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PCメンテナンス&リペア・ガイド 1. 電源に関わるトラブルは電源ユニットから疑う 林田純将 |
PCの管理に携わっていれば、電源がオンにならないとかOSが起動しないといったトラブルに見舞われたことが1回はあるだろう。こうしたPC起動時のトラブルはソフトウェア・レベルでの原因解析が難しいため、より厄介なものといえる。それでも、自分が直接利用しているPCならば、パーツの交換や不調などのトラブル原因となりそうな出来事に心当たりがある場合が多く、短時間で原因を突き止められることもある。しかし、他人が使用するPCを管理する立場では、手掛かりとなる事前情報もなしにトラブルの解決に取り組まなければならないことが多い。そのPCを使っていたユーザーがPCに詳しくない場合はなおさらだ。しかし、トラブルの症例と原因をより詳細に覚えていれば、事前情報の少なさをある程度カバーして、トラブル解決に取り組めるだろう。
そこで今回は、ハードウェアに起因するPCのトラブルのうち、PCの電源オンからWindows OSが起動するまでの間に生じるものに注目して、代表的なトラブルの症例と原因を取り上げる。
電源ボタンを押してもPCの電源がオンにならない
PCの電源スイッチをオンにしても、ディスプレイに何も表示されず、インジケータLEDも消灯したままで、冷却ファンも回らない、ドライブ類からも動作音がまったく聞こえない。このようにPCがまったく動作しないというのは、意外と処置に困るものだ。冷却ファンなりハードディスクなり、何らかのパーツの動作中にトラブルが起きれば、その時点で動いていたパーツを疑うことができるが、まったく動作しないのでは、どこに注目して原因を探し出すべきか、その取っ掛かりさえつかめない。
しかし、電源のオン/オフで最初に稼働し始めるパーツが電源ユニットであることに気が付けば、迷うこともないだろう。つまり、電源スイッチをオンにしても動作しない、ということは、電源ユニットおよびその周辺にトラブルが潜んでいる可能性が一番高いということだ。電源ユニット関連のトラブルというと難しそうだが、よくあるのは電源ユニットに接続されているAC電源ケーブルが電源コンセントから抜けているといった単純なミスである。企業のオフィスなどでは、電源コンセントやACテーブル・タップが机の下など普段目に付かないところに集中していることが多いため、何かの拍子に電源ケーブルが外れても意外と気付きにくいのだ。また、これに似たトラブルの原因として、電源ユニットとAC電源ケーブルの接続が緩んでいることも考えられる。
電源のタコ足配線 |
こうした電源のタコ足配線が机の下などに隠れていると、何かの拍子に外れても、なかなか気付かない。電源電圧の降下など別のトラブルも引き起こしかねないので、なるべく電源配線は日頃から整理しておこう。 |
通常、PCの電源オン/オフを行うためのスイッチ(ボタン)はPC本体のフロントパネルに配置されているが、これとは別に電源ユニットの背面部分にも電源スイッチが付いているPCもある(付いていないPCも多い)。この背面側のスイッチがオフになっていると、フロントパネル側の電源ボタンをいくら操作しても電源はオンにならない(詳細は以下の写真やコラムを参照)。何らかの理由でここがオフになっていることもあるので、PCの電源がオンにならない場合は、この背面側スイッチの状態も確認しよう。
電源ユニットに直接組み込まれているメイン電源スイッチ | ||||||
のスイッチは、電源コンセントから電源ユニットへの通電を直接オン/オフするためのものだ。通常、電源ユニットの背面、すなわちPC本体の背面に配置されているが、これが付いていないPCもよく見かける。 | ||||||
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フロントパネル側の電源ボタンと背面側の電源スイッチの違い それに対して背面の電源ユニットに付いているスイッチは、電源ユニットそのものへの通電をオン/オフするためのもので、「メイン電源スイッチ」などと呼ばれる。このスイッチをオフにすると、マザーボードにも電流は流れず、完全に電源を落としてしまうことになる(スタンバイの状態も失われてしまう)。その場合、フロントパネル側のスイッチはまったく効かなくなる。 OSがハングアップしたりすると、フロントパネル側の電源ボタンでは電源をオフにできなくなることがある。このような場合、背面側のメイン電源スイッチがあるPCなら、これをオフにすると完全に電源をオフにできる(もちろんこの手順は強制的に電源供給を遮断するものであり、本来は正常にOSがシャットダウンしてから電源がオフになるほうが望ましい)。このスイッチがなければ電源ケーブルを電源ユニットから引き抜くしかない。また、PCによってはフロントパネル側の電源ボタンを4秒以上押し続けると、電源が強制的にオフになるものもある。 |
