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第7回 Officeやファイル共有も!? 米のAdobe Max2007総評

須賀正明
ベンチャーキャピタリスト
2007/10/15


 Macromedia時代から毎年行われていたユーザーカンファレンス「MAX」の季節が今年もやって来ました。毎年、新製品やプロダクトロードマップ、新しい戦略が発表され、ユーザーでなくてもIT業界にいる人なら目が離せないイベントになっています。

 2007年9月30日を皮切りに約1カ月間で北米、ヨーロッパ、日本と3か所で開催され、FlashのみならずAdobe製品の今後の方向性を知るうえでも非常に重要なアナウンスが今年も山盛りでした。今年の開催地はイリノイ州シカゴでした。現地時間2007年10月3日に閉会した今回のMAXにおける新製品の発表やデモなどをまとめて整理してみました。

AdobeがOffice製品市場へ!? Buzzword買収


レイアウト処理機能が秀逸なBuzzword。Adobe買収後にはAIRバージョンのリリースも控えているようです
レイアウト処理機能が秀逸なBuzzword。Adobe買収後にはAIRバージョンのリリースも控えているようです(画像をクリックすると拡大します)

 基調講演を行ったKevin Lynch氏からは、米Virtual Ubiquity社が開発、ベータ公開しているWebブラウザベースのフルFlashワードプロセッサー“Buzzword”をAdobeが買収することが発表されました。Buzzwordはこれまでクローズド・ベータで開発が進んでいたWYSIWYGのオンライン・ワードプロセッサ・アプリケーションです(連載第6回「仕事で使える! お役立ちFlash/AIRアプリ集」参照)。

 すでにこの分野では、Google ドキュメントZoho Writerなどがしのぎを削っていますが、これらの先行組がテキスト編集機能を重視しているのに対し、Buzzwordの特徴はレイアウト機能重視の製品に仕上がっています。画像の回り込み、行間などのレイアウト処理には、Adobe InDesignで使われている文字処理エンジンが使用され、画面に忠実な印刷が可能となっています。Adobeの持つ、Adobe ConnectやPDFとの連携を強化し、後発組であるオフィス製品への参入で既存資産の活用を図る戦略です。

 BuzzwordはWebブラウザベースのアプリケーションですが、AIR版の開発も進められ、近いうちにリリースとなる予定だそうです。Buzzwordが単独の製品として販売される可能性は低いようで、あくまでもPDFやLive Cycleなどエンタープライズ向けドキュメントソリューションへの付加価値として提供される予定のようです。量販店の棚でOffice系の製品と一緒に並べられることはしばらくはないと考えていいでしょう。

ファイル共有Webアプリ ― Share


FlexベースのWebアプリケーションShare(ベータ)は1Gbyteのストレージ容量だけでなく、簡単に誰とでもドキュメントが共有できる機能が無料で使えます
FlexベースのWebアプリケーションShare(ベータ)は1Gbyteのストレージ容量だけでなく、簡単に誰とでもドキュメントが共有できる機能が無料で使えます(画像をクリックすると拡大します)

 これはAdobeが開発を進めるWebアプリケーションで、ドキュメント管理のソリューションのようです。企業内に散在するドキュメントデータをメール添付を使わずに共有したり、どこからでも文書を閲覧したり、あるいはFlash形式でドキュメントをブログやWikiに埋め込んだりすることが可能になるもののようです。

 アプリケーションはFlexで開発されています。ファイル共有、オンラインストレージなどのアプリケーションでは、ファイルのアップロードが面倒でユーザビリティを損なっていますが、ShareではFlashを使ったファイルアップロードで複数のファイルを一気にアップロードできます。

 大容量ストレージも安価になってきた昨今、オンラインストレージのサービスが登場して久しいですが、Shareのようなオンラインストレージの機能や容量を売りにするのではなく、ストレージに何をためて、どう使いたいのかというユーザーのニーズに着目している点で面白いサービスではないでしょうか。

 前述のBuzzwordとの連携も視野に入れられているようなので、Live CycleやAIR版Share、Buzzwordの連携という具合に可能性を秘めたサービスの登場になりそうです。すでに、Adobe Labsでベータ公開されていて登録さえすれば、誰でも無償で1Gbyteのストレージと併せてShareの機能が利用できます。

 これまでソフトウェアライセンスを販売してきたベンダであるAdobeが、SaaSでアプリケーションをホスティングするビジネスを考えているという点も非常に興味深い戦略ではないでしょうか。

さらに進化し続けるFlash Player ― Astro

 今回のMAXでは、Flash Playerの次期メジャーバージョンアップとなるFlash Player 10、コードネーム“Astro”のスニークプレビューが行われました。いまやAdobeのエコシステムの根幹を担うFlashにも次の戦略が打たれています。

 特筆するべき機能としては、テキストレイアウトの機能やAPIが進化する点ではないでしょうか。文字の読みやすさ、国際化、レイアウトという点では、もともと技術文献の閲覧からスタートしたHTMLに一日の長があることは否定できません。オフィス系アプリケーションだけに限らず、コンテンツのリッチ化においては、動画、画像、サウンドと並んでテキストの表現力が重要です。

 買収したBuzzwordも、リッチなテキスト表現という点でほかのAjaxベースのオンラインワードプロセッサーと差別化されていますし、電子書籍や電子コミックなどのコンテンツでも文字データの表現力、読みやすさはエンドユーザーのメリットにもなります。

 
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 INDEX
第7回 Officeやファイル共有も!? 米のAdobe Max2007総評
Page1
AdobeがOffice製品市場へ!? Buzzword買収
ファイル共有Webアプリ ― Share
さらに進化し続けるFlash Player ― Astro
  Page2
AIR Beta 2のアプリが早くもぞくぞくと登場
公式FLVプレーヤーとなるか? Adobe Media Player
  Page3
コンポーネントキャッシングをサポート ― Flex 3
デザイナー向けRIA開発ツール ― Thermo
進化していくRIAプラットフォームベンダとしてのDNA
おまけ:「Flash=ActionScript 3」ではなくなる?

 




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