連載:ストレージ・アーキテクトになろう(1)
ストレージ・アーキテクトはどう戦略を構築するか
EMCジャパン株式会社
グローバル・サービス統括本部
マネージド・サービス部 部長
森山 輝彦
2008/10/22
2. 筐体戦略
筐体戦略は、キャパシティと可用性に関する検討項目の1つです。
まず、基本要件として、構築を予定している統合ストレージの全体容量が、どの程度必要になるかという見積もり(想定)が必要となります。
その上で、筐体に関する戦略を検討します。端的には、少ない大容量の筐体を採用するか、小規模〜中規模の筐体を採用していくかという検討になります。ハイエンド・ストレージ、ミッドレンジ・ストレージの区別ではありません。ハイエンド・ストレージとミッドレンジ・ストレージは、機能性、可用性に差異があります。ハイエンド・ストレージとミッドレンジ・ストレージの選択に関しては、別途触れます。
この戦略決定には、ライフサイクル、保守計画、設備計画、ライセンス契約などに依存します。また、ストレージの仮想化技術の発展により、若干の見直しが必要になると思いますが、サーバーでの並列処理技術に比べ、ストレージレベルでの並列処理技術はまだまだ遅れていますので、当面は、検討必須の項目になります。ライフサイクル、保守計画、設備計画、ライセンス契約のそれぞれについて、以下に説明します。
ライフサイクル
1つのストレージ筐体のライフサイクル戦略を検討します。業務システムとの適合という観点については後述しますが、少ない筐体数で大容量化を図る場合、そのストレージを利用する業務システムの種類は多くなることが予想されます。規模の小さい筐体を複数用意する場合は、その筐体を利用する業務システムの種類は、比較的少なくコントロールすることが可能です(小規模筐体をまとめてストレージプールを形成する場合は、業務システムの種類の多様性は、大規模筐体と同様になります)。
保守計画
ストレージ基盤に対する保守戦略にも依存しますが、定期的な予防保守(筐体レベルのマイクロコードの適用)を計画する場合、筐体戦略により、その影響範囲は大きく変わります。影響範囲は大きくても、作業回数を少なくすることでリスクを減らすか? 作業回数が多くても、作業の際の影響範囲を小さくすることでリスクを減らすか? これは、利用者が求めるサービスレベルにも大きく依存しますが、一般的には、ライフサイクル中に数回の停止時間が可能であれば、筐体数を少なくする方がリスクは低減されると思われます。また、利用者が求める可用性(サービス停止の容認度)が大きく異なるような場合は、その要求に応じて筐体を分けることも、1つの要件となります。
設備計画
筐体数が多くなれば、その分、付随するコンポーネントが多くなり、設置スペース、電力、空調能力などが必要になります。一方では、大規模筐体は、連続したスペースを必要とする場合が多く、その要件が満足できるかが、重要な確認項目となります。
ライセンス契約
ベンダ、ストレージの種類などにより差はありますが、ストレージ・ベースで提供する拡張機能によっては、筐体レベルでライセンス料が発生することがあります。筐体当たり搭載容量により、段階的なライセンス料を設定している場合も多く見られますが、ベンダに確認を取り、筐体戦略への影響を確認しておくことが必要です。
3. セキュリティ要件
セキュリティ要件は、IT基盤戦略の1つの項目として、ストレージ基盤にかかわらず重要要件として意識すべき課題です。特に同一企業内ではなく、企業を跨る統合ストレージ基盤の提供を計画する場合は、より厳格に管理することが求められます。以下に挙げる項目のほとんどは、一般的には問題のない項目ですが、明確に再確認をすることは、情報セキュリティを確実にするために重要です。
- ユーザー権限(特権ユーザーではない)で、すでに他のサーバで利用中の論理デバイスを操作できないこと(デバイスのアサイン/アンアサイン、オフライン状態への変更、リストアなど)
- ストレージに接続されたサーバから、すでに他のサーバで利用中の同一筐体内の論理デバイスを操作できないこと (デバイスのアサイン/アンアサイン、オフライン状態への変更、リストアなど)
- ストレージ管理サーバ、バックアップサーバのアクセス管理は社内規定に沿った形式で運用されること
- 保守回線などの取り扱いや、ベンダのリモートからのログインに関しては、セキュリティ上の問題が発生しないように、十分ベンダと協議すること
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Index | |
ストレージ・アーキテクトはどう戦略を構築するか | |
Page1 ストレージ・アーキテクトという職業 統合ストレージの検討と戦略 |
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Page2 1. 予算化、決済方法、課金方法 |
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Page3 2. 筐体戦略 3. セキュリティ要件 |
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Page4 4. 異なる利用者間での競合の容認度合い 5. 変更管理などの情報伝達方法 6. 停止、移行調整の難易度 7. 他の共用サービス(ネットワークなど)との整合性 8. 利用側と基盤側のライフサイクルの整合性 |
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