Windows 7で、どんだけ“おばか”なアプリが作れるの?

Windows 7で、どんだけ
“おばか”なアプリが作れるの?

おばかアプリ座談会

@IT編集部
2010/3/4

Windows 7のマルチタッチの良さは、“大画面”にあり

山本 僕は特に、マルチタッチ部門が気になります。3DもARもセンサも頑張れば、Windows 7ではなくてもアプリが作成可能ですよね?

長坂 そうですね。

山本 マルチタッチだけは違うかなという気がしていて、Windows 7ならではのタッチというのは、楽に実装できる点と、プラットフォームとして普及しやすい点があるのではないでしょうか。また、Windows 7だとほかの機能と組み合わせて作れるというのは、アプリの可能性が広がりやすいのではないでしょうか。そういう方が「Windows 7ならでは」ということになりやすいと思います。

太田 確かに、センサとARというのは、すごくやりやすいと思いますね。

渡辺 その2つがあったら、ドラえもんの道具ができそうですね。

――ドラえもんの道具のようなSF的な世界は、ARやセンサなどで実現できそうですね。

渡辺 「スモールライト」を作りたいです。

瀬尾 ARで?

渡辺 はい。

瀬尾 それは、いいですね。

林 キレイなジャイアンってありましたね。泉に落ちて帰ってきたら、キレイになっていたっていう。これをぜひ、モテ部門で!

渡辺 タッチディスプレイは、押す強さはどれくらいまで感知できますか?

太田 それは、パネルの性能次第ですね。

長尾 パネルを押した面積は取得できますが。

瀬尾 圧力は感知できたりしますか?

太田 それは、取れないのではないでしょうか。静電式など、いろいろと方式がありますが。

山本 いま、Webで検索して見つけました。「圧力は感知しません」と書いてありますね(参考「Windows 7 のマルチなタッチでエクスペリエンス」)。僕はマルチタッチが一番面白そうだなと思っていまして、アップルさんは大きな画面でマルチタッチできるという方向には進まなさそうなんですよ。iPadが出ましたけど、「ディスプレイをベタベタ触るのは、インターフェイスとして、いかがなものか」という感じの偉い人の発言があったと思います。

長坂 たしかに、PCとして考えるとそうですよね。だけど例えば、ディスプレイを寝かせてしまえば、いろいろなことがやりやすいでしょう。

山本 大画面で、たくさん触れるのは、いまのところWindows 7しかないのかなと。

太田 たしかに、普段立っているディスプレイを寝かせるだけで、印象が大きく変わりますね。

瀬尾 そうですよね。

太田 マルチタッチだと、複数人が操作できます。いままでのPCだと、1対1だけでしたが、それが複数人が同時に触れるというのは、いままでになかったのではないかと。

林 大きい画面を寝かして使うなら、カルタとかができるということですよね?

長坂 ほかにも、百人一首とか。

瀬尾 右手を青、左足を赤、という感じで動くツイスターゲームをリアルにやれますね。マルチタッチをサポートするのは、画面付きのものと、そうではないものがありますか?

太田 いわゆる「デジタイザ」みたいなものということですか?

瀬尾 そうですね。

長坂 できますよ。ワコムさんなどが提供しているペンやタブレットなどの入力装置もありますね。

瀬尾 巨大な絨毯状のタッチできる入力装置にプロジェクタで映像を投影するといいのではないかと思っていて、巨大なディスプレイを寝かせるのと違い、上に載ってもバリンッと割れる心配がなくなるといいですね。

サイバーエージェント 渡辺氏
サイバーエージェント 渡辺氏

渡辺 私は逆に、タッチ機能でスクリーンを割りたいですね。仕事でイライラしたときに、タッチ機能が付いたディスプレイを殴ると、バリーンッと割れるグラフィックになるみたいな。

――それは、ストレス解消になりそうですね。殴る強さによって割れ具合も変わるようなものですよね?

