特集
x86互換の64bitプロセッサ「AMD Opteron」の実力と課題
3. HPC用途のサーバとしては最適なAMD Opteron搭載サーバ
元麻布春男/デジタルアドバンテージ
2003/07/24 |
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AMD Opteronはメモリ・バスとは別に、システム・バスとしてHyperTransportのリンクを3本備える。双方向でリンク当たり6.4Gbytes/sの最大データ転送速度を備えるHyperTransportのうち、1本がプロセッサ間の接続に使われ、残る2本のうち1本にチップセット(PCI-Xブリッジチップ)であるAMD-8131が、残る1本にシステム管理用プロセッサ(Motorola製)が接続される。このシステム管理用プロセッサは、電源ユニットのモニタや冷却ファンのコントロールなどを行うことが可能で、独立した100BASE-TXのイーサネットを2ポート装備する。システムの状態などは、Webブラウザによって見ることが可能だ。なお、メモリ・コントローラをプロセッサに内蔵しているAMD Opteronの場合、いわゆるノースブリッジ・チップは存在しない。
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AMD Opteronのブロック図 |
AMD Opteronは、DDRメモリ・コントローラとHyperTransportのインターフェイスを内蔵している。メモリ・コントローラを内蔵することで、世代交代のサイクルがメモリのサイクル(DDR-400からDDR-II 400への移行など)に左右されるというデメリットはあるが、一方でメモリ・アクセスの遅延を短くすることで性能向上がさせやすいというメリットがある。 |
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システム管理用プロセッサ部 |
写真の中央のチップがMotorola製のシステム管理用プロセッサ。その右にあるLattice Semiconductor製のチップは、管理用プロセッサとプロセッサ(AMD Opteron)を接続するためのインターコネクト・スイッチと思われる。左上の緑色のヒートシンクが付いたチップは、Trident Microsystems製のグラフィックス・チップ「Blade 3D」だ。 |
PCI-XブリッジチップであるAMD-8131は、64bit/133MHzのPCI-Xスロットと64bit/66MHzのPCI-Xスロット各1本の合計2スロットを提供するほか、オンボードに2ポート用意されたギガビット・イーサネット・ポート(チップはBroadcom製)とUltra320 SCSI IFの内部接続にも用いられる(64bit/66MHz PCI-X)。また、AMD-8131には800Mbytes/s(双方向)のHyperTransportを用いて、サウスブリッジ・チップであるAMD-8111がデイジーチェーン接続されている。AMD-8111はVGA(Trident Microsystems製Blade 3D)、USB 2.0、IDE(UltraDMA/100)といったI/O機能に加え、LPCインターフェイスを通じてスーパーI/Oチップ(PS/2キーボードおよびマウス、フロッピー・コントローラ)のサポートを行う。電源ユニットは465Wの容量を持つ大型のものだが、内蔵可能なのは1台のみで、冗長性を持たせることはできない。ここ1年程度に発表されたラックマウント型サーバでは、1Uサイズであっても電源を2重化したものが増えてきている。また、データセンターなどで採用が増えつつあるDC電源に対応した電源ユニット(DC-DCコンバータ)を内蔵可能としたものも多い。その点Titan64は、PCI-Xなどの拡張性を優先し、電源ユニットの2重化はあえてしていないようだ。
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LSI Logic製Ultra320 SCSIコントローラ「LSI53C1020」 |
LSI53C1020は、シングル・チャネルのUltra320 SCSIコントローラで、PCI-Xで接続される。 |
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Broadcom製の1000BASE-T対応イーサネット・コントローラ「BCM5703」 |
1000BASE-Tを2ポート装備しているため、2つのイーサネット・コントローラが実装されている。どちらもPCI-Xに接続される。 |
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Titan64の背面 |
右側のイーサネット・ポートが1000BASE-T対応のもの、中央のポートがシステム管理用のもの。USBも1ポート装備する。 |
Titan64は、ラックマウント型サーバとしては最も薄い1Uサイズに、デュアルプロセッサのパワーを詰め込んだ高密度サーバだ。Angstrom Microsystemsは、主に3Dグラフィックス向けのレンダリング・サーバやバイオテクノロジ向けの計算サーバなど、どちらかというとハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)のソリューションを中心としている。前述のように電源を2重化し、単体の冗長性を向上させるよりも、複数のサーバをクラスタリングし、システム全体としての冗長性と性能向上を実現する指向にあるようだ。Titan64は、そのベースとなるサーバということになる。Titan64自体は、AMD Opteronを搭載した最初のサーバということもあり、価格もこなれているとはいえないが(メモリ512Mbytesの最小構成で260万円から。今回試用したシステムはかなり拡張されている)、将来的には手軽なHPCのベースとして利用されることになるだろう。
AMD Opteronは64bitサーバの主流となれるのか?
今回は残念ながら性能を独自に評価するまでには至らなかった。しかし、AMDのベンチマーク・テストの結果によれば、性能的には十分にIntel Xeonに対抗できるものとなっている。すでにx86命令に対応したサーバ向けアプリケーションは豊富にあり、32bit環境ならばすぐにでもAMD Opteron搭載サーバは活用可能だ。一方、64bit環境となると、AMD64 ISAの64bit環境に対応したLinuxはリリースされているものの、AMD Opteron対応のWindows Server 2003は第4四半期に正式出荷の予定である。Oracle9iは、現在、Oracle Technology Networkで開発者向けにAMD64 ISA対応の「Oracle9i Developer Release 1 (9.2.0.3.0) for Linux x86_64 on AMD Opteron」を提供しているが、製品化の時期については明確化されていない(ダウンロード・ページ)。そのほかのミドルウェアやアプリケーションについても、同様にいつごろから製品が出荷となるのか見えていない。AMD64に期待している一方で、ある程度普及してから対応したいという各ソフトウェア・ベンダの意図が見える。AMD64 ISA対応のソフトウェアがそろうには、もう少し時間がかかりそうだ。
では、AMD Opteronは64bitサーバとしての使い道はないのだろうか。1つは、Titan64がターゲットとしているHPCのベース・サーバである。AMD Opteron搭載サーバの出荷を宣言しているIBMも、AMD OpteronをまずはHPC市場に投入するようだ。HPC市場ならば、AMD64 ISA対応のLinuxさえ動作すれば、汎用アプリケーションはそれほど重要ではないからだ。こうした市場である程度の実績をつめれば、AMD64 ISA対応のアプリケーションが増え、企業内においてもAMD Opteron搭載サーバが64bit環境で使えるようになるだろう。
逆にいえば、いまのところAMD Opteron搭載サーバの64bit環境に多くを期待すべきではない、ということでもある。現時点でAMD Opteron搭載サーバの導入を検討する場合、32bit環境における性能や価格で比較したい。ただ、サーバのライフサイクルは通常4年以上あるので、その間に64bit環境が整い、追加コストなしに移行できる可能性があるという将来性は考慮してもいいだろう。
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