電源ユニットとマザーボード、電源スイッチの接続を確認する
PCの電源をオンにしても何の反応もなく、またPCと電源コンセントの接続やメイン電源スイッチも正常な場合、すなわち電源ユニット周辺に異常がない場合、次に疑う部分はPC内部の何らかの障害ということになる。まず疑うべきは、電源ユニットとマザーボード、および電源スイッチとの接続だ。電源ユニットとマザーボードをつないでいる専用の電源ケーブルが正しく接続されていないと、マザーボードに電力が供給されないので、当然ながら電源はオンにならない。
マザーボードと電源ケーブルの接続が完全ではない例 |
このようにコネクタが浮いていたりすると接続不良により、マザーボードへの電力供給が途絶えるなどのトラブルを招く。こうしたコネクタ同士の噛み合わせを含む接続状態を再確認しよう。 |
電源ユニットが通電していて、かつマザーボードに正しく電力が供給されているなら、マザーボード上にあるパイロット・ランプ(LED)が点灯しているはずだ。
マザーボード上にあるパイロット・ランプの例 |
赤矢印で指している緑色の部品がパイロット・ランプだ。これが点灯しているなら、マザーボードに電力が供給されていることになる。パイロット・ランプの有無や設置場所に標準はないので、PCのマニュアルを参照してパイロット・ランプの位置を確認し、AC電源ケーブルを電源ユニットにつないでみて、ランプが点灯するかどうかを調べてみよう。 |
パイロット・ランプが点灯していて、フロントパネル側の電源ボタンを押してもPCが起動しない場合は、そのボタンとマザーボードとを接続しているケーブルの接続を確認しよう。これが外れているとマザーボードにボタンの操作は伝わらず、電源はオフのままになるからだ。PCケースの内部に手を入れた場合は、このように内部ケーブルの接続も十分に確認したい。
電源ユニットやマザーボードの故障の可能性は?
さて、マザーボード上のパイロット・ランプが消灯している場合は、より厄介なトラブルかもしれない。すなわち、電源ユニットやマザーボードが故障していて正常に動作しない、というトラブルだ。フロントパネル側の電源ボタンを押してみて、電源ユニットの冷却ファンが回るようなことがあるなら、マザーボードに故障を含む何らかのトラブルがある可能性がある。万が一、マザーボードの故障だとしても、マザーボードの交換はPCのパーツの中で最も難しく、またメーカー製PCなら交換用部品としてマザーボードを入手することも困難なので、素直にメーカーでの修理を受けた方が得策だ。
逆に何をしても冷却ファンを含む電源ユニットがまったく反応しない場合は、電源ユニット側の故障を疑うことになる。これもメーカーによる修理を受けるか、可能なら同型の電源ユニットを別途用意して交換して様子を見ることになる。電源ユニットのトラブルの症状については、本連載の「第6回 意外に故障の多いパーツ『電源ユニット』の基礎 1. 電源ユニットが故障しているときの症状」を参照していただきたい。
ただし、この時点で電源ユニットやマザーボードが故障していると判断するのは早計だ。マザーボードに取り付けてある各種パーツやケーブルの接続不良でショート(短絡)が発生し、マザーボードへの電力供給が止められている場合もあるからだ。マザーボード上の各パーツの装着やケーブル接続の確認については、次ページ以降で解説していく。
関連記事 | |
第6回 意外に故障の多いパーツ『電源ユニット』の基礎 1. 電源ユニットが故障しているときの症状 |
INDEX | ||
[連載]PCメンテナンス&リペア・ガイド | ||
第10回 ハードウェア・トラブル解決法指南 | ||
1.電源に関わるトラブルは電源ユニットから疑う | ||
2.画面が表示されない原因はグラフィックスだけにあらず | ||
3.メモリやドライブは接続を再度確認 | ||
「PCメンテナンス&リペア・ガイド」 |
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