渡辺 そうですね。それでさっき、どれぐらいの強さまでタッチで感知できるかを聞いたんです。

太田 それは、加速度センサを備えたデバイスを使うなどどうでしょう。

渡辺 もしくは、脳波を見て「イライラしているときにディスプレイを殴ると、すごく割れる」といったことが実現できるといいですね。

長坂 なるほど。それは、いいですね。

山本 社内では、その逆でタッチインターフェイスで触れる優しさはどこまで感知できるのかという話をしたことがあります。

高須 触れる「ラブプラス」みたいなアプリができないかなと話していて、優しさが数値化できると、撫で方でどうかで愛情を数値化できるのではないかと。

瀬尾 表示できる画面のサイズは、OSとして限界はありますか?

長坂 詳しくは分からないけど、それはビデオ(ビデオボードやグラフィックカードなど)の性能によるでしょうね。

瀬尾 ああー、なるほど。例えば、4000×4000ピクセルぐらいのタッチの画面を使って1ピクセルのものを探すアプリ。

長坂 「ウオーリーを探せ」みたいな。

太田 「ウオーリーを探せ」は面白いですね。Deep Zoomの機能も使って。

脳波アプリは、流行るのか?

瀬尾 モテ部門で脳波を使うのはありですよね。あるフラグを立てるためには、すごく集中した後にリラックスしなきゃならないみたいな。まさに、喜怒哀楽をアプリともにすると。

山本 それ、モテ部門ですかね(笑)。

――脳波をどう使うかは、やっぱりセンサ部門ではないですかね……。

瀬尾 女の子の前で、緊張しているかどうかを脳波で測るとか。

太田 そういうのは、すでにあるみたいですね、米国のアーチェリーのオリンピックチームが脳波を使ってメンタルトレーニングをしているそうです。

林 へぇー、すこい! 脳波はアスリート向けですね。

瀬尾 それは、集中力を上げるためにですか?

太田 スポーツは集中しつつ、リラックスしている状態が一番良いらしいですね。その状態を、自分でコントロールして出せるようにということでしょう。すごい弱いチームらしいですけど。

林・瀬尾 メンタルだけは強いと。

太田 でも、かなり強くなってきているらしいですよ。

――センサを使うにはデバイスが普及しないといけないですが、特に脳波センサは手に入るものなのでしょうか?

太田 脳波センサのデバイスは世界中でいろいろ出ていますよ。脳波マウスとか。

長坂 脳波マウスって、何?

太田 カーソルを集中して手を使わずに意識で動かすマウスですね。中には高いものもありますが、ニューロスカイのMindSetや脳波マウスはそれほど高くありません。1〜2万円台だったと思います。

――それぐらいの値段でしたら、脳波を使ったアプリがはやり出すかもしれませんね。

太田 Windows 7のセンサAPIを使えば、WPFなどですぐに作れますからね。

アプリに“連射”は不要。だからこそ逆に……

――なかなか触れられませんが、今回のイベントでは「連射」部門も作ってみました。例えば、タッチのデバイスに触れて離れる瞬間の速さは、どの程度測れるのでしょうか。

太田 どれくらいでしょうかね?

長坂 考えたこともなかったなあ。

林 かなり速いのでも、大丈夫ですか?

――例えば、「1秒間に16連射」と昔からよくいわれていますが、やはり、それもデバイスに依存しますか?

太田 そうですね。後、ネイティブコードを書けば、かなり速いものも認識できると思います。マネージドコードだと、ちょっと遅くなるかもしれませんね。

瀬尾 連射は、ARと組み合わせたいですね。

渡辺 エアソロバンとかできそう。

太田 連射も結構面白そうですけどね。特に、連射アプリで連射している姿が面白そうです。

長坂 キーボードでは、できるの?

太田 キーボードでですか。

――キーボードでも、連射ができればいいとは思いますが、タッチのインターフェイスがあるので、できれば、それを生かせる方がいいのではないかと思いますが。

太田 そうですね。普通のアプリだと、あまり認識速度に忠実にしてしまうと、ブレたりして誤動作の原因になります。普通のアプリの場合、いかにそれをなくすかがポイントになりますから、これはその逆ですね。だからこそ、結構面白いことができそうですね。

渡辺 昔のファミコンであった、「ファミリースポーツ」みたいなアプリが、皆で1つの画面でできると、楽しそうですね。

瀬尾 タッチでの画面で3人ぐらいで束になって連射して、高橋名人の速さに挑戦するとか。

太田 連射するのも、デバイスが立っているのと寝かせているので、やり易さが違うでしょうね。

林 プチプチを、すごく早くつぶす競争をしたいですね。

太田 3Dでリアルに表示して。

林 そう、リアルに。プチプチプチプチー……って。

アプリ作成ツールは? Windows 7 SDKとは?

