特集
x86互換の64bitプロセッサ「AMD Opteron」の実力と課題
2. AMD Opteron搭載サーバの実用性
元麻布春男
2003/07/24 |
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AMD Opteron搭載サーバの中身
AMD Opteronは、PCではなくサーバ/ワークステーションが対象のプロセッサだけに、発表すればすぐに顧客がつき売れる製品ではない。32bitと64bitの両環境をサポートし、移行の容易さをうたうAMD64といえども、新しいハードウェアだけに、プロセッサそのものに加え、チップセットやBIOS、マザーボードなど、ハードウェアのあらゆる段階で、OEMあるいはユーザー・サイドでの動作検証が必要となる。
加えて、当然のことながらソフトウェアにも検証が欠かせない。特に、64bit OS環境については、OSの整備そのものがまだ途上にある。ましてや、その上で動くミドルウェア類、さらにはユーザー・アプリケーションの動作検証となると、まだまだ時間を要することだろう。ただ、これは何もAMD64に限った話ではなく、2年先行したIPFにも、同じことがあてはまる。まったく新しいアーキテクチャを採用したIPFは、ようやくWindowsのサポート(Windows Server 2003 Enterprise Edition以上)が始まったところだ。サーバの顧客は一般に保守的で、検証や移行にはたっぷりと時間をかけることでも知られている。AMD Opteronの立ち上がりは、長い目で見る必要がある。
とはいえ、検証作業を行うには、AMD Opteronが採用されたシステム(サーバ)が不可欠だ。これがなくては実際のコードを用いた動作検証はできない。残念ながら、現時点で大手サーバ・ベンダからのシステム出荷はないものの、ボツボツとAMD Opteron搭載サーバが入手可能になってきた。前述のようにIBMは、すでにAMD Opteron搭載サーバをリリースすることを表明している。そう遠くない将来、IBMからもAMD Opteron搭載サーバが出荷されることになるだろう。
ここで紹介するAngstrom MicrosystemsのTitan64は、AMD Opteronを搭載したラックマウント型サーバである。日本では、ベストシステムズが販売代理店となっている。Angstrom Microsystemsのサーバ(AMD AthlonおよびIntel Xeonベース)はPixar、Philips、Akamaiといった企業への納入実績があるという。今後は、AMD Opteronを搭載したサーバに力を入れる方針であることを明らかにしている。Titan64のベースとなったのは、「NEWISYS 2100」と呼ばれるシステムである。開発元であるNewisysは、AMD Opteronの登場に合わせるかのように、2000年に設立された新興企業だが、創業メンバーにはIBM出身者を中心に業界のベテランが顔を揃えている。
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Angstrom MicrosystemsのAMD Opteron搭載サーバ |
1UサイズにAMD Opteronをデュアル構成で搭載可能。Newisysという新興企業のマザーボード・デザインを採用している。 |
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Titan64のブロック構成図 |
そのTitan64だが、デュアルプロセッサ構成をサポートした1Uサイズのラックマウント型サーバである。今回試用したシステムはAMD Opteron Model 240(最大2プロセッサ構成をサポートした、動作クロック1.4GHzのAMD Opteron)のデュアルプロセッサ構成である。BIOSはPhoenix製で、見た目、内容ともに一般的なPC用のものと大差ない。ストレージは、ノートPC用の薄型フロッピードライブとCD-ROMドライブに加え、IDEもしくはUltra320 SCSIインターフェイスを用いて、最大2台のハードディスクが内蔵可能で、Ultra320 SCSIの場合はホットスワップも可能だ。今回試用したシステムは、Ultra320 SCSIのハードディスク(36Gbytes)が1台インストールされていた。
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Titan64の前面 |
ホットスワップ可能なハードディスク・ベイが2つと、薄型のフロッピードライブとCD-ROMドライブが装備されている。CD-ROMドライブの左側にあるLCDパネルは、システム管理用プロセッサの設定に利用する。 |
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Titan64の内部 |
2本の拡張スロットを持つためか、1Uサイズの割には、内部に余裕がある印象を受ける。電源ユニットは、2重化されていないばかりか、固定されているため簡単に交換することもできない。 |
メイン・メモリは、プロセッサごとに4個ずつ用意されたDIMMソケットに装着する。AMD Opteronはプロセッサ自身がデュアルチャネル(1チャネルが64bit幅)のメモリ・コントローラ(ECC対応)を内蔵しており、上の4個ずつというのは、1チャネル当たり2つのDIMMソケット、ということである。AMD Opteronの内蔵メモリ・コントローラは、DDR-266までならチャネル当たり4つのDIMMソケット(プロセッサ当たり8本)をサポート可能だが、DDR-333を利用するとチャネル当たり2つのDIMMソケット(プロセッサ当たり4本)に制限される。Titan64の仕様は、DDR-333を前提にしたものといえる。本機がサポートするメモリは、レジスタ付きECCメモリ・モジュールで、モジュールあたり2Gbytesが最大である。従って、プロセッサ当たり8Gbytes、デュアルプロセッサ構成時で最大16Gbytesが実装可能となる。
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Titan64のメモリ部 |
AMD Opteronはプロセッサがメモリ・コントローラを内蔵しているため、プロセッサごとにメモリが実装される。Titan64では、DDR-333(PC2700)対応となっており、1プロセッサ当たり4本のDIMMソケットをサポートする。 |
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