連載 PCメンテナンス&リペア・ガイド

第6回 意外に故障の多いパーツ「電源ユニット」の基礎

1. 電源ユニットが故障しているときの症状

林田純将
2002/01/10

 電源ユニットに問題があれば交換したほうがいい、と言うのは簡単だが、電源ユニットに問題がでた場合、どのような症状があらわれるのだろうか? 以下に、その症例を挙げてみた。

■まったくPCが起動しない
 電源スイッチを入れた後、PCがまったく起動せず、電源内部にある空冷ファンも回転していないという症状だ。電源コンセントが正しく接続されており、電源ユニットにAC100Vが正常に入力されているなら、電源ユニット自体が故障していてマザーボードやドライブなどに電力が供給されていない可能性がある。特に、電源ボタンを押したときに空冷ファンが少し動くような場合は、マザーボードの故障ではなく、電源ユニット自体に問題があることが多い。

■起動中にハングアップまたはリセット
 PCの電源はオンになるものの、BIOSによる初期化やOSの読み出しなどの最中にハングアップしたり、リセットしたりするというケース。これは、電源ユニットから供給される電力の出力が不安定な場合に生じる症状の1つだ。PCは起動する際に比較的大きな電力を必要とするため、電源ユニットの負担も重くなる。そのため、電源ユニットに異常があると、起動中に出力が不安定になってハングアップしたり、リセットしたりするというわけだ。ハングアップやリセットの頻度は、不安定さの度合いに依存するため、たまにハングアップやリセットが起きるが再起動すればたいてい成功するということもある。CD-ROMドライブやサウンド・カードなどOSの起動に直接関係のないデバイスを外しても同様の症状が発生する場合は、電源ユニットの出力が大幅に落ちているので交換が必要だ。

■電源オフ時や再起動時のトラブル
 最近のPCなら、ソフトウェアから電源をオフにできるものが大半を占める。電源ユニットに異常が生じると、OS上から電源オフを指示したにもかかわらず再起動したり、逆に再起動を指示したのに電源がオフになったりすることがある。特にデバイスの追加やデバイス・ドライバの変更を行っていないにもかかわらず、この症状が発生したら電源を疑った方がいい。

■電源スイッチ以外の方法による電源オンに失敗
 最近のPCでは、Wake On LAN(ネットワーク・デバイス教科書 第5回参照)によるリモート環境からの起動や、キーボード/マウスの操作による電源オンが可能な製品が増えている。これらはネットワーク・カードやマザーボードに統合された電源をコントロールする回路で実現されており、電源スイッチとは別個に電源のオン/オフを行う機能が実装されている。そのため、電源ユニットの不良あるいは仕様の問題によって、たとえ電源スイッチで電源のオン/オフが可能でも、リモートやキーボードなどからの電源オン/オフが効かない(あるいはときどき効かなくなる)ことがある。

■スタンバイ/復帰で失敗
 ノートPCに限らずデスクトップPCでも、スタンバイとその復帰ができるようになってきたが、電源ユニットに問題があると、スタンバイを指示したら再起動してしまった、という不具合が生じることがある。電源オフ時や再起動時と同様、特にシステム構成を変更していないにもかかわらず、突然このような症状が起きたら電源ユニットが怪しい。

■稼働中に突然リセットまたはハングアップ
 電源ユニットの動作が不安定になっている場合、何をしたときということもなく、ランダムなタイミングでPCがリセットまたはハングアップすることがある。ファイルを書き込むときなどに突然リセットするといった場合は電源ユニットが不安定になっている可能性が高い。ハードウェアやソフトウェアを変更した覚えがないのにこうした症状が現れた場合は、電源ユニットも疑ってみたほうがよい。

空冷ファン
電源ユニットの内部には、このような空冷ファンが設置されていて、パーツの発熱による暖気をPCケースの外部に排出する役目を担っている。電源回路自体は無事でも、この空冷ファンが故障することは、意外に多い。

■電源ユニットから異音がする
 ソフトウェアの動作には特に問題ないものの、PCの電源ユニットあたりからブーンという異音がする場合は、電源ユニット内部に取り付けられた空冷ファンの故障が原因であることが多い。経年変化などで空冷ファンのモーター軸受けにガタツキが生じ、空冷ファンの羽根が異常に振動してしまうためだ。そのまま放っておくとファンの停止につながるので、空冷ファンまたは電源ユニットごと交換すべきである。

■ケース内温度が異常に上昇する
 これは電源ユニット内の空冷ファンが、故障して停止してしまった場合に起きる症状だ。電源ユニット内の空冷ファンは、ケース内部の暖まった空気を排気する役割も果たしていることが多いため、これが止まると内部温度が急速に上昇しやすい。するとPC内部の半導体パーツが熱のために動作不良を起こし、PCがハングアップしてしまう危険性がある。電源ユニット背面の排気口から風が出てこないなどの症状があったら要注意だ。なお、温度が高くならないと空冷ファンが回転しない電源ユニットもあるので、空冷ファンが回転していないからといって故障と決め付けるのは早計である。

■内蔵ドライブの増設による供給電力の不足
 従来は問題なくPCを使用できていたのに、内蔵タイプのCD-R/RWドライブを導入したら、ライティング時にハングアップするようになったなど、電源ユニットの故障でなくとも、ハードウェアの構成を変えたことで電源ユニットの能力を超えた電力供給が必要になり、PCの動作が不安定になる場合もある。こうした場合も、より出力容量の大きな電源ユニットへの交換が必要になる。

電源ユニットの異常を特定するのは難しい

 このように、電源ユニットの異常によるトラブルは、実にさまざまな症状を引き起こす。厄介なのは、こうした症状は電源ユニット以外の問題によっても発生することがあり、電源ユニットに原因があると特定するのが困難な場合が多いことだ。

 例えば、PCの突発的なハングアップやリセットは、デバイス・ドライバの不具合でもよく生じることだ。また起動中のハングアップは、ブート・セクタやOSのブート・ローダ、システム・ファイルなどが破壊された場合に現れる現象でもある。スタンバイの失敗は、OSの省電力機能の不具合で生じることもある。まったく電源が入らない場合は、電源ケーブルの接続不良やマザーボードの故障も原因として考えられる。

 そのほか、電源コンセントでの電圧がAC100Vを大きく下回っている(80V〜90V台)と、電源ユニット自体に問題がなくても、PC内部パーツへ供給される電圧が下がったり電流が小さくなったりして、同様のトラブルが生じることがある。特にタコ足配線を行っている場合や、全体の供給電力の限界が低くなっている古めのオフィス・ビルでは、電圧が下がることがあるので、この点も疑う必要があるだろう。

 結局、上記のような症状が現れた場合は、もしかしたら電源ユニットの異常が原因かもしれないので、「とりあえず電源ユニットを交換して様子を見る」ということが有効な手段の1つである。このために、予備の電源ユニットをあらかじめ用意しておくと便利である。

  関連リンク 
デスクトップPC「Dimension」シリーズの製品情報ページ
 
 

 INDEX
  [連載]PCメンテナンス&リペア・ガイド
  第6回 意外に故障の多いパーツ「電源ユニット」の基礎
  1. 電源ユニットが故障しているときの症状
    2. 電源ユニット規格の歴史と種類
    3. ATX対応電源ユニットの注意点
 
「連載:PCメンテナンス&リペア・ガイド」
 


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