――実際にWindows 7アプリを作るうえで、作成ツールが必要になると思いますが、やはりそれはVisual Studioが一番良いということでしょうか。

太田 はい、Visual Studio 2010ですね。

――いまのところ、まだベータ版ですよね。

太田 英語版ではRC版が出ましたね。.NET Framework 4もRC版で入っていて、中身をのぞくと、かなりいろいろなものが入っていますね。マルチタッチのAPIなど。

瀬尾 .NET Framework 4は音声認識などの機能も入っていますか?

面白法人カヤック 瀬尾氏と林氏
マイクロソフト 長坂氏と長尾氏(左から)

長尾 音声認識ではSpeech APIが入っていますが、日本語だと「どうかなあ」という感じです。

瀬尾 確か、読み上げはできますよね?

長坂 そういうアプリは、もうありますね。

――「Windows SDK for Windows 7」(以下、Windows 7 SDK)は、Visual Studioとはどう違うのでしょうか。中身は何が入っていますか?

太田 Windows 7 SDKには、基本的にWindows 7のCOM(Component Object Model)や、センサなどを使うためのAPIなどが入っています。Visual Studio 2010をインストールすると、Windows 7 SDKもインストールされます。

――いま、さまざまなプラットフォームベンダが、「まずSDK」という感じで提供していますが、そこでWindows 7もSDKを提供し始めたのは、何か狙いがあったのでしょうか。

太田 いえ、SDKは基本的にいままでのOSでもすべて出ています。VistaのSDKも出ていますし。

長坂 昔のバージョンから全部出ています。

――.NETの開発というと、どうしてもVisual Studioが、まず思い浮かびますが。

太田 Visual Studio 2010は.NET Framework上での開発が強化してあります。SDKはどちらかというと、COMなどのネイティブ系の、例えばマルチメディアを活用したい場合や、.NET Frameworkにない機能のためのものです。そういった場合は、Windows 7 SDKかVisual C++でゴリゴリにネイティブコードを書くか、マネージドとネイティブのInteropでラッパーを作るか、のどちらかになります(参考「C++ Interop (暗黙の PInvoke) の使用」)。

デスクトップガジェットはHTML+JavaScriptで作れる!

瀬尾 一番簡単にアプリの作成を始められそうなプログラミング言語の組み合わせなどはありますか?

太田 言語ですか。

――それは、やはりWindows 7デスクトップガジェットではないでしょうか。HTMLとJavaScriptの組み合わせだけでアプリが作れるという。

長尾 そうですね。

瀬尾 普段HTMLなどしか書かないWebデザイナが作る、初期衝動を持った煌めきのあるようなおばかアプリを見たいというのはありますね。「HTMLとJavaScriptだけで、こんなアプリが作れました」という感じの。

長尾 そういう意味では、ガジェットはデスクトップで動くものとして、一番軽くて、どちらかというと、よりアイデアが勝負かもしれませんね。

――ガジェットは、jQueryなどのJavaScriptライブラリを使っても作れますよね?

太田 そうですね。

――実際にガジェットを作るとなると、例えば、テキストディタで作ったHTML+JavaScriptに加えて、XMLでガジェットの定義を書くと、成立するということだったと思いますが。

太田 それは、Visual Studioでもできますね。JavaScriptのコード保管もIntelliSence機能でできるので、テキストエディタよりも便利です。

デザインツールは、まず無料の試用版から

――いままでのおばかアプリ選手権の作品には、デザインもしっかりしたアプリもありましたが、Windows 7アプリのデザインツールとなると、Expression Blendがありますが、使ったことはありますか?

林 インストールしたことはあったと思いますが……。なぜ自分が、なかなかWindowsのアプリになじめないのかというのは、「これで何ができるのか想像しにくい」というのがあります。特に、私はWeb系のデザイナですが、OSやデスクトップというところに自分が作ったアプリが乗っかるということに、ハードルがあるのかもしれません。

太田 そうですか……。普段は、どういったツールを使っていますか?

林 グラフィックのソフトが多いですね。

長坂 アドビさんのツールですか?

林 そうですね。でも、SilverlightはWebで使えるので、興味を持っていろいろやっていたこともあります。瀬尾さんに頼んだりしました。「Silverlightやろうよ」みたいな。

長坂 Expression Blendは、基本的にSilverlight/WPFアプリのデザインを作るものなので、それを使うのがいいですよ。無償版があれば、なおいいですが、90日間の評価版ならあります。

瀬尾 90日間あれば、今回のおばかアプリ選手権に参加するのに間に合いますね。ちょうど、手を付けるきっかけになりますしね。

長坂 評価版を推奨している感じになっちゃいますね(笑)。

瀬尾 たしかに。でも、何でも最初は評価版から始めますからね。

長坂 そうですね。いままで使ったことがない人が、いきなり買って始めるというのは、あり得ないので、今回のコンテストが良い機会だと思うので、ぜひ試してみていただいて、終わった後に、良ければ買ってくださいと。

太田 でも、後もうちょっとでアプリができるというときに期限が切れると、「ああ……」ってなっちゃいますね(笑)。

“おばか”な発想や受賞のコツとは

――では最後に、数々の受賞歴がある方々に教えていただきたいんでんすが、おばかアプリを思いつくコツや、おばかアプリ選手権で受賞するコツはありますか?

林 コツですか。いままで賞をいただいたんですが、優勝ではないんですけど……。なんかニッチなところを狙うと良いのではないかと思いますね。

瀬尾 そうですね。僕はプレゼンするときに何回魅せるポイントがあるかが大事かなと。ばかばかしいアプリを作ったけど、それをどのように見せるかを考えると、同じアプリでも見せ方によって評価は変わってくるのではないかと思います。

林 後、忙しい中仕事しつつも、くだらないものに掛ける真面目な大人の本気をプレゼンの場でアピールできるといいかもしれませんね。

――そういう意味ですと、今回は発表の場が、動画や画像なども使えるアイデア投稿なので、賞を狙うならば、ある程度作り込む必要があるかもしれませんね。

林・瀬尾 そうですね。

――サイバーエージェントさんはいかがでしょうか。

渡辺 多くの皆さんを笑わせるアプリを作るのは、結構難しいので、1人でも大爆笑してくれたら、その人にコミットして作って、その人だけを笑わせるぞという気持ちで作った方が楽しいアプリができるのではないでしょうか。お色気アプリもそうですよね? 男性を喜ばせるために作ったんですよね?

瀬尾 多分、あれ(「タニマニア」「パンティノン神殿」のアイデア)を考えたことがある人は、100人いたら5人はいたはずですね(笑)。

渡辺 その人たちには、すごい刺さっていますよね。まさに、ニッチなところを狙うというところです。

――ありがとうございます。第3回で優勝しているチームラボさんはいかがでしょうか。

山本 痒くないところにも手が届くアプリというのが、おばかアプリのところに書いてありますよね。

――はい、そうですね。一応、定義っぽいことを書いてあります。

山本 アプリを作る側はすごく痒いけど、それ以外の人は別に痒くなくても、皆が痒くないと面白いものは作れないので、「そこが痒い気持ちは分かる」みたいな微妙なラインを付くといいと思います。作る側は、自分がほかの人と比べて、ここが変だな、ここがズレているなというところを、真面目に追究すればいいのではないでしょうか。

――皆さま、本日はありがとうございました!


3/3  

 INDEX
おばかアプリ座談会
Windows 7で、どんだけ“おばか”なアプリが作れるの?
  Page1
“おばか”なアプリを作るための発想の源も探る
Windows 7のAPIで扱えるセンサは、こんなにある
脳波を使うと、どんなおばかアプリが作れるのか
マルチタッチのみならず、マルチマウスもできる!?
  Page2
センサもいろいろ、“おばか”もいろいろ
ダジャレから“おばか”なアイデアを考える
マウスの使い方に革命を起こした「アクトトイレ」とは
Page3
Windows 7のマルチタッチの良さは、“大画面”にあり
脳波アプリは、流行るのか?
アプリに“連射”は不要。だからこそ逆に……
アプリ作成ツールは? Windows 7 SDKとは?
デスクトップガジェットはHTML+JavaScriptで作れる!
デザインツールは、まず無料の試用版から
“おばか”な発想や受賞のコツとは


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