解説2004年冬のグラフィックス市場を分析する2. NVIDIAのラインアップはGeForce 6xシリーズが主流元麻布春男2004/12/09 |
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まずNVIDIAだが、市場にはまだ1世代前のGeForce FX 5000番台の製品が若干残っているが、すでに同社は新しいGeForce 6xシリーズでローエンドからハイエンドまでフルモデルチェンジを実施している。GeForce 6xシリーズはDirectX 9.0cでサポートされたプログラマブルシェーダ3.0に対応した最新のスペックとなっており、処分品などで特別に価格が安い場合などを除き、積極的に旧シリーズを選択する理由は見当たらない。
■GeForce 6800シリーズはコア・クロックなどの違いで4グレードあり
同社の現時点でのハイエンドはGeForce 6800シリーズである。2004年6月、このシリーズで最初に発表されたものがAGP対応のNV40(開発コード名)であり、AGP対応のカード製品にはこのNV40が用いられている。16本のPixelパイプラインと6ユニットのVertexシェーダを備えたNV40は、256bitのメモリ・インターフェイス(GDDR3)をサポートしたAGPインターフェイスのGPUである。TSMCの0.13μmプロセスで量産されていると考えられている。
NVIDIAの当初のプランは、HSIと呼ばれるブリッジ・チップ(AGP - PCI Express変換チップ)を用意し、NV40にHSIを組み合わせることでPCI Express対応するというものだった。しかし、実際にこの組合せが出荷されることはなく、NVIDIAはPCI Expressに対応したNV45(開発コード名)と呼ばれるチップをリリースする。NV45は1つのパッケージの中にNV40コアとHSIを封入したもので、プレス向けなどに貸し出された評価用カードの大半は、このNV45をベースにしたものだったようだ。PCI Expressに対応したGeForce 6800搭載カードの出荷は、この秋にようやく始まったところだが、その製品にこのNV45が使われているのかどうかは、現時点では確認できていない。
また、NVIDIAはNV41というコード名で、GeForce 6800シリーズに属するPCI Expressネイティブ対応のGPUを開発しているともいわれており、こちらが主力となる(すでに出荷されているカードに使われている)可能性も考えられる。つまりAGP向けにはNV40、PCI Express向けにはNV45あるいはNV41が使われているのではないかと思われる。
このGeForce 6800シリーズには、合計4つのグレードが用意されている。上位から「Ultra」「GT」「無印」「LE」となっている。ただし、LEについては確かにそのようなチップが存在するものの、NVIDIAはこれを正式に発表していない。最上位に位置付けられるUltraだが、その出荷量は極めて少なく、いまのところ市場ではAGP版しか確認されていない。このため、事実上のハイエンドは、次のグレードであるGTということになる。UltraとGTの違いは動作クロックのみで、内部アーキテクチャ(パイプラインの本数など)は同じだ。クロックの設定は、Ultraがコア・クロック400MHz、メモリ・クロック1.1GHzであるのに対し、GTではそれぞれ350MHz、1.0GHzとなる。その下の無印(GeForce 6800)になると、クロックがそれぞれ325MHzと700MHzに抑制されるほか、Pixelパイプラインの本数が16本から12本に削減されるなど内部アーキテクチャ上の制限も加わる。LEではさらに動作クロックが落とされた上、Pixelパイプラインの本数も8本へと減少する。それでもGeForce 6800シリーズを名乗る以上、256bit幅のメモリ・インターフェイスは維持されている。
GeForce 6800シリーズ | ||||
Ultra | GT | 無印 | LE | |
コア・クロック | 400MHz | 350MHz | 325MHz | 300MHz |
メモリ・バス幅 | 256bit | 256bit | 256bit | 256bit |
メモリ・クロック | 1.1GHz | 1.0GHz | 700MHz | 700MHz |
Pixelパイプライン数 | 16本 | 16本 | 12本 | 8本 |
備考 | AGPのみ | NVIDIAは正式に発表していないがLeadtekなどから搭載カードが販売されている |
NVIDIAのGeForce 6800GT |
同一パッケージ内に、グラフィックス・コアとHSIの2つのダイが封入されている。 |
一般にGeForce 6800シリーズでは、NVIDIAによるリファレンス・デザインのカードが用いられており、コンデンサや抵抗といった細かい電気回路の部品まで完全に同じとは限らないが、メーカーごとの違いはそれほど大きくない。このため、市場にはGeForce 6800シリーズ搭載カード用のサードパーティ製ヒートシンク/冷却ファンなども流通し始めているほどだ。また上位モデル(GT以上)では、ディスプレイ出力がDVI-I×2になっているほか、NVIDIAのnForce 4 SLIなどの対応チップセットと組み合わせた際に、2枚のPCI Express版カードを同時利用するSLIがサポートされる。
NVIDIAのGeForce 6800GTリファレンス・デザイン |
PCI Express x16の最大電源供給量は150Wと定められているが、スロットから75W、写真手前側の6ピンの補助電源コネクタから75Wを供給する。カード・ベンダは、このリファレンス・デザインに準拠している。そのため、静音化した冷却ファンなどがサードパーティから販売されており、ユーザーが交換できるようになっている。 |
GeForce 6800シリーズは、1GHzを超えるメモリ・バス・データレート、DirectX 9.0cがサポートするシェーダモデル3.0に対応するなど、現時点で最高クラスのGPUであることは間違いない。ただ、2億個を超えるトランジスタによる消費電力も大きく、どのようなPCにもインストールできるとは限らない。発熱量の大きさに加え、上位モデルでは組み合わせる電源ユニットに400〜500Wクラスのものが推奨されており、キューブ型やブック型などの、いわゆる省スペースPCには不向きだ。巨大なヒートシンクにより隣接する拡張スロットがふさがれてしまうかもしれない。こうしたデメリットを理解した上で、なお最高の3Dグラフィックス性能がほしいユーザー向けの製品だ。
■メインストリーム価格を実現したGeForce 6600シリーズ
このGeForce 6800シリーズのアーキテクチャを引き継ぎながら、メインストリーム価格帯向けに再設計されたのがNV43の開発コード名で知られるGeForce 6600シリーズである。NV43は、PixelパイプラインとVertexシェーダ・ユニットの数を半減(それぞれ8本と3本)させつつ、メモリ・バスを128bit化することで、トランジスタ数を半分近い1億4600万まで減少させた。製造プロセスも0.11μmに縮小させることと合わせ、チップのコストを引き下げている。しかしながら基本的なアーキテクチャは、ほぼGeForce 6800シリーズを踏襲している。32bit浮動小数点精度によるジオメトリ演算や、64bitテクスチャ・フィルタリングといったハイエンド向けの機能はすべて搭載されている。
現時点でGeForce 6600シリーズは、上位の「GT」と下位の「無印」の2モデルで構成されており、GeForce 6800シリーズ同様、GT版はSLIをサポートする。動作クロックはGT版がコア500MHz、メモリ・バス1.0GHz(GDDR3)に設定されているのに対し、無印版はそれぞれ300MHzと550MHz(DDR)となっている。GeForce 6800シリーズに比べ価格がこなれている上、供給も十分なようで、搭載グラフィックス・カードは購入しやすい。
■ローエンド向けのGeForce 6200
このGeForce 6600シリーズをベースに、さらにローエンド向けにしたのがGeForce 6200シリーズだ。開発コード名についてはNV43Vという名前が伝わっており、同じ0.11μmプロセスで製造されているものと思われる。GeForce 6600シリーズに対し、Pixelシェーダ・パイプラインがさらに半分の4本になっている(Vertexシェーダ・ユニットの数は同じ)点が、大きな違いだ。コア・クロックはGeForce 6600無印と同じ300MHzとされているが、メモリ・クロックについてはカード・ベンダの裁量に委ねられている部分が大きいらしい。実際の製品では、400MHz〜550MHz前後のDDRメモリが使われることが多いようだ。
GeForce 6600シリーズ | GeForce 6200 | ||
GT | 無印 | 無印 | |
コア・クロック | 500MHz | 300MHz | 300MHz |
メモリ・バス幅 | 128bit | 128bit | 128bit |
メモリ・クロック | 1.0GHz | 550MHz | 400MHz〜550MHz |
Pixelパイプライン数 | 8本 | 8本 | 4本 |
備考 | メモリ・クロックについてはカード・ベンダによって異なる |
現時点で、NVIDIAには、グラフィックス・コアを内蔵したチップセット製品が存在しないが、今後はそのような製品も登場するものと思われる。特に将来登場するであろうIntel向けのチップセットのラインアップには、グラフィックス・コア内蔵タイプが含まれるハズだ。
次のページでは、ATI TechnologiesのGPUについて見ていこう。
INDEX | ||
[解説]2004年冬のグラフィックス市場を分析する | ||
1.PCI Expressの登場で変わるグラフィックス市場 | ||
2.NVIDIAのラインアップはGeForce 6xシリーズが主流 | ||
3.NVIDIAに対抗するATIはRADEON X800シリーズ | ||
「System Insiderの解説」 |
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