、COBITのような、ベスト・プラクティス(グッド・プラクティス)の導入を検討し、ITガバナンスを確立するという1つの側面を支援する動向であるともいえると思います。
一方で、ISで処理すべきデータ量、扱うべきデータ量は、飛躍的に増えることが周知の事実であり、IT業界全般の景気の伸びが鈍化している中で、ストレージ関連事業の伸び率は以前顕著であることも事実です。
このような状況はまだ数年は続くと見られており、ITアーキテクト、その中でもストレージ基盤に精通した“ストレージ・アーキテクト”は、ますます重要になってくると思われます。
欧米企業のIS部門は、数年前から、IT基盤チーム内に、専任のストレージ基盤担当チームを有しており、ストレージ基盤(ハイエンド・ストレージが中心)の、計画、調達、実運用のすべてを実施しており、IT技術者市場においても、ハイエンド・ストレージの管理ができる技術者は有利な条件を得られる場合も多いようです。
本連載では、以下のような構成で、実際に現場で活躍している“ストレージ・アーキテクト”の仕事を紹介します。この領域に興味を持たれるIT技術者の方にとって、少しでもお役に立てれば幸甚です。
- 統合ストレージの検討と戦略
- 統合ストレージの利用計画
- 統合ストレージ ― アーキテクチャ概要の決定
- 統合ストレージ ― 運用契約、組織の役割分担
- 統合ストレージの調達
- 統合ストレージ提案の選択
- 商用環境へ
- 運用管理の実際
- ストレージ基盤のライフサイクル
- モニタリングと評価
今回は、統合ストレージの検討と戦略についてご説明します。
統合ストレージの検討と戦略
すべてのIT投資に共通の課題ですが、その目的と期待を明確にすることは、その後さまざまな意思決定を実施する際に、大変重要となります。最も重要な点は、
利用者を明確に認識すること
です。
ほとんどの場合、このことは統合ストレージの利用者(ユーザー)にとって特に意識することなく、既定の事実となっていると思いますが、ITサービス・プロバイダは、この認識が明確でないまま、さまざまな提案を実施してしまう場合がありますので、あえて最初に明記しました。利用者は、1. 同一企業内の特定の部門、2. 同一企業内の複数の部門、3. 同一企業グループ内、4. 他社を対象にしたストレージ基盤サービス、という区分ができると思います。
利用者に応じて、ストレージ基盤に対する調達要件、アーキテクチャ要件、運用要件が異なってきます。ストレージ・アーキテクトの重要な仕事の1つに、“計画と調達“という項目がありますが、言い換えれば、1. 社内プロジェクト申請と2. ベンダに対するRFPの作成、となります。
“計画と調達”については、第5回までで触れていきますが、その推進に当たっては、社内の上位管理者や関係者とともに以下の点を明確にしておくことが重要です。
- 予算化、決済方法(基盤主導/プロジェクト主導)、課金方法
- 筐体戦略
- セキュリティ要件
- 異なる利用者間での競合の容認度合い
- 変更管理などの情報伝達方法
- 停止、移行調整の難易度
- 他の共用サービス(ネットワーク等)との整合性
- 利用側と基盤側のライフサイクルの整合性
特に、統合ストレージの利用者の確認と、提供者(自社組織)の特徴の十分な理解が重要です。これら8つの点について、次ページ以降ご紹介します。
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Index | |
ストレージ・アーキテクトはどう戦略を構築するか | |
Page1 ストレージ・アーキテクトという職業 統合ストレージの検討と戦略 |
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Page2 1. 予算化、決済方法、課金方法 |
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Page3 2. 筐体戦略 3. セキュリティ要件 |
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Page4 4. 異なる利用者間での競合の容認度合い 5. 変更管理などの情報伝達方法 6. 停止、移行調整の難易度 7. 他の共用サービス(ネットワークなど)との整合性 8. 利用側と基盤側のライフサイクルの整合性 |
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