連載

PCメンテナンス&リペア・ガイド

第10回 ハードウェア・トラブル解決法指南
― PC起動時に生じるトラブルの原因とは?―

2. 画面が表示されない原因はグラフィックスだけにあらず

林田純将
2002/10/24


画面に何も表示されないときは?

 PCの電源オンと起動には成功しているし、ハードディスクの動作音(スピンドル・モーターが回転している音)も聞こえているのに、画面に何も表示されないという場合は、最初にディスプレイ自体とその周辺をチェックしよう。まずはPC本体と同様に、電源ケーブルが正しく電源コンセントと接続されていて、ディスプレイの電源がオンになっていることを確認する。次に、PCからのディスプレイ・ケーブルがディスプレイ側の入力端子が正しく接続されていることを確かめよう。もしディスプレイが2系統以上の入力を装備している場合は、PCと接続した側の入力端子が表示画面として選択されていることも確認しておくこと。

 ディスプレイ側に異常が見つからなければ、今度はPCのグラフィックス・カード周辺をチェックしよう。まずは、ディスプレイにつながったディスプレイ・ケーブルが正しくPCのディスプレイ端子に接続されていることを確認する。最近のPCで注意が必要なのは、複数のディスプレイ出力端子を装備している場合があることだ。例えばオンボード・グラフィックス搭載済みのところにグラフィックス・カードを増設したPCや、デュアル・ディスプレイに対応した2系統出力可能なグラフィックス・カードを装備したPCが挙げられる。いずれも、PC起動直後の初期画面が出力されるディスプレイ端子はどれか1つであることが多いので、ケーブルを接続する端子をもう一方の端子に変えてみるなどして、正常に画面が表示される端子であるかどうかを試してみよう。

 PCの内部に手を入れた場合、触ったつもりはなくても、グラフィックス・カードがスロットから抜けかけるといったこともある。スロットから外れかかっていれば、当然グラフィックス・カードは正常に動作しなくなり、画面も表示されなくなる。パーツの増設/交換を行った場合は、グラフィックス・カードをスロットへ差し直すとよいだろう。グラフィックス・カードを含む拡張カードの装着方法は、本連載の「第5回 ブロードバンドの前準備、イーサネット・カードを増設しよう 3. カードの装着は慎重にゆっくりと」を参照していただきたい。

グラフィックス・カードがAGPスロットから抜けかかっている例
茶色のAGPスロットに装着されているグラフィックス・カードが、スロットから浮いていて金色の端子部分が斜めになっているのが見える。こうなってしまうと、電気信号が正常に伝送されず、グラフィックス・カードはまともに動作しなくなってしまう。それが、画面が表示されないというトラブルにつながるわけだ。

 画面が表示されない場合、ついついPC側を先に疑ってしまい、PCの電源のオン/オフを繰り返して動作を確認したくなるものだ。しかし、ハードディスクへのアクセス中に電源をオフすると、最悪の場合ハードディスクの故障を引き起こしかねない。最低限、強制的に電源をオフにするときには、ハードディスクのアクセス・ランプが消灯しているときにしたいし、無闇に電源オン/オフを繰り返すのは避けたい。

画面が表示されないもう1つの原因

 実は、ディスプレイやグラフィックス・カードが正常に稼働していても、画面が表示されない場合がある。それはPCの電源がオンになって、画面表示の初期化が行われる直前までの間に、何らかのハードウェア・エラーが検出されて初期化シーケンスが停止してしまった場合だ。このようなとき、PCのBIOS ROMに含まれるPOST(Power-On Self Test)のプログラムは、エラーの発生を画面表示でユーザーに知らせることができないので、一般的にビープを鳴らしてエラーを報告する。BIOSの種類によっては、エラーの種類に対応した出力パターンで個別にビープ音を鳴らすものもある(これをビープ・コードと呼ぶ)。

 画面表示より先に初期化されるのはPCにとって非常に基本的なデバイスであり、代表的なのはプロセッサとメイン・メモリだ。このうち、プロセッサに異常が生じた場合は、POSTもロクに実行できずにハングアップしてしまい、ビープ音も鳴らせないことが多いようだ。従って、画面に何も表示されずにビープ音が鳴り響く場合は、おおざっぱにいってメイン・メモリかグラフィックス(画面表示)のいずれかが正常に初期化できなかった可能性が高いことになる。

 このうち、グラフィックスについては前述のようにチェックすればよい。メモリ・モジュールについては、まずメモリ・モジュールが傾いたりせず、しっかりとスロットに装着されていることを確認しよう。もしメモリの増設や交換を行った直後ならば、追加または交換したメモリ・モジュールがPC側の要求する仕様(PC133やECCの有無、Unbuffered/Registeredなど)を満たしているか再確認しておく。さらに、PCによってはメモリ・モジュールを各ソケットに装着する際に、容量の小さなものからソケットの1番から差す、といった具合に、特定の条件を持つものがある。こうした制限がないかどうかPCのマニュアルで確認するのも忘れないようにしたい。

メモリ・モジュールがソケットに正しく装着されていない例
これはSDRAM DIMMの例。前述のAGPスロットと同様に、メモリ・モジュールもまた装着に失敗しやすいので要注意だ。
  正常ではないレバーの状態
レバーがメモリ・モジュールのへこみに、しっかりとはまり込んでいない。
  完全にはソケットに収まっていない端子部分
メモリ・モジュールの端子部分がソケットに対して斜めに傾いでしまっている。これでは、正しい端子の接触は望めない。

 それでもトラブルが解消しない場合は、メモリ・モジュールそのものの故障が考えられるので、同規格で別の製品と差し替えて動作を確認してみよう。

隠ぺいされるPOSTのメッセージ
 
PCによっては、メモリ・チェックなどを行っている間、POSTの過程や結果をディスプレイに表示せず、代わりにメーカー・ロゴなどのグラフィック・イメージを表示していることがある。この場合も、POSTが出力するメッセージが表示されていないだけでPOSTの処理自体は実行されている。

 なぜ、わざわざPOST中の表示を隠ぺいするのか。どうやらこれは、PCに詳しくない(大多数の)ユーザーに対するPCメーカー側の「配慮」のようだ。こうしたユーザーにとって、POSTが出力するメッセージは意味不明の英数字の羅列でしかなく、表示してもユーザーの混乱を招くだけだ、と見なすこともできる。そこでPOST中は何らかのグラフィックス・イメージを表示して、POSTが出力するメッセージを隠ぺいしてしまおう、というわけだ。また、POST後に表示されるBIOSセットアップの呼び出しキーの表示も一緒に隠ぺいすることで、うかつにBIOSセットアップが呼び出されて設定が変更されるのを防ぐ、という意図もあるようだ。

 もしPOST中にエラー発生したら、グラフィックス・イメージが消えてエラー・メッセージが表示される、というパターンが多い。しかしそれでも、普段のPOSTメッセージが表示されないとトラブル・シューティングの情報が得られないため、PCの管理者としては非常に困る。幸いなことに多くのPCでは、グラフィックス・イメージの表示中に特定のキー(ESCキーやF8キーなど、BIOSやPCメーカーによって異なる)を押すとPOST表示に切り替えるよう設計されている。さらにBIOSセットアップを使って、グラフィックス・イメージの表示を禁止する設定項目が用意されていることもある。PCのBIOSセットアップのマニュアルを参照して、こうした設定をカスタマイズしておくと、いざというときに困らずに済む。

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POST中に表示されるメーカー・ロゴ表示の例
PCの管理者にとって、左のような全画面表示のロゴは邪魔なだけなので、可能ならBIOSセットアップの設定を変更して、右のように全画面ロゴ(グラフィックス・イメージ)を表示させないようにした方が便利だろう。

 次ページでは、メモリとドライブ類のトラブルについて解説する。  

  関連記事 
第5回 ブロードバンドの前準備、イーサネット・カードを増設しよう 3. カードの装着は慎重にゆっくりと
 

 INDEX
  [連載]PCメンテナンス&リペア・ガイド
  第10回 ハードウェア・トラブル解決法指南
    1.電源に関わるトラブルは電源ユニットから疑う
  2.画面が表示されない原因はグラフィックスだけにあらず
    3.メモリやドライブは接続を再度確認
 
「PCメンテナンス&リペア・ガイド」


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