連載 PCメンテナンス&リペア・ガイド
第8回 増設前に知っておきたいハードディスクの基礎 林田純将 |
IDEハードディスク選びで重要な要素とは?
前のページで解説したIDEハードディスクのインターフェイスとフォームファクタは、いわば必要条件といえる。実際には、価格や性能といった選択基準で各製品を比較して、最終的に購入するものを決めなければならない。価格は一目瞭然なので、ここではIDEハードディスクの性能を決めるスペックについて説明しよう。
ハードディスクのスペック表の例 | |||||||||||||||
これは日本マックストア(Maxtor)の「DiamondMax D540X」というハードディスクのデータシートから抜粋したスペック表だ。「容量」や「統合Ultra ATAコントローラ」という一目瞭然な項目のほかに、確認しておきたいスペックをピックアップしてみた(詳細は以下の本文を参照)。 | |||||||||||||||
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ハードディスクの性能を決めるものの1つに、前述の「Ultra ATA/100」といったインターフェイス規格があるが、これはインターフェイスのデータ転送速度の上限を規定しているのであって、実際のハードディスクの速度を直接は表していない。つまり、Ultra ATA/100対応のハードディスクだからといって、実際に100Mbytes/sで常にデータを連続して転送できるわけではないのだ。ATA規格のほかに、ハードディスクの実効データ転送速度を決める要素を解説しよう。
■回転速度(回転数)
ハードディスクの中には、磁性体を塗った記録ディスク(プラッタ)があり、それを回転させながらデータを読み書きする。プラッタの記録密度が同じなら、このプラッタの回転速度が速いほどデータ転送速度は向上するほか、データがアクセス可能になるまでのレイテンシ(遅延)も短くなる。
現在市場にあるIDEハードディスクの回転速度には、5400RPMと7200RPMがある(RPMは1分あたりの回転数)。価格を低く抑えたいなら5400RPM、高性能を優先するなら7200RPM、というのが一般的な選択基準だ。
ハードディスク内部のプラッタとスピンドル |
4枚ある銀色の円盤が「プラッタ」で、その中心の軸部分が「スピンドル」だ。スピンドル・モータがプラッタを回転させ、そのプラッタ表面に磁気でデータが記録される。ここでいう「回転速度」はスピンドル回転数などとも呼ばれる。 |
■シーク・タイム
ハードディスク内にはデータが記録されるプラッタのほかに、レコード針のような「ヘッド(磁気ヘッド)」と呼ばれるパーツがある。このヘッドはディスク上のデータが記録されている場所までレコード針のように移動していって、磁力によるデータの読み書きを行う。このヘッドの移動時間をシーク・タイムといい、シーク・タイムが短いほどデータへのアクセスも素早くなる。ハードディスクのカタログに掲載されている数値は、メーカーごとに測定方法が異なるなど正確に比較することはできないが、大まかな目安にはなるだろう。
ハードディスク内部の磁気ヘッド(赤線枠の部分) |
磁気ヘッドはサーボにより、情報の格納場所へと移動される。このときの移動時間がシーク・タイムである。その単位はmsと、インターフェイスの速度など(ns単位)に比べ、非常に遅い。 |
■バッファ・メモリ
ハードディスクは年々高速化されているとはいえ、まだまだメイン・メモリ(数Gbytes/s)などとは比較にならないほど低速なデータ転送速度(数十Mbytes/s)しか達成していない。この速度差を埋めるべく、ハードディスクにはバッファ・メモリが搭載されており、IDEインターフェイスとの緩衝役を果たしている。バッファ・メモリはディスク・キャッシュとしての役割も備えており、総じて容量が大きいほど高速である。現行のIDEハードディスクでは、2M〜8Mbytes程度の容量のバッファを搭載しているものが多い。
ハードディスクのバッファ・メモリ(赤線枠の部分) |
ハードディスク上の回路基板に搭載されているバッファ・メモリのチップ。この容量もスペック表に記されていることが多い。バッファ・メモリの上側のチップは、IDEコントローラ・チップ。 |
■内部データ転送速度
これはハードディスクの内部で、プラッタとハードディスクの制御回路の間でデータが転送されるときの速度を表している。IDEインターフェイスの速度に比べると、ハードディスクの実際の性能により近い数値といえる。最新の製品では、40M〜65Mbytes/s程度の内部連続転送レートが実現されている(メーカーによっては、単位にMbits/sが用いられていることもある)。ただし、シーク・タイムと同様に、この速度もメーカーによって測定方法が異なるので、大まかな目安として扱う方がよい。
ハードディスクは容量が大きいほど高速になる!?
デスクトップPCの増設用ハードディスクを購入する際には、3.5インチ・タイプでUltra ATA/100対応という枠内で、価格および上述の性能にかかわるスペックに注意しながら選ぶことになる。しかし、同世代のIDEハードディスクの間では、性能差はそれほど大きくなく、価格への影響も小さいようだ。価格への影響という点では、むしろ記録容量の方がはるかに重要だ。そして実は、容量が大きいハードディスクの方がデータの読み書きも高速に行える傾向にあるのだ。
より正確にいうなら、回転速度やバッファ容量、磁気ヘッドの駆動機構などが同等な場合、内蔵プラッタ1枚あたりの容量が大きいほど性能も高くなる傾向が強い。プラッタあたりの容量が大きいということは、記録密度が高いということだ(同じ3.5インチ・タイプなら、プラッタのサイズも同じはず)。記録密度が高いと、同じ面積の領域に含まれるデータ量が多くなる。逆に言えば、同じデータ量の記録に必要な面積が狭くなる。
プラッタに記録されたデータは、磁気ヘッドが移動しながら読み書きしていく。そのため、読み書きする記録領域の面積が狭いほど、ヘッドの移動量は減り、結果として読み書きにかかる時間は短くなる。つまり、記録密度が高いほど一定のデータ量を転送するのにかかる時間は短縮され、データ転送速度が向上するわけだ。
なお、ハードディスクのスペック表には、上図「ハードディスクのスペック表の例」ののように、たいていデータの記録に使われるプラッタの構成が記されている。1プラッタにつき最大2面にデータ記録が可能で、ヘッド数がプラッタの記録面の数を表している。ハードディスクの容量をこの面数で割れば、プラッタの片面あたりの容量を求められる。
同じメーカーの同じシリーズのハードディスクの中では、容量が大きい方が高速である場合が多い。1Gbytesあたりの単価も容量が大きいものの方が安くことが多いので、少し大きめな容量のものを選ぶようにしたい。
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このようにして増設するハードディスクを選んだあとは、PC本体への増設作業を行うことになるので、次回は実際の増設手順について話をする。
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1.標準インターフェイス規格「IDE」の現状 | ||
2.増設用ハードディスクは何をもって選ぶ? | ||
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