System Insider 編集後記 2002年6月
|
||||||||||||||||||||||||||||||||
このページは毎月末に更新予定です
|
||||||||||||||||||||||||||||||||
取材の裏側
「マンスリー・レポート:2002年第2四半期の業績予測に見るIT業界の先行き(2002年7月号)」でも取り上げたが、2002年6月19日にIntelがホスティング事業からの撤退を発表した。つい2カ月前、「プロセッサ会社からの脱皮を図る『Intel』:第4回 なぜインテルはホスティング事業を行うのか?」のために担当者にインタビューをしていただけに、突然の発表は少々ショックであった。 そもそも、このシリーズ・インタビューの企画を立ち上げた意図には、「なぜ、Intelがホスティング事業やコンサルティング事業といったサービス業に進出するのか?」という素朴な疑問を解消することにあった。IBMやCompaqといったシステム・ベンダが一歩下流のサービス業へ進出していくことは理解できるのだが、IntelというIT業界の最上流ともいえる半導体会社が、ビジネス・モデルのまったく異なるサービス業に進出する理由が分からなかったからだ。特に水平分業のビジネスを標ぼうするIntelが、畑違いのサービス業を行うことに違和感もあった(Intelは水平分業のビジネス・モデルを「エコシステム」と呼んでいる)。 記事の企画を立てた段階では、Intelは「インターネットのビルディング・ブロック・サプライヤを目指す」と宣言していた。そのため、ホスティング事業への進出は、実は水平分業から垂直統合へのビジネス・モデルの転換の第一歩になるのではないかという推測もあった。Intelは、もはや単なるプロセッサを製造するだけの会社ではなく、IT業界の多くの標準化にかかわる基幹企業でもある。つまり、Intelのビジネス・モデル変換は、IT業界の再編にもつながりかねない。その点を多くの人から話を聞くことで明らかにすることを目的としていたのだ。 しかし2001年9月を過ぎ、米国のインターネット・バブルが崩壊してから、Intelは急速に事業の再編を開始。USB顕微鏡などを製造・販売していたホーム・プロダクツ事業を閉鎖し、半導体分野への事業資源の集中を行い始めてしまった。記事をスタートするときには、「インターネットのビルディング・ブロック・サプライヤを目指す」という看板はいつの間にか「コア・コンピタンスへの集中」に塗り変わり、ビジネス・フォーカスは半導体へと再び戻ってしまった。こうなると逆に気になるのが、「インターネットのビルディング・ブロック・サプライヤを目指す」として開始したホスティング事業の行方だ。それを確認するために、担当者にインタビューした結果の記事が「第4回 なぜインテルはホスティング事業を行うのか?」である。インタビューの結果、Intelの中でのホスティング事業の位置付けは、ある程度はっきりしたわけだが、結局は懸念が現実化してしまったことになる。 米国においては、ホスティング業者の多くが撤退したり、通信事業者に買収されたりして、独立系は少なくなっている。ホスティング事業を運営しているのは、通信事業者かIBMなどの大手システム・ベンダのみという状態になりつつある。大手システム・ベンダは、システム・インテグレーションの一環として、ホスティング・サービスを提供しているため、システムの設計から管理まで行ってもらえるが、中小企業が安価にサービスを受けることは難しい。一方で通信事業者は、コロケーション・サービスが中心であり、サーバの管理をユーザー自ら行う必要があり、やはり中小企業には敷居が高い。 さらに大手通信事業者のGlobal Crossingが1月に倒産したり、Worldcomが不正会計で危機に瀕したりしている状況を見ると、通信事業者が提供するホスティング・サービスだから安心ともいえない状況にある。いつ会社が倒産したり、事業が手放されたりするか分からない。われわれのようにホスティング・サービスに依存したビジネスを行っている場合、それにより連鎖倒産ということにもなりかねないだけに今後のホスティング・サービス選びは慎重にならざるを得ない。 インターネット・バブル崩壊後、ホスティング・サービスに限らず、多くのインターネット・サービスが淘汰の時期に入っている。これまで以上にサービス自体や提供会社の選択を慎重に行うのはもちろんのこと、自ら新しいサービスを切り開く必要もあるかもしれない。こうした混乱期は、チャンスでもあるのだから。
(System Insider 小林章彦) |
||||||||||||||||||||||||||||||||
編集後記 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||
System Insider STAFF | ||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||
- Intelと互換プロセッサとの戦いの歴史を振り返る (2017/6/28)
Intelのx86が誕生して約40年たつという。x86プロセッサは、互換プロセッサとの戦いでもあった。その歴史を簡単に振り返ってみよう - 第204回 人工知能がFPGAに恋する理由 (2017/5/25)
最近、人工知能(AI)のアクセラレータとしてFPGAを活用する動きがある。なぜCPUやGPUに加えて、FPGAが人工知能に活用されるのだろうか。その理由は? - IoT実用化への号砲は鳴った (2017/4/27)
スタートの号砲が鳴ったようだ。多くのベンダーからIoTを使った実証実験の発表が相次いでいる。あと半年もすれば、実用化へのゴールも見えてくるのだろうか? - スパコンの新しい潮流は人工知能にあり? (2017/3/29)
スパコン関連の発表が続いている。多くが「人工知能」をターゲットにしているようだ。人工知能向けのスパコンとはどのようなものなのか、最近の発表から見ていこう
